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どんな容器でも耐えられない融けたホウ素を浮かせて測定、そして実験は宇宙へ

浮かせて初めて分かる事実、溶融ホウ素は金属でないことが判明

2015年04月20日 16時45分更新

文● 行正和義/ASCII.jp

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静電浮遊法

 科学技術振興機構(JST)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは4月20日、宇宙実験の結果、融けたホウ素が金属ではないという結果を発表した。

 ホウ素は比較的身近な物質で、昔からガラス製造などに用いられている。2077度という高い融点を持ち、またほとんどあらゆる物質と化学反応するため、それを入れる容器が現時点で存在せず、融けた状態の性質をこれまでほとんど研究されていなかった。

 JJST、JAXA、宇宙科学研究所らの研究グループは、NASAとJAXAが国際宇宙ステーション用に開発した「静電浮遊法」を用いた。静電浮遊法は帯電した試料に静電場をかけて重力と釣り合わせることで空中に浮遊させるもので、紫外線照射によって帯電を持続、位置検出と静電場の調整で試料は±10μm以内の精度で制御できる。

周期律表。融けたホウ素(B)はこれまで金属としての性質を持つと考えれてきた 

 研究チームは大型放射光施設SPring-8に静電浮遊装置を設置し、浮遊したホウ素試料をレーザーによって加熱溶融させ、物質中の電子の振る舞いを観測した。融けたホウ素はこれまで金属としての性質を持つと理論的に予測されていたが、実際に測定した結果では大半の電子が原子間に拘束されていることが判明し、半導体であることが分かったという。

 超高温、あるいは超高圧化にある物質の性質を調べることは難しいが、静電浮遊法のような物質で物性を正しく理解することは新材料の開発にも繋がるという。同種の(もちろん重力に対抗して浮かす必要はないが)静電浮遊装置は2015年中に国際宇宙ステーションに輸送され、宇宙でさまざまな試験を行うという。

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