形式による音や装着感の違い
耳をすっぽり覆うアラウンドイヤー型のZX770のイヤーパッドは、外皮はレザー、中身は低反発ウレタンという快適素材の定番が使われています。若干レザーは固めですが、まずまずの装着感で、文句はありません。
オンイヤー型のZX660は、イヤーパッドとハウジングはひと回り小さく、ZX770の約215gに対し約193gと、若干軽く仕上がっています。携帯機器としては、少しでも軽く、小さいことは正義です。
両モデルのハード的な差異はこれくらいしかありませんが、音は大違い。密閉型のミドルクラスということで、どちらも低域に重点を置いたチューニングに変わりはないものの、比べてみると低域の出方は別物と言ってもいいほど違います。
一般的にオンイヤー型は、アラウンドイヤー型に比べて低域の音圧が高いのですが、やはり中低域の音圧で攻めてくるのがオンイヤー型のZX660です。騒音で低域がマスキングされる電車などの中では、うまくバランスしそうです。
しかし、静かな室内では、キックとベースしか耳に入ってきません。そして下の帯域の音圧に負けて、相対的に高域側の解像感が犠牲になるのが気になります。オンイヤー型では高くなりがちなヘッドバンドの「側圧」は常識的な線で、それに比例する遮音性能も高くもなければ低くもありません。
一方、アラウンドイヤー型のZX770は、低域に節度感があり、相対的にワイドレンジに感じられます。バランスとしては尖ったところがなく、聴き疲れしにくい設定です。同じ密閉型ながら音場感も適度にあり、その点も聴きやすさにつながっています。
とはいえ、1万円台のヘッドフォンでも、今はこれくらいのバランスでなければ市場で受け入れられないのかと思う程度に、低音は出ます。また、子音が若干強調される傾向があって、それが独特のソリッド感となり、ロックのような音楽とは相性が良いものの、モニター系のフラットさを求める方には合わないでしょう。
携帯性と音質の傾向で言うなら、通勤通学のお供にするならZX660、家でも使うのならZX770ということになるでしょう。
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