管理プログラムを刷新しクラウドにも対応、今秋から提供開始

ゼロデイ脅威も対抗、キヤノンITSが法人向けESET最新版披露

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は4月16日、法人向けエンドポイントセキュリティ対策ソフト「ESET Endpoint Protectionシリーズ」の最新バージョン(V6)発表会を開催した。国内では今年秋頃から提供開始の予定。

(左から)キヤノンITS 執行役員 基盤・セキュリティソリューション事業本部 セキュリティソリューション事業部長 近藤伸也氏、ESET CEOのリチャード・マルコ氏、ESET CSO/CMOのイグナシオ・スバンパト氏

 ESET Endpoint Protectionは、スロバキアのESET(イーセット)が開発する、Windows/OS X/Androidエンドポイント対応のセキュリティソフト。「軽快さ」「使いやすさ」「シンプルさ」を重視しており、日本市場では2003年からキヤノンITSが総販売代理店を務める。

 最新バージョンのV6では、ゼロデイ脆弱性に対応する「エクスプロイトブロッカー」、難読化されたマルウェアを検出する「アドバンスドメモリスキャナー」、ボットネット通信を遮断する「ボットネットプロテクション」など、個人/小規模法人(SOHO)向け製品の最新バージョン(関連記事)と同じ防御機能が追加された。

より堅牢な多層防御を実現する複数の防御機能が追加された

 また、多数のクライアントを管理するための管理プログラムがWebベースで刷新され、「ESET Remote Administrator(ERA)」という名称になった。従来のリモート管理サーバーはWindows Serverのみの対応だったが、ERAはLinuxにも対応。また日常的な作業のほとんどをダッシュボード中心で済ませることができるインタフェースを備えるなど、「機能や設計、アーキテクチャをゼロから見直した」(ESET)ものとなる。

ESET Remote Administrator(ERA)の画面。日常的な管理作業の9割は、このダッシュボードからのクリック(ドリルダウン)や検索だけで完結するよう設計されている

 さらに、各クライアント上のエージェントとERAの通信がSSL暗号化対応したことにより、インターネット経由でのクライアント管理が可能になった。

 こうしたアーキテクチャ変更に伴い、ERAサーバーはクラウド上に配置することもできるようになった。キヤノンITSでは、中小企業をメインターゲットとして、SaaS型で提供するERA(クラウド対応ERA、仮称)を法人向け製品ラインアップに追加する方針。今年6月末から、クラウド版ERAの先行評価版サービス(無償)を提供する予定としている。

 ESET Endpoint Protection V6(Advansed/Standard)の価格は、現行バージョンと同一となる予定。現行版のライセンスを持つ顧客は無償でアップグレードできる。また、ESET Remote Administratorの価格(オンプレミス版、SaaS版)は未定。

エンドユーザーへの直接ヒアリングで得た要望を新製品に反映

 発表会に出席したESET CEOのリチャード・マルコ氏は、ESETでは「プロアクティブな保護」「ユーザーの作業の邪魔をしないスピード」「自動実行、安定性といったユーザービリティ」という“3つの原則”を一貫して追求し、開発する製品に反映させてきたと語る。

 今回の新バージョン開発にあたり、ESETでは日本を含む6カ国のエンドユーザーを訪問し、エンドポイントセキュリティへのニーズや課題を直接ヒアリングしたという。そのフィードバックから生まれたのが、たとえば先に挙げた新プログラムのERAだ。

 ESETのCSO/CMOを務めるイグナシオ・スバンパト氏は、「V6に組み込まれた新機能は、ユーザーからのリクエストを満たすためのものだ」と述べ、たとえばレポーティング、不具合が生じた場合のバージョンロールバック、現状把握が容易にできるダッシュボードといったリクエストを、新たな機能として盛り込んだことを説明した。

新バージョンでは、顧客への直接聞き取りから得られた数々のリクエストを新機能として実装している

 顧客の要望から生まれた新機能の1つとして、「RIP & REPLACE」機能も紹介された。これは、社内のエンドポイントにインストールされているマルウェア対策ソフトウェアを一括でアンインストールし、新たにESETをインストールするという管理者向け機能だ。「ESETへの移行作業にかかる手間が大幅に削減される」(スバンパト氏)。

高い成長率で国内市場シェア10%を獲得、今後の戦略は

 キヤノンITS 執行役員の近藤伸也氏は、国内の調査でESET製品が顧客満足度第1位を連続獲得するなど、高い評価を受けていることを説明。国内法人向けのアンチウイルス製品市場シェアも、現在では第4位(10.9%)にまで成長していると述べた。

飽和傾向にある同市場において、ESET(キヤノンITS)製品は大きな成長を見せていると近藤氏(資料出典はミック経済研究所)

 さらなる成長に向けて、キヤノンITSでは「エンタープライズ(大規模企業、組織)向けの取り組み」、「医療機器やPOS端末などのセキュリティを必要とする、特定業種への取り組み」の2点に注力する。具体的には、今年4月からエンタープライズ向けの社内組織、販売体制を強化したのに加え、ESET製品の販売パートナーやアライアンスパートナー向けプログラムを通じて支援も強化していくと述べた。

 さらに、ESETの製品リリースを追うかたちで製品ラインアップも拡充していく方針だと述べ、仮想デスクトップ環境(VDI)対応製品、オフライン端末用のUSB型製品、ハードディスク暗号化製品などの例を挙げた(いずれも具体的な提供時期は未定)。