これはET55ではなく「ET66」では!?
過去の多くの製品も現在の製品も、おおよそこの色彩管理を忠実に守ってきている。“ET55の復刻版”という文字だけを見て喜んで衝動買いした筆者は、ET55復刻版の電卓ボタンをぼんやり眺めていて、あれっ? とあることに気づいてしまった。
なんと、ET55復刻版のボタンはイコールボタンを除いて“全部が真っ白”なのだ。早速、筆者のET55オリジナルモデル(2台)を実際に取り出して、横に並べて比較して見たら、なんと2台とも電卓のボタンの数字キーは全部がグレー、算術記号は濃い茶、メモリーキーなどは濃い緑だった。
配達されてきた“ET55復刻版は決してET55の復刻版なんかじゃない”と、やっとその時わかった。“真っ赤な嘘”って表現はよくあるが、今回は“真っ白な嘘”だった。家中のあちこちに置いてあるブラウン電卓をすべてかき集めて総比較戦をやってみたら、さらにいろいろなことがわかった。
結論から言えば、今回発売された「ET55復刻版」はまったくET55の復刻版などではなく、以前から発売されていた「ET66」というまったく別のブラウン電卓の本体カラーを白に変更しただけのモデルであることが判明した。ET55とはまったく無関係なモデルだ。
まずMoMA(ニューヨーク近代美術館)に収納されているET55には、色が白でも黒でもすべてに、物理的な“小数点以下処理スイッチ”が付いている。しかし、ET55復刻版にはこれがまったくない。加えてET55オリジナルモデルに付属している専用ケースの形状がまったく異なっている。
最終的に、ET55復刻版は、1983年に5000台だけ発売されたオリジナルのET55ホワイトモデルと比較して、(1)ボタンの色が全く違う、(2)物理的な小数点以下処理スイッチが一切ない、(3)専用ケースがまったく違う、という3点の大きな差異で「自称ET55復刻モデル」であり、ET66の単なるホワイトカラー版であることが明確になった。
グローバルパッケージには「ET66」と書いてある……
なぜそんな誤解される記事がメディアに溢れることになったのか? ウェブショップの多くが、あたかも“ET55の復刻版”であるとの販促活動を行なったのか、筆者には知る由もないが、大好きなブラウン製品の中でそういうおかしなことが起こったのが極めて残念だった。
今のところ、今回衝動買いをした電卓がなければ、日々の生活に困るわけではないので、ひとまず残念な自称ET55復刻版を元の箱に戻そうとした時、またしても驚くべき事実を発見してしまった。
自称ET55復刻版が収納されて送られてきたグローバルパッケージの裏側の製品説明に眼をやると……なんと「This calculator is a limited edition white version of the Braun ET66 calculator……」と書いてあるではないか!
ドイツ本国のブラウンや、国内の代理店はきちんとこの商品の素性を明快に記述している。なのに日本の大手を含む一部メディアやウェブ上の販売店のコピーは「幻の白バージョン!」とか「ブラウンの名作電卓ET55の復刻モデル」「名作計算機が復刻」といった表記になったのだろうか?
ブランドとは何か、ブランドはどう管理すべきなのか……まだまだ勉強が必要な人が国内には大勢いそうだ。ずっと昔から「アイ・ラブ・ブラウン」なだけに、ブラウン電卓の歴史的一つの銘器でもあるET66の白モデルなのに、何の関係もないET55復刻モデルなどという型番詐称をさせられたET66が可愛そうだ。
筆者も含め、すべての購入者は、“復刻”や“幻”とかのあまり意味のない形容詞に惑わされないようにしなくてはならない。そして、くれぐれも衝動買いは楽しくても、筆者のような脊髄反射型のクリック衝動買いは不幸を招くことも多いのでご注意を!
今回の衝動買い
アイテム:ET55復刻モデル(白)
価格:アマゾンにて6480円で購入
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるhttp://www.facebook.com/KOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。
この連載の記事
-
第778回
トピックス
折ってちぎって6人で使える「Paper Pens」を衝動買い -
第777回
トピックス
ゲオでレトロ感満載「FM付き レトロスピーカー」を衝動買い -
第776回
トピックス
発売日に電子メモ「Boogie Board(papery)」を予約衝動買い -
第775回
トピックス
ユーザー評価の高いJPRiDE「model i ANC」を手に入れた! -
第774回
トピックス
割り切りが素晴らしい3COINSの3300円スマートウォッチを衝動買い -
第773回
トピックス
Galaxy純正の遺失物トレースタグ「SmartTag2」を衝動買い -
第772回
トピックス
昭和レトロなプレーヤー復刻版「サウンドバーガー」を衝動買い -
第771回
トピックス
人生最後の腕時計「ロレックス エアキング」を衝動買い -
第770回
トピックス
実測37g! 折り紙式ポータブルマウス「OriMouse」を衝動買い -
第769回
トピックス
ギガ超えの夢破れたドコモ「home 5G HR02」を平常運転! -
第768回
トピックス
「令和6年の初・白日夢」か? ドコモ「home 5G HR02」を衝動買い - この連載の一覧へ