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T教授の「戦略的衝動買い」 第328回

“自称復刻版”のブラウン電卓「ET55」(?)を衝動買い!

2015年04月15日 12時00分更新

文● T教授、撮影● T教授

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これはET55ではなく「ET66」では!?

復刻版の数字キートップはすべてが白色だった。これって違うんじゃ?

復刻版の数字キートップはすべてが白色だった。これって違うんじゃ?

 過去の多くの製品も現在の製品も、おおよそこの色彩管理を忠実に守ってきている。“ET55の復刻版”という文字だけを見て喜んで衝動買いした筆者は、ET55復刻版の電卓ボタンをぼんやり眺めていて、あれっ? とあることに気づいてしまった。

真ん中に今回発売の復刻モデル“自称ET55”を置き、筆者の持っている1983年世界限定5000台のET55を左右に2台配置して、じっくり眺めてみたら、いろいろ違いがわかってきた

真ん中に今回発売の復刻モデル“自称ET55”を置き、筆者の持っている1983年世界限定5000台のET55を左右に2台配置して、じっくり眺めてみたら、いろいろ違いがわかってきた

復刻版ET55の数字キートップはすべて白。1983年のオリジナルET55モデルは、数字キーは全部がグレーで、算術記号は濃い茶、メモリーキーなどは濃い緑だ

復刻版ET55の数字キートップはすべて白。1983年のオリジナルET55モデルは、数字キーは全部がグレーで、算術記号は濃い茶、メモリーキーなどは濃い緑だ

 なんと、ET55復刻版のボタンはイコールボタンを除いて“全部が真っ白”なのだ。早速、筆者のET55オリジナルモデル(2台)を実際に取り出して、横に並べて比較して見たら、なんと2台とも電卓のボタンの数字キーは全部がグレー、算術記号は濃い茶、メモリーキーなどは濃い緑だった。

左から順に1983年オリジナルET55モデル、復刻版ET55、復刻版ET66と並べてみると……中央の復刻版ET55は右端の復刻版ET66の色を白に変更しただけのモデルであることがすぐに分かる

左から順に1983年オリジナルET55モデル、復刻版ET55、復刻版ET66と並べてみると……中央の復刻版ET55は右端の復刻版ET66の色を白に変更しただけのモデルであることがすぐに分かる

 配達されてきた“ET55復刻版は決してET55の復刻版なんかじゃない”と、やっとその時わかった。“真っ赤な嘘”って表現はよくあるが、今回は“真っ白な嘘”だった。家中のあちこちに置いてあるブラウン電卓をすべてかき集めて総比較戦をやってみたら、さらにいろいろなことがわかった。

1983年のオリジナルET55モデル(左)には、演算処理の小数点を全桁表示/小数点以下非表示/小数点以下2桁まで表示(四捨五入)の3通りを選択する切り替えスイッチが必ずあるが、復刻版ET55(右)にはそれがない

全面フラットなケースを採用している復刻版ET55

全面フラットなケースを採用している復刻版ET55

1983年オリジナルET55モデルのケースは電源オンボタン(緑)と小数点以下処理スイッチを凹面の溝で避けるような構造。ポケットの中などで勝手に電源オンとはならない配慮だ

1983年オリジナルET55モデルのケースは電源オンボタン(緑)と小数点以下処理スイッチを凹面の溝で避けるような構造。ポケットの中などで勝手に電源オンとはならない配慮だ

 結論から言えば、今回発売された「ET55復刻版」はまったくET55の復刻版などではなく、以前から発売されていた「ET66」というまったく別のブラウン電卓の本体カラーを白に変更しただけのモデルであることが判明した。ET55とはまったく無関係なモデルだ。

 まずMoMA(ニューヨーク近代美術館)に収納されているET55には、色が白でも黒でもすべてに、物理的な“小数点以下処理スイッチ”が付いている。しかし、ET55復刻版にはこれがまったくない。加えてET55オリジナルモデルに付属している専用ケースの形状がまったく異なっている。

こうして左から復刻版ET66や復刻版ET55、ET66、ET55と並べてパーツを比べてみると……左から2番目の復刻版ET55は明らかに無理やり作った感が強い

こうして左から復刻版ET66や復刻版ET55、ET66、ET55と並べてパーツを比べてみると……左から2番目の復刻版ET55は明らかに無理やり作った感が強い

 最終的に、ET55復刻版は、1983年に5000台だけ発売されたオリジナルのET55ホワイトモデルと比較して、(1)ボタンの色が全く違う、(2)物理的な小数点以下処理スイッチが一切ない、(3)専用ケースがまったく違う、という3点の大きな差異で「自称ET55復刻モデル」であり、ET66の単なるホワイトカラー版であることが明確になった。

グローバルパッケージには「ET66」と書いてある……

 なぜそんな誤解される記事がメディアに溢れることになったのか? ウェブショップの多くが、あたかも“ET55の復刻版”であるとの販促活動を行なったのか、筆者には知る由もないが、大好きなブラウン製品の中でそういうおかしなことが起こったのが極めて残念だった。

 今のところ、今回衝動買いをした電卓がなければ、日々の生活に困るわけではないので、ひとまず残念な自称ET55復刻版を元の箱に戻そうとした時、またしても驚くべき事実を発見してしまった。

ブラウンの本体紙パッケージの裏側の商品説明には、どこにもこの電卓が1983年に世界で限定5000台発売されたET55のホワイト版モデルの復刻商品だとは書いていない。シンプルに、「この電卓はブラウンET66電卓の限定ホワイト版である」としか書いてない

ブラウンの本体紙パッケージの裏側の商品説明には、どこにもこの電卓が1983年に世界で限定5000台発売されたET55のホワイト版モデルの復刻商品だとは書いていない。シンプルに、「この電卓はブラウンET66電卓の限定ホワイト版である」としか書いてない

 自称ET55復刻版が収納されて送られてきたグローバルパッケージの裏側の製品説明に眼をやると……なんと「This calculator is a limited edition white version of the Braun ET66 calculator……」と書いてあるではないか!

 ドイツ本国のブラウンや、国内の代理店はきちんとこの商品の素性を明快に記述している。なのに日本の大手を含む一部メディアやウェブ上の販売店のコピーは「幻の白バージョン!」とか「ブラウンの名作電卓ET55の復刻モデル」「名作計算機が復刻」といった表記になったのだろうか?

誰が仕組んだかしらないが、売れれば何でもいい形式の“型番詐称”による復刻ストーリーは正しいマーケティングのルールを大きく逸脱している。ブランド管理が厳しい本国ブラウン社は知らないことを祈りたい

誰が仕組んだかしらないが、売れれば何でもいい形式の“型番詐称”による復刻ストーリーは正しいマーケティングのルールを大きく逸脱している。ブランド管理が厳しい本国ブラウン社は知らないことを祈りたい

 ブランドとは何か、ブランドはどう管理すべきなのか……まだまだ勉強が必要な人が国内には大勢いそうだ。ずっと昔から「アイ・ラブ・ブラウン」なだけに、ブラウン電卓の歴史的一つの銘器でもあるET66の白モデルなのに、何の関係もないET55復刻モデルなどという型番詐称をさせられたET66が可愛そうだ。

 筆者も含め、すべての購入者は、“復刻”や“幻”とかのあまり意味のない形容詞に惑わされないようにしなくてはならない。そして、くれぐれも衝動買いは楽しくても、筆者のような脊髄反射型のクリック衝動買いは不幸を招くことも多いのでご注意を!

T教授

今回の衝動買い

アイテム:ET55復刻モデル(白)

価格:アマゾンにて6480円で購入


T教授

 日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
 T教授も関わるhttp://www.facebook.com/KOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。

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