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徹底して音質にこだわった作りと、快適な操作性を実現

高価だが最先端、夢のネットワークプレーヤー「AK500N」を聴いてみた!

2015年04月11日 12時00分更新

文● 鳥居一豊、編集●ASCII.jp

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データの移動も高速で快適

 次々にいろいろな曲を聴いてみたのだが、そこで感心したのが音源のコピーなどの操作のスムーズさ。AK500Nは、側面のUSB端子に接続したUSBメモリーや、拡張用のmicroSDスロットを使った再生も可能だ。しかし、直接再生してしまうと、どうも音の鮮度が鈍ってしまう。面倒でも本体の内蔵SSDにコピーするのが正しい聴き方だ。

 面倒、とは言ったが、実際にやってみると、実にスムーズ。やり方としては再生メディアをUSBメモリーとして楽曲を表示した状態で、曲目を選びサブメニューから「コピー」を選択する。続いて再生メディアを内蔵SSDに切り替えると、上部のメニューに「ペースト」があるのでそれを選ぶと楽曲がコピーされる。コピー時間も96kHz/24bitの5分程度の楽曲(約90MB)ならば、ほんの1~2秒ほどで完了する。これなら楽曲のコピーもほとんど煩わしさを感じない。このあたりの直感的でスムーズな操作感は、従来のハイエンドオーディオとは一線を画す部分だと思う。

SSDへのコピーはUSBやmicroSDカードスロットからでもあっという間だ。

 録音自体はやや古いものの、その声の生々しさが素晴らしい美空ひばりの「ひばりジャズを歌う」を聴くと、ややナローレンジなバンドの演奏は低音の量感が豊かなリッチな感触で、中央に浮かぶ美空ひばりの声がハッとするほどリアルに浮かぶ。中高域のチャーミングな輝きと低音の朗々とした声の張りを自在に使い分ける歌声が、その声のニュアンスをきめ細かく描き出す。声が前に出て、バンドは後ろに並んでいる奥行きの立体感もきちんと出ている。

 今度は、アニメ「トリニティセブン」から「BEAUTIFUL≒SENTENCE」を聴いてみた。作品に登場するヒロインのふたりがデュエットでうたうエンディング曲なのだが、ふたりの声はセンター付近で並び立つように定位する。それぞれがソロでうたう部分は中央のやや右、あるいは左という位置の違いがわかるが、ユニゾンで一緒にうたうと中央で溶け合ってしまうことが多い。それがしっかりと分離し、ふたりの声がそれぞれの場所から響いてくる。S/N感とか、チャンネルセパレーションの良さとか、オーディオ的な優秀さはもちろんだが、情報量たっぷりの音の再現は見事なものだ。

シンプルでコンパクトな筐体、多機能を一体化するメリットも

 色々と曲を聴いていて、この情報量の豊かさや音の純度の高さは、音源データを本体内に内蔵しているメリットだと実感した。ネットワーク経由でNASなどからデータを受け取るプレーヤーでの再生も、メカレスのメリットなどはあるが、データの通り道であるネットワーク配線の長さやスイッチングハブの性能、さらにNAS自体の振動やノイズ対策など、プレーヤー側で把握しきれない要素が多い。こういったさまざまなパラメーターをユーザーが機材やケーブルの吟味、設置や電源の取り回しなどで対策し、信号伝送における純度を高めていくのもオーディオの面白さだから、一般的なネットワークプレーヤー自体を否定する気はない。だが、AK500Nは音源データを本体に保持することで、それらをメーカーがきちんと対策し、十分なクオリティに仕上げることに成功している。

 そのうえ、NASなどの外部機器が不要だから接続もシンプルだし、操作や設定もわかりやすくできる。音質はもちろん、機能性や操作性まで考えると、AK500Nの設計思想は現代のオーディオ再生の最先端のひとつと言えると思う。

 要するに、極めて合理的。音に関わる要素をきちんと集約することで、音質と使い勝手の両方を高い次元に引き上げることに成功している。

 20年ほど昔、いずれ登場すると予想された半導体プレーヤーは、メカレスを実現できるなど音質的な意味でも「夢のオーディオ」と言われていたことがある。しかし、現実にiPodが登場してみると、少なくとも音質的には「夢のオーディオ」と言えるほどではなかった。その理由は小型化によるオーディオ回路設計の制約などなど、いくらでもあるが、AK500Nは妥協を廃してそれらをすべて解決し、文字通りの「夢のオーディオ」を形にしてしまったと思う。

 AK500Nに唯一苦言を言うならば、価格が高いこと。だが、本機を実際に使い、合理的な設計を知るほどに、これだけの価格になってしまうのも仕方がないな。とも思ってしまう。「夢のオーディオ」はまさしく憧れの製品であり、おいそれと買えるような値段でないのが正しいのかもしれない。だが、やはりこの設計思想を継承しながらもう少し手の届く価格にした2号機の登場を期待してしまうのも人情。こうしたコンセプトのモデルが今後はもっと増えるのではないかという期待もある。

 いつか手に入れたいという将来の希望、オーディオの今後の姿など、いろいろな意味で夢が膨らむ製品だ。

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