情報量が豊富で、空間や質感をストレートかつピュアに再現
では、いよいよその音の実力を聴いてみることにしよう。今回の試聴では、特別に編集Kの私物であるジェフ・ロゥランドDGのプリアンプ「Capri」とパワーアンプ「Model 102」を組み合わせ、B&WのMatrix801 S3を鳴らした。
ここのところ、スピーカーの配置などをひたすら吟味し、それまでに比べて特に30cm口径のウーファーらしい堂々とした低音が出るようになってきたのだが、逆に低音が膨らみ気味というかちょっと甘めの鳴り方になることも気になっていた。だが、さすがはジェフ・ロゥランドDG。アンプを変えることで、低音がより引き締まり、解像感がしっかりと出るようになった。
この状態で、プレーヤーを自宅で使っているLINNのMAJIK DSから、AK500Nに変更。接続はもちろんバランス接続だ。というのも、AK500Nのオーディオ回路は完全バランス構成を採用。もちろん、DACチップもシーラス・ロジックのCS4398を左右独立のデュアル構成で使っている。それぞれバランス駆動設計されたプレーヤーとアンプの接続はバランス接続が当然だろう。
ちなみに、今回はプリアンプを使っているが、AK500Nはボリュームによる可変出力も行えるので、プリアンプなしでパワーアンプに直接接続することも可能。アナログ音声出力の固定/可変の切り替えもタッチパネル操作で手軽に切り替えることができる。
明確な定位と豊富な情報量、ソースに正確な再生
まずはよく聴くクラシックやジャズの曲を聴いてみたが、自分が気になっていた低音の質感がより芯のある力強いものになっていることがわかる。ベースの弦の震える感じや胴鳴りの豊かな響きがしっかりと出て、解像感と量感のバランスも十分だ。ドラムが刻むリズムも、音の立ち上がりのキレ味がよく、グルーブ感のある生き生きとした再現だ。
クラシックでは、目の前に広がるオーケストラの整然とした配置が見事で、一つ一つの音の定位が目に見えるよう。個々の音色も明瞭で、各楽器が一斉に音を出すときもそれぞれがきちんと分離しながら、その響きが溶け合っていく様子が鮮やかに再現できる。これは見事な表現力だ。
Astell&Kernは、AK240などのポータブルプレーヤーでも、決して強く個性を主張するのではなく、スタジオの音をストレートに再現することを追求してきた。メーカーではそれをマスター・クオリティ・サウンドと呼んでいるが、そのコンセプトはAK500Nでさらに明確に感じられる。ただ単純に忠実度の高い音というだけでなく、低音のしっかりとした鳴り方や、急激な音量の変化もよどみなく再現しきるエネルギー感など、音楽の躍動感まで伝えてくる。だから音楽がリアルに感じられるのだ。