SAP ERPをAWSに移行、2020年にはほぼすべての基幹システムがクラウドへ
旭硝子の“古い体質の情シス”が語る、AWS移行を決断した背景
2015年04月09日 06時00分更新
運用次第で「ハードウェアコストは20%削減できる」と試算
AWSの利用料金をベースに5年間の総コストを算出、オンプレミスと比較したところ、運用次第でハードウェアコストはおよそ20%削減できることがわかった。ここでのポイントは、無駄に稼働している検証機やバックアップ機(冗長化)をきちんと止めることだという。
より長期的に見ると、コスト削減効果はさらに「圧倒的」なものになることがわかった。5年ごとのハードウェア更改コストやデータセンターコストが削減でき、さらにBCP/DR対策も大きなコストをかけることなく実現する。
また、人事、設計、会計など各種業務データをクラウドに置くことの法的問題、内部統制との整合性、セキュリティリスク、その他の社内規定との整合性も課題となっていたが、いずれも監査法人などを交えて十分な評価を行い、問題ないと判断できたという。
このようにクラウド移行のメリット/デメリットを整理した結果、オンプレミスへの移行が予定されていた前述のSAP ERPは、最終的にはプロジェクトの途中で「クラウド移行」へと方針転換がなされたのだった。旭硝子では、2014年8月にAWSを採用することを決定している。
AWSを選んだ理由と、コンサルティングサービス活用の要点
ではなぜ、旭硝子はクラウドの中でもAWSを選んだのか。浅沼氏は、利用料金の安さだけでなく、国内データセンターがあること、すでにSAP ERPの導入実績が豊富にあったこと、ユーザーコミュニティが強く“ロックイン”を避けられそうなこと、継続的なテクノロジーの革新が図られていること、などを理由に挙げる。
また採用決定後、旭硝子では「AWSプロフェッショナル サービス」(関連記事)も利用した。同サービスは、AWSのエンタープライズ向けコンサルティングサービスである。「第三者的な立場でプロジェクトに加わっていただき、アドバイスをいただいた」(浅沼氏)。
プロフェッショナルサービスを利用したことで、システム設計などの面で、クラウドやAWS特有のノウハウやベストプラクティスを得ることができたという。IT基盤担当プロフェッショナルである三堀氏は、特にAWSでは機能が頻繁にアップデートされるため、「われわれが半年前に作った設計や資料を見せると、『それはもう古い、こちらの新機能を使ったほうがいいですよ』ということが度々あった」と語る。
「もちろん、初めてプロフェッショナルサービスを利用したので、今振り返ればもっとうまく使えたかもしれないと思うことはある。たとえば、(AWS上でサーバー構成などを実行する)サンプルコードがあれば開発が一気に進むのだが、まだSIベンダーはこうしたノウハウを持っていない。このサービスを通じて、積極的に提供依頼をすればよかったとは思っている」(浅沼氏)
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