最新トレンドを実践するECサイトを運営する企業に取材し、どのように成果をあげているのかをレポートする「最新トレンドの成功者から学べ! ECサイト研究レポート」。今回は、クリーニング業界に革命をもたらした「リネット」を運営する、株式会社ホワイトプラスの斎藤亮介取締役兼CMOに、サービスEC運営の秘訣について話を聞いた。
ホワイトプラスがクリーニングを選んだ3つの理由
“家から近いところに出す”のがクリーニングの通例だろう。もちろん、仕上がりがキレイに越したことはないし、価格が安く納期が短ければなおいい。しかし現実には、消費者が品質や価格でクリーニング店を選ぶことは少なく、通勤や買い物の途中に立ち寄れる「利便性」が最重視される。
このような立地産業は参入障壁が高く、スタートアップが乗り込んでいく話はほとんど耳にしない。なぜホワイトプラスは、クリーニングをターゲットにしたのだろうか。
ホワイトプラスの斎藤亮介取締役兼CMOにそう尋ねると、「市場規模の大きさ、タイミング、ストック型のビジネスモデルの3つです」と、間髪を入れずに答えた。
市場規模が小さいと、どんなにがんばってもビジネスは大きくならない。クリーニング業界は20年前の約8000億円をピークに減少し、現在は約4000億円規模だが、BtoBを含めると1兆円規模になる。最低でも1兆円程度の市場規模がある業界でのスタートアップが、大前提だった。
タイミングとは、ホワイトプラスが創業した2009年当時、クリーニングサービスはまったくネット化されていなかったことだ。加えて、クリーニングのビジネスモデルは、リピート利用を前提とした、顧客が増えれば増えるほど売上が積み上がって安定的に利益が得られる、ストック型に分類される。
実は、ホワイトプラスは「リネット」のために設立されたわけでない。現代表取締役の井下孝之氏、現取締役の森谷光雄氏と斎藤氏の3人の想い「世界に誇れる会社で、イノベーションを起こしたい」を形にするために創った会社なのだ。3人は2〜3カ月かけて、自ら考えた150のビジネスプランを精査し、最終的に残ったのがクリーニングだった。だから、斎藤氏は参入理由を即座に回答できるのである。
「そもそも、この事業を思いついたきっかけは、自分が一人のユーザーとして不便と不満を感じていたからです。この“自分が利用者の立場に立った顧客視点”からスタートしていることが何より重要だと思います」