「VAIO Phone」と日本通信の業績の行方
VAIOと日本通信による協業で誕生した「VAIO Phone」が、3月20日から発売となった。
既報の通り、1月30日に行なわれた日本通信の2014年度第3四半期決算発表では、VAIO Phoneの外箱だけを公開。それだけでも注目を集めるなど、発表前から大きな期待が集まっていた。
しかし、3月12日に行なわれた製品発表は、多くのVAIOファンの期待を裏切るものになったといえる。
むしろ、ソニー時代の後期にVAIOが陥った「VAIOらしさが欠如した製品」の投入を思い出させるものになったとはいえまいか。
日本通信では、端末+通信サービスという提案力を強みに、「ストライクゾーンのど真ん中に投げ込んだモデル」と位置づけるが、その投球を見た観客の反応は、ど真ん中直球に対するどよめきよりも、暴投ぎみの球を投じたときのあきれた声に近い。
今回発表した製品は、製品企画から市場投入まで、わずか半年という短期間で行なったものである。しかも、当初の計画ならば2014年12月にも製品を発表し、日本通信の第3四半期業績にも売り上げが貢献する計画。つまり、3〜4ヵ月で市場投入をしようと考えた製品であった。
この計画は、世界第2位のタッチパネルメーカーが会社更正法を適用したため、設計変更を余儀なくされるという状況に陥り、やむなく発売時期がずれ込んだ経緯がある。だが、いずれにしろ、これだけの短期間での開発は、スマホの開発ノウハウを持たないVAIOには無理だ。
その結果、台湾のODMメーカーに設計・開発を委託するという方向で、製造については日本通信が担当。VAIOはデザイン面での協力を行なうという体制を採った。
VAIOの関取高行社長は、VAIOのコアは、「高密度実装技術」「放熱設計技術」「コア技術により鍛えられたデザイン力」の3点にあるとしていたが、今回のVAIO Phoneは、デザイン力だけを活用した製品だ。「VAIO Z」で最大の特徴としていた「高密度実装技術」「放熱設計技術」というVAIOならではの技術的差別化ポイントは、まったく生かされていない。当然、VAIO Zで打ち出した「日本生産を超えた、日本代表による製品」という力強い言葉からも、はるかに離れた製品になっている。
そして、VAIO設立後に継続販売を行なった「VAIO Pro 11」「VAIO Pro 13」「VAIO Fit 15E」では、海外ODMが生産したあとに全量を長野県安曇野市で開梱し、再検査する「安曇野FINISH」を採用。これをVAIOの売り物としていた。だが、今回のVAIO Phoneでは安曇野FINISHも行なわれない。
いわば、デザイン力だけがVAIOのブランドの価値となる。
だが、ODMが主導権を握って開発された製品に、デザインのノウハウを注ぎ込むには限界がある。「VAIOのような小規模なロットしか調達できないメーカーならばなおさらだ」(業界関係者)との声もある。
日本通信の三田聖二社長は、「アップルに対抗しうる唯一のブランドがVAIO。今回の製品は格安スマホではなく、プレミアムスマホといえる製品だ」と、付加価値の高さを強調してみせたが、残念ながら、多くの人がVAIOブランドに期待した付加価値は見当たらない。多くのユーザーが、VAIO Phoneに対してVAIO Zのイメージをダブらせていたのは明らかだからだ。
そして、発表前日には605円だった日本通信の終値が、発表当日には559円まで下げたことからも、株式市場の期待をも裏切ったといえるだろう。
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