クラウド版の影響で強化されたファイル管理とモバイル対応
さて、12年前のOffice 6に比べて、大きく変わったのはクラウド版の登場。クラウド版は開発や運用にも大きな影響を与えているという。河合氏は、「昔はユーザビリティに関するアンケートをとるしかなかった。でも今は、3ペインから2ペインに戻した数とかとれるんです。トラブルの検証や脆弱性の影響などを調べる際にも、クラウド版は格段に楽です」と語る。クラウド版で先行して機能や動作をチェックし、パッケージ版のテストに反映することで、開発工数も圧倒的に短縮化しているという。
クラウド版での利用動向を見て、強化されたのはファイル管理だ。「クラウド版の登場でアクセスログがとれるようになった。とったログを見ると、ファイル管理の利用頻度は高めだったし、ファイルサーバーをクラウドに移したいというニーズも一定数ありました」(河合氏)。
確かにOneDriveやDropboxなど最新のファイル共有クラウドは、10年前と大きく使い勝手が異なっている状況だ。これを見習って、サイボウズOfficeもファイル管理の使い勝手を大きく強化している。まずはアップされたファイルをWebブラウザ上でプレビューできるようになり、わざわざダウンロードして中身をチェックする手間がなくなった。また、ファイル一覧のみならず、アイコン表示も可能になったほか、ドラッグ&ドロップのファイルのアップロードにも対応した。
モバイル対応もクラウド版で先行して強化される。サイボウズ Officeにはもともと「KUNAI」というモバイルアプリが用意されていたが、最新のクラウド版ではスマートフォン向けの画面が用意されている。「Webブラウザでアクセスしても、専用の画面が用意されています。スケジュールもスワイプ操作などができるので便利です」(河合氏)。
一方で、サイボウズ Office 6のときに比べ、Webブラウザの種類が増えたのは苦労の元だという。「昔はHTMLをベタで書いておけばよかったですが、今は間にCSSとJavaScriptのレイヤーが入るので、Webブラウザ依存が発生してしまう。その点、昔に比べて、ユーザーインターフェイスの設計に関しては、しんどいところもありますね」と山田氏は指摘する。
「顧客をおきざりにしない」「サクサク動く」は揺るがない
このようなユーザーインターフェイスや使い勝手の進化を見ていくと、サイボウズ Officeが新しいテクノロジーを次々と取り込んでいるのが見て取れる。「どんな操作でも画面遷移」「ドラッグ&ドロップできない」「SNSやクラウドの使い勝手とはほど遠い」というのはユーザー側の思いこみに過ぎず、実際は最新のクラウドアプリと遜色ない使い勝手を実現している。「士別れて三日ならば、即ちさらに刮目して相待つべし」という言葉があるが、ユーザーの気がつかないうちにサイボウズ Officeは著しく進化していたわけだ。「いろんな機能も単に流行だから入れているわけではない。導入することで、ユーザーの効率が高まるのか、無駄が減るのか、便利になるのかをサイボウズ Officeの世界観で考えるという開発プロセスを必ず入れている」と河合氏はコメントする。
こうした進化の背後で見えてくるのが「既存の顧客をおきざりにしない」というポリシーだ。GoogleやFacebookなどのクラウドアプリでは、バージョンアップの際にユーザーインターフェイスや使い勝手が大きく変わる。しかし、自動更新したら、普段とまったく使い勝手が変わっていて、難渋したというユーザーは多いはずだ。イノベーションをドヤ顔でアピールするのはけっこうだが、ベンダーにとっての改善は、必ずしもユーザーの改善になるわけではない。
その点、サイボウズ Office 10は従来の使い勝手が損なわれないように工夫されている。その一例としては、Twitterのようなメンション機能が挙げられる。従来のサイボウズ Officeのコメント欄には宛先指定がないため、テキストで「佐藤さん:本文」といった具合に宛先を指定する必要があった。そこで、サイボウズ Office 10では宛先指定してコメントする機能を追加した。宛先となるユーザーのトップページにも通知されるので大変便利だが、この機能も既存のコメント欄に宛先用の行を追加することで実現されている。「変わらないと思われるように変えることを大事にしています。変化は見えないけど、じわっと便利なものを目指している」(山田氏)というポリシーがあるため、今までと比べて違和感なく使えるわけだ。
河合氏は、「今できている操作ができなくなることはまずない。新機能も既存のユーザーインターフェイスを大きく崩さないよう実装しています。でも、(新機能に)気づいてはほしいので、デフォルトではオンにして、あとからオフにできるようにしてあります」と語る。
そしてもう1つこだわるのが、「サクサク動く」という軽快さ。基本的に新しい機能を入れる場合は前向きに快適に使えている感覚を優先するために、あえて機能を落とす場合もあるという。「たとえば、通知のアイコンに件数を入れるのは、仕様上重くなるので見送った。私も軽快さは必要だと思うし、性能にこだわりを持つ開発者もいます」と河合氏は語る。
もちろん、ユーザーを招いてユーザービリティに関する機能をヒアリングしたり、新機能の詳細を事前に記事としてアップしたり、調査や周知活動にも余念がない。こうした地道な工夫が既存ユーザーと新規ユーザーも満足する使い勝手を実現し、さらに軽快さまで保つというウルトラCを実現する原動力となっているわけだ。
個人的には、約1時間の取材で「サイボウズ Officeは古くさい」というイメージは完全に払拭された。少なくとも最新版に関しては、競合のクラウドアプリと比べて、使い勝手で劣ることはない。日本の会社で使いやすいグループウェアを追求してきたサイボウズ Officeの進化を、まずはクラウド版で体験してみて欲しい。
(提供:サイボウズ)