●CHORD Hugo
次に紹介するのがCHORDの「Hugo」という製品です。価格は若干高めで25万円ぐらいです。ポータブルで使え、ヘッドホンアンプも兼ねたUSB DACです。この音は素晴らしいの一言ですね。据え置きのDACでもなかなかここまでの音は出ない。音楽の実体感がとても濃いのです。単にファイルを再生し、その情報をアナログに変えるだけではなく、なにか場の雰囲気の濃密さとか、音楽の思いの厚さとか、音楽的なボキャブラリーをより強く出す機器だなと。ファイルにはもともとそういう思いで演奏した楽曲が入っているのです。
表面的な音を出すだけではなく、音の背景にある思想とか、思いとか、熱意とか、こだわりまで再現してくれる気がします。CHORDはイギリスのオーディオ専門メーカーで、ハイエンドが強く、100万円近いDACも出しています。Hugoは初めてのポータブル機なんですが、これまでの伝統を活かし、彼らが作ってきた音のこだわりが入っています。
CHORDには天才的なアルゴリズム開発者がいて、HugoのDACも彼が書いたソフトウェアで動いています。一般的なUSB DACではバーブラウンやESS Technologyなど専業のメーカーが作ったチップを使い、その仕様に沿って設計をします。いわばありものを組み合わせているだけです。HugoではFPGAというプログラムを組んで動作を自在に変えられるLSIを使いはるかに高い性能のDACを作っています。これは実に稀有な例です。
聞いてみると、音のエネルギー感とか、音の粒立ちの細やかさとかそういうのがあり、どこのDACを聞いても得られないような感動が得られるな、と。バッテリー内蔵でヘッドホンアンプとしても使える機種ですが、しっかりとしたRCAの端子もついています。
●exaSound E22
もうひとつは2010年に設立されたカナダのexaSound Audio Designの「E22」という機種。これもちょっと高くて約40万円なのですが、抜群に音がいいですね。ひとつの売りはDSD 11.2MHzの再生が可能である点です。そして音の澄んだ感じというか、透明感がものすごいなと思います。
exaSoundは面白い会社で、DAC ICはESS Technologyの最上位品を使っていますが、ソフトはすべて自社開発なのです。ASIOのソフトウェアまで自社開発しているハードメーカーは珍しい。たいていのメーカーは外部のソフトウェア会社の製品をカスタマイズもしくはそのまま買っているのですが、インターフェースから自社で開発して良いものを届けようとしています。またUSB接続時のノイズを特別に低減する回路も入れています。その結果、音の出方が素晴らしいわけです。
●EXOGAL・Comet Computer DAC
続いて紹介するのはEXOGALの『Comet Computer DAC』という製品。2013年に設立された、アメリカのデジタルオーディオ機器メーカーEXOGALの第一弾製品です。要するに、音声データをデジタル信号からアナログ信号へと変換する製品ですが、ベテランエンジニアが手掛けると同じ音源でも細部の音のヒダまで感じられるような音質になるのです。雄大さと繊細さがうまくバランスした音楽性の高い音で、高級機らしい風格も聴けます。
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