ThinkPad、NECPC米沢工場から出荷開始、工場を見てきた

文●編集部

2015年03月18日 21時27分

レノボ・ジャパンは3月18日、ThinkPadの米沢生産開始を記念した式典を実施した。ThinkPadシリーズは、納期の短縮を目的に。ThinkPad X1 Carbon、ThinkPad X250の2モデルを皮切りに、NECPC米沢工場での組み立てを開始している。現在2月発表モデルが順次出荷されている状況で、予想を上回る反響を得ているという。

まだ雪の残るNECPC米沢事業所。LaVieシリーズが生産されている。2012年からThinkPadシリーズのパイロット生産が実施されていた。

ThinkPadの製造が日本に帰ってきた

工場内の一角に記念のハナミズキを植える植樹式には、NECレノボ・ジャパングループを代表して、代表取締役社長のロードリック・ラピン氏が出席。また米沢市長の安部三十郎氏も駆けつけた。

植樹式には米沢市長の安部三十郎氏、NECパーソナルコンピュータ 執行役員の小野寺忠司氏、レノボ・ジャパン 執行役員常務の横田聡一氏、NEC レノボ・ジャパングループ 代表取締役社長のロードリック・ラピン氏が出席。

式典の冒頭でラピン氏は米沢工場がレノボにとって重要な拠点であることを再確認。R&Dの観点でも、品質保証の観点でも重視しているとした。No.1マニファクチャーとしての地位を維持する上で、日本国内向けの製品だけでなく、日本から世界へという意味でも米沢事業所の役割は大きいという。ここでの採用事例を元に、世界に展開することができるためだ。

また、今回再び日本にThinkPadの拠点が帰ってきたこともあり、この成功を今後につなげていきたいという意欲も示した。

安部米沢市長は海外に移動していた生産拠点が、国内に戻ってきたという点で、米沢の明るい兆しが見えてきたとする。米沢工場は世界初のノートパソコンである98NOTEが誕生した場所でもある。安部市長は市内の小学5年生から中学3年生を対象に配布した「米沢の夜明け」という冊子にも言及。その中で、化学繊維を生んだ米沢高等工業学校、帝人、有機EL証明の山形大学に並んで、世界初のノートパソコンを生んだNECについて詳しく触れているという。

ゆるキャラのかねたんと一緒に。

NECレノボ・ジャパンに関しては「伝統と実績の積み重ねによって生まれた成果。社長をはじめとしたすべての従業員の努力に感謝したい」と述べた。

ふるさと納税で、ThinkPadがもらえる!?

新しい話題としては、ふるさと納税の返礼品として4月から高額納税者に対してNECレノボの製品を贈る方針があり、準備中であるということも紹介された。

米沢工場で生産されている2種類のThinkPadのひとつ「ThinkPad X250」。

大和事業所でThinkPadの開発部隊を束ねる横田聡一執行役員常務も合弁会社を通じてさまざまな協業の取り組みがあった中で、得られた成果である点を強調する。開発チームでの協業に加えて、製造の分野でも卓越した米沢工場のスキルを主力製品の生産に生かすことで、サポートや品質管理を含めたトータルの品質で高い満足度を得られるに違いないとした。

出荷目前のThinkPad。箱には「米沢生産」の文字が。

またエピソードとして、子息が購入した米沢生産のThinkPad X1 Carbonが本日の11時に届いたというメッセージがLINEで飛んできたと紹介。米沢工場のThinkPad生産が軌道に乗ったのだと、肌で感じたとコメントした。

2万種類の異なるスペックを最短3日で生産できる米沢工場

NECPCの米沢工場では構成の異なる、2万種類のモデルを取り扱っており、最短3日の短納期に取り組んでいる。ThinkPadはオーダーしたその日から数えて、部品準備で1日、組み立てと検査で2日、配送で1日の最短5日の納品をアピールしている。現状では予約分のバックオーダーもあり、10日程度の納期が必要だそうだが、4月にはこの予約分の作業も完了。ライン調整なども実施し、4月のできるだけ早いタイミングで短納期を目指していく計画だ。

工場で働く職員を激励する、ラピン社長。年度末で残業などが多く大変な時期なのだそうだ。

セル生産方式を採用しており、工場全体のキャパシティーとしては、5mほどの長さを複数人で担当するラインが最大60本あり、この増減で生産の多様性に対応している。生産規模としては、工場全体で最大1万台/1日、ThinkPadについては2つのラインを使用し、1日100台程度を出荷している状況だという。今後はオンライン販売する、ほぼすべての機種をカバーしていく計画だという。

工場の一角に設けられた、ThinkPad用の生産ライン。現状では2ラインのみだが順次拡大していく。

ラインの特徴としては、トヨタ生産方式に学んだ改善に加え、ITの力を取り入れ、国内No.1シェアの維持を、生産能力の高さで後押しする。NECPCの製品に関しては毎日夜22時までのオーダーを受け付け、夜間に生産計画をまとめ、翌朝から生産に入る体制を組んでおり、上述した3日の納期を実現している形だ。

オリジナリティーがあるところでは、ドライバーのゆれ防止用の独自の機構、手空きを防ぐリレー方式の採用、人間が動くのではなく棚のほうが動いて効率的にパーツを集められる自動化のシステムなどが上げられる。また誤りを防ぐために、ランプの光で人間をサポートするなどオートメーションでサポートする仕組みを取り入れている。

RFIDを活用して、部品やオーダーを管理。使用する部品などを間違いなくスピーディーに取り付けられるようにしている。

組み立てに使うドライバー。細かな話だが、単純に吊るすとブラブラして危ないし、とめる手間で時間もロスする。そこで、水道管を工作したストッパーをつけるなど、工場の人手で使いやすさを追求している(左)。また、パーツを収納している棚はボタンを押すと自動的に取り出しやすい位置に稼動してスライドする(右)。細かいがこういったことの積み重ねがラインを効率化するのだという。

トレーの上にわかりやすくおかれた使用部品。

ThinkPadのラインに関しては、まだ2ラインと少ない。本体にマザーをねじで取り付けるところからはじめるなど、組立工程がLaVieより多い点などから納期が遅れているが、現場では残業や休日出勤などでフルに稼動しているという。

組み立てが住んだあとは、ラックの中でOSのインストールや検証プログラムが実行される。

ジョイントベンチャーは例外的な成功を収めた

ラピン氏は、2月24日の米沢生産開始の発表後、需要を超えるニーズがあり、期待以上のスタートが切れたとした。ジョイントベンチャーについても、例外的な成功を得られたとし、日本の専門性とノウハウと、Lenovoの大規模で効率的なサプライチェーンがうまくかみ合った結果だとした。

パイロット生産開始から、本格稼動まで時間がかかったが、これは組み立てに対するものよりも、オーダーからの商流の調整などに難しさがあったためだという。

作業中のThinkPadの生産ライン

生産ラインではまさにThinkPad X1 CarbonのJapan Limited Editionの生産が進められていた。

YOGAヒンジの部分がまさに組み立てられているのがわかる

今回は「Engineering Japan and Manufacturing Japan」(日本で設計し、日本で生産する)というひとつの目標が実現した形となるが、米沢工場では5つのこれからも検討されているという。ひとつはSystem x サーバーの生産、R&Dチームを注進したLavie HZの米国出荷。ThinkPadの対応ラインアップを拡大し、Limited Editionを今後も企画。そして、米沢モデルの海外向け販売だ。

特に最後については、Made in Japanの需要は他国からもあるとしており、SNSや直接の質問として海外のユーザーも熱視線を向けているという。

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