末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第122回
起動から2年、Firefox OS、Ubuntu、Jolla、Tizen、第3のOSの動きをまとめると……
2015年03月18日 14時00分更新
3月2日から4日間、今年もスペイン・バルセロナで「Mobile World Congress 2015」が開催された。話題はいろいろあれど、今回は2013年のMWCで一斉に登場した4つのモバイルOS――Mozilla「Firefox OS」、Canonical「Ubuntu」、Jolla「Sailfish OS」、Tizen Association「Tizen」――について見てみたい。2年が経過し、それぞれの方向性が少しずつ見えてきたようだ。
あれから2年、ついに4勢力から商用端末が揃った!
2013年のMWCで、Mozilla、Ubuntu、Jolla、Tizenの4勢力がスマートフォン市場参入計画を発表してから3年。今年はやっと全ブースに商用端末が登場した。すべて、世界のどこかで販売されているスマートフォンだ。
だがスマホ市場に目をやると、AndroidとiOSを合わせたシェアは増える一方で、ついに96%にまで達している。MicrosoftのWindows Phoneですら入り込めていない状況だ。とはいえスマホ市場の規模自体が増えていることもあり、それぞれがチャンスはあると見ているようだ。
まずはMozillaのFirefox OSから見てみよう。2013年夏に製品を投入してから1年半が経過した。これまで提携したオペレーターの狙いを反映し、途上国向けの安価なスマートフォンがリリースされてきたが、2014年末にKDDIが発表した「Fx0」はギークをターゲットに狙ったハイエンドに近い機種となり、Firefox OSのラインナップに広がりをもたせた。
KDDIによると「じわじわと広がっている」とのこと。KDDIの山本泰英氏(執行役員 商品統括本部長)が分析する”Webデザイナーの世界であるFirefox OSと、プログラマの世界であるiOSおよびAndroid”の対比は興味深い。
MWCではまた、MozillaとKDDIはVerizon Wirelessらとともに、今後基本的な機能を備える端末(フィーチャーフォン?)を作成する計画も発表した。Firefox OSはまだ米国では発売されていないが、同国最大のオペレーターであるVerizonは、Firefox OSを安価なスマートフォンラインとして利用する意向のようだ(関連記事)。
象徴的だったのがOrangeだ。フランスを本拠地とし、欧州やアフリカで展開するOrangeは、MWCでFirefox OSに参加を発表した。今後アフリカ市場にFirefox OSスマートフォンを提供するという。
さて、Orangeといえば、Firefox OSを積極的にプッシュするTelefonicaと同様、ダムパイプ役に徹したくないという意思を持ったオペレーターだ。2013年にTizenがプレス発表会を開いた際、Tizen陣営で唯一のオペレーターとして円陣を組んだ同社のYves Maitre氏が、同じ会場(今年のMozillaの発表会で同じ場所が使われた)でFirefox OSを支援した。
Maitre氏はFirefox OS陣営への参加はTizenとは無関係であり、Tizenでの取り組みも継続するとしながらも、「Tizenからなかなか端末が出ない」と本音を漏らした。2013年時点ですでにOrangeの関係者から、(Firefox OSの盛り上がりと対比させながら)Tizen参加が戦略的にいいことなのか懐疑的だ、とする声を聞いていたことを思い出す。
ひっそりとしていたTizen
エコシステムフェイズに乗り出すJolla
そのTizenだが、今年はブースにSamsungが2015年1月にインドで発売した初のスマホ「Samsung Z1」を展示していた。ただSamsungはTizenを主としてスマートTVなどの用途に考えているようで、スマートフォンOSとしてのTizenはそれほど発展しないかもしれない。
この流れは、「MeeGo」でNokiaが他ベンダーを惹きつけられなかったのと同じといえる。MeeGoはTizenが現在所属する非営利団体Linux Foundationを母体とすることで、中立性をアピールしたが、結局Nokia以外の端末メーカーが加わることはなかった。そのTizenは今年のMWCで、プレス向けのイベントなどは行わなかった。
一方、元MeeGoチームが率いるのがJollaだ。約120人いる社員すべてが、NokiaあるいはNokiaが関係する会社に所属していたという元Nokia集団だ。スマホは2013年末にリリーズ済みで、市場を広げているところだ。
今年は2つめの製品となる「Sailfish OS」ベースの端末「Jolla Tablet」を展示した。このタブレットはクラウドソーシングモデルを取り、5月に出荷を開始する。Jollaは今年のMWCで「Sailfish OS Alliance」を発表し、エコシステム戦略に乗り出した。
今後、OEMを含め、パートナーを募る。話を聞いたCOOのMarc Dillon氏はこれまでと同じく自信たっぷりで、今後1年以内にSailfish OSベースのデバイスをパートナーとともに開発できると語った。日本企業と話を進めているとも言っていた(関連記事)。
(次ページでは、「Windowsと同じく端末の種類を広げていくUbuntu」)
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