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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第295回

Broadwell-KとSkylake-Sは8月 インテルCPUロードマップ

2015年03月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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2012年~2015年までのインテルCPUロードマップ

P1273ではFinFETの特性である
性能のブレを解決している?

 ということで、いよいよ本題のロードマップに戻るが、肝心のP1273がどうなっているか、現状がまったく見えていない。したがって、ここからは完全に推定の話になる。

 そもそもP1272がさっぱり製品として出てこなかった理由は、P1272の成熟に時間がかかったためである。なにが問題だったかはもちろん公式には一切発表されていないが、複数の関係者の話をまとめると、限界性能に近い領域でのブレが収まらなかったということらしい。

 もともとFinFETの場合、Finの厚みが10nm以下になると、量子効果により特性のバラつきが激しくなることは広く知られている。

 このバラつきを利用してさらに性能を改善しよう、というアグレッシブな研究もなされているようだが、研究所レベルではともかく、量産の現場ではどうやってバラつきを抑えるかの対策の方が必須である。

 連載267回にある、TEM(透過型電子顕微鏡)の写真とその寸法を見比べていただくと、Finの厚みはまさに10nmを切らんばかりになっているのがおわかりいただけよう。

14nm FinFETのトランジスタをTEMで見た画像

Finの寸法

 こうなれば特性のコントロールが困難でも不思議ではない。最終的にどんな形でこれを解決したか、いまだにインテルからは発表がないが、Broadwell-Uが量産に入ったというのは明確に解決策を手に入れたということであり、これは恐らくP1273の開発にも役に立つと思われる。

 P1273の開発のある程度の部分はP1272と並行して実施されていたはずで、そう考えればP1272→P1273の期間はP1270→P1271の期間(おおよそ1年)よりも多少短縮できるはずで、半年~9ヵ月以内というあたりではないかと思う。

 最短の半年なら今年の8月に、9ヵ月かかるとしても今年11月には製品出荷が可能、というあたりではないかと筆者は予想する。

Broadwell-Kの出荷時期は早くて8月
Skylake-Sと出荷時期が重なる

 ロードマップに戻ると、Broadwell-Kの出荷は、スケジュールが順調にいけば8月出荷であり、運悪くもう少し時間を要する場合には8月は発表だけで、出荷は第4四半期にずれこむことになるだろう。記事冒頭のロードマップは最短ケースで記述している。

 さて、これに絡んでくるのがSkylakeの存在である。かつてはSkylakeはBroadwellの次、という位置づけにあったのだが、Broadwellの遅れによってほぼ同じタイミングで投入されかねない状況になってきた。

 Skylakeそのものの内部構造などはまだ一切不明だが、筆者自身はHaswellベースのフロントエンドを強化したものになると推定している。

 今のHaswell/Broadwellは、フロントエンドが4命令(3 simple+1 complex)のx86/x64命令を解釈するIn-order、バックエンドが8つの実行ユニットが並行して動くOut-of-order構成である。

 Skylakeでは、バックエンドは小さな変更に留め、フロントエンドを5命令(4 simple+1 complexもしくは3 simple+2 complex)に拡張するのではないかと思う。

 Xeon Dの説明の中で、Broadwellはバックエンド側にバッファの拡張などが施された一方で、フロントエンド部はほとんど手付かずになっており、次はフロントエンド側だと考えるのは自然である。

 もしこれがあたっているとすれば、SkylakeではHaswell/BroadwellよりもIPC(Instructions per cycle:クロックあたりの命令実行数)が大幅に引きあがることになり、すると動作周波数そのものはBroadwellより若干下がっても性能は改善できる。

 1年くらい前の情報では、Skylake-SのTDPは4コアが35/65/95W、2コアが35/65Wという話だったが、コアそのものが複雑化するし、TDP 95WがP1273でどのくらいの周波数まで引っ張れるかは今のところはっきりしない。

 むしろCore i5/i7の普及帯は、安全を見込んでやや低めの周波数でSkylake-Sを投入し、ハイエンドに倍率アンロックのBroadwell-Kを投入する、という方が現実的な解決策であるように思える。

 ちなみにそのSkylake-Sの登場時期だが、これもP1273を使うことになるわけで、早ければ8月のIDFのタイミング、遅ければ11月であろう。このあたりは今年のCOMPUTEXで、どれだけLGA 1151対応マザーボードが出てくるか、である程度占えそうな気がする。

Braswell-Dは
Atom x3/x5/x7に統合か?

 最後にAtom系列の話をしよう。ロードマップ図でBraswell-Dコアの製品を破線にしたのは、そもそもこれが既存のPentium/Celeronブランドで出てくるか不明なためだ。

 ご存知の通りモバイル向けに「Atom x3/x5/x7」というブランドを新たに投入しており、こちらにブランドが統合される可能性もある。今のところこれに関してインテルからは明確なアナウンスは出ていない。

はタブレットやスマートフォン向けの「Atom x3/x5/x7」。2in1 PC向けにはCore Mシリーズ、高性能ノートにはCore iシリーズが展開されるが、Braswell-DコアでPentium/Celeronブランドで出てくるか不明

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