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新MacBookとApple Watchを知る 第16回

Appleイベント「Spring Forward」レポート - 新「MacBook」編

2015年03月14日 11時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)、編集●ハイサイ比嘉/ASCII.jp

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拡大するiPhoneのエコシステム

 一方で、Appleの利益の源泉としてその中核を担いつつあるのが「iPhone」だ。Cook氏によれば、iPhoneの世界での販売台数は累計で7億台を突破しており、その年成長率も業界全体の2倍水準にあたる49%を達成しているという。現在、スマートフォン台数増加を牽引しているのがミッドレンジ以下の端末が中心であることを考えれば、ただでさえ利益率の高いiPhoneが順調に台数を伸ばしているのは非常に驚異的なことだ。これは昨今の同社の好調な業績にも反映されている。

次はiPhoneの話題。最近になり世界のiPhone累計販売台数が7億台を突破したことを報告。さらにiPhone販売の年成長率が業界全体と比較して2倍であることも報告。iPhoneの利益率が際立って高いことを考えれば、これは驚異的な数字だ

 iOSやAndroidというモバイルOSプラットフォームでみれば1割程度の水準だが、特定地域のシェアや、顧客として比較的富裕な層を抱えているメリットは大きく、これを利用して徐々にエコシステムを拡大しているのが現在のiPhoneだといえる。

 これを存分に活かしたのがApple Payで、現在まだ米国のみのローンチに留まっているが、同サービスで利用可能なカード発行銀行の対応数は発表当初の6行から現在では2500まで拡大しており、Apple Payでの支払いに対応した小売店は当初の3倍にまで拡大している。

iPhone 6/6 Plusとともに発表されたApple Payは、当初6つの銀行との提携でスタートしたものが、現在では2500の銀行が発行するカードへと対応し、すでに米国人口の大部分をカバーしている状態だ

Apple Payを受け入れる小売店も従来の3倍へと拡大し、さらに最近ではCoca-Colaが自社設置の自販機をNFC決済対応のものへと入れ替えており、現在4万台規模から今年中にさらに拡大していく見込みだ

 NFC利用が可能なターミナル設置店舗数は現在全米70万ヵ所で、インフラとして十分に機能する水準に達している。こうした対応ターミナル拡大の状況でCook氏が紹介したのはCoca-Colaの自販機で、現状の4万ヵ所からさらにNFC対応自販機を拡大していく計画を同社が持っているという。

 日本と比較して自販機を屋外で見つけるのが難しい米国だが、いざ買おうと思っても1ドル札がなかなか現金投入口に入らずにイラついた経験を持つ人は少なくないだろう。Apple Pay対応自販機であれば、こうしたストレスともおさらばできる。

 当初、プリインストールアプリとWebブラウザの提供のみでスタートしたiPhoneのエコシステムだが、iPhone OS 2.0(iOS 2.0)以降になるとネイティブアプリを開発するSDKとApp Storeが提供され、対応周辺機器やサービスも含めてエコシステムは徐々に拡大していった。前述「Apple TV」でも利用されているiTunesを介した音楽や動画などのコンテンツ配信もそうだが、最近ではCarPlayやHomeKit、HealthKitのようにサードパーティ製品のエコシステムと連携してiPhoneを活用する手段が増えている。Cook氏によれば、CarPlayは現在すべての主要自動車メーカーが何らかの形でバックアップを表明しており、すでにFordなど最新モデルへの標準搭載を発表しているメーカーもある。

AppleはiPhoneのシェアを利用してさらに新しい試みを進めており、例えばCarPlayでは主要自動車メーカーすべてが何らかの形で賛同を表明していると強調する

 こうした中、Appleが今回発表するのは特にMedical Research(医療研究)分野でのiPhoneの活用だ。冒頭でも説明があったように、iPhoneの累計販売台数は7億台を突破しており、すでにそれ自体が巨大な市場を形成している。これを利用してAppleが提供するのが医療研究のためのインフラだ。例えば医療に限らず調査研究ではサンプリング調査が重要となるが、被験者のサンプル母数が少なく、調査回数や期間もまちまちで必ずしも十分なサンプルが得られているとは限らない。そこでiPhoneを調査研究のためのインフラとして開放するための「ResearchKit」を提供し、大学などの研究機関が手軽に必要なアプリ開発と提供を行える仕組みを用意する。

今回発表する新しいサービスの仕組みは「ResearchKit」という。複数の大学の研究機関と協力し、利用者同意の下での難病研究のデータ収集やテストをiPhoneを利用して定常的に行えることを目指す

 これを用いて作られたアプリでは、簡単なテストでサンプリング用のデータが収集できる。アプリ起動時に簡単な個人情報記述とサンプル送信に同意した後、各数秒程度の複数のテストを繰り返せば終わりだ。タッチスクリーンやマイク、加速度センサーなどの各種センサーを組み合わせて情報収集を行っていくが、簡単で時間もそれほど取らないため、わざわざ研究機関に出向くこともなくテストを定常的に行えることが特徴だ。現在、パーキンソン病、糖尿病、心臓病、喘息、乳がんに関するテストアプリが用意されており、複数の研究機関がテストに参加している。ResearchKitそのものはオープンソースとして提供され、Appleを含む研究機関以外にデータが渡されることはないというプライバシー重視を何よりも強調している。プラットフォーマーがこうした仕組みを自ら用意するのは、非常に面白い試みだろう。

例えばパーキンソン病検査を行うアプリの場合、数秒間で終わる簡単なテストを数回こなすだけでデータ収集と検査が行える

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