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飯田橋クラウドクラブ(略称:イイクラ) 第7回

Googleコミュニティの2人に聞いたGAEのインパクト

早すぎた本命「Google App Engine」に心を奪われた2人の巻

2015年03月23日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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5年後、俺の仕事は確実になくなると思った

大谷:なるほどー。上田さんもGAEとの出会いがきっかけだったんですか?

上田:はい。私も吉積さんと同じで、GAEは衝撃でした。もともとはTRONとか、Symbianとか、ガラケーの組み込み系プログラムを作ってました。途中からWebシステムに移って、PHPで普通のWeb開発やってたんですけど、2008年に横浜でやった「Google Developer Day」に行って、GAEの発表を聞いたんです。

大谷:上田さんは、どこらへんが衝撃だったんですか?

上田:インフラの管理をまったくしないで、コードだけ書けば、サービスが動く。今まで俺がやってきた仕事はなんだったんだという感じです。5年後、俺の仕事は確実になくなると思って、そこからGoogleを追っかけ始めました。勉強会行ったり、発表したりを続けて、今に至るという感じです。

大谷:今やってる仕事なくなるという危機感ですね。

吉積:本当に20年後にMySQLのパッチ当ててるエンジニアはいないと思います。基幹システムって、Oracle DBのパッチ当て1つとっても、当てたあと不具合出ないことを誰も責任とれないから、結局全部テストするんです。影響範囲の検証だけで数時間、しかも違うサーバーだったら台数分。すごい工数です。テストする人をアサインするのに、どれだけコストかかるんだと疑問に感じてました。でも、GAEは瞬時にインフラ立ち上げられるし、パッチ当てやスケールアウトも自在です。

大谷:インフラを手がけてきた吉積さんにとってのファーストインパクトは、Google Appsの比ではなかったんですね。

吉積:なので、東急ハンズのシステムをGAEに載せ替えて、業務システム開発に使おうと思いました。だから2009年以降はGAE上でGoogle Appsの拡張システムである「繋吉(つなよし)」作って、GAEを業務システムに適用させていました。で、GAE始めたくらいから「これだ!Googleと心中するわー」となり、GAEのPaaSの世界で天下取ったるでーという気概でやってきました。

「GAEのPaaSの世界で天下取ったるでーという気概でやってきました」(吉積)

大手SIerはAWSの存在に気づいたくらい。当分は勝てる

大谷:今、社員はどれくらいですか?

吉積:17名ですからね。みんなGAEばかりやってます。

上田:今のところGAEだと吉積情報さんとトップゲートさんの二択って感じですよね。

大谷:でも、Google Appsはリセラーけっこういますよね。

吉積:うーん。現在のGoogle Appsのリセラーは基本大手キャリアだけです。だから、キャリアをSIビジネスに引き込みたいとは思っています。端末だけ売ってても商売にならないから、うちと組んで端末とクラウドのソリューションを提案できるようにしましょうと話してます。将来はそこで認証とかにぎって、セキュリティとか他のソリューションとも連携できる絵が描ければ、大手SIの多重請け負いみたいな構造から別のゲームチェンジに持って行けるのではと考えています。

大谷:価格面で大手と差別化できるということですか?

吉積:クラウド使っている限り、大手のSIとの価格面での競争力は圧倒的です。大手SIerがそれに気がつくのはいつなのかなと。でも、今AWSの存在に気がついたくらいなので、当分勝てるなとは思っています。

大谷:長らくエンタープライズにGoogleクラウド使うというビジネスを進めてきたんですね。

吉積:はい。当初は、ハンズさんから始めたので小売が多かったですが、最近はTBSさんの事例とかもやってます。

得上:お待たせしましたー(と登場)。

大谷:トラブル大丈夫でしたー?

まだまだ続く!

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飲み屋トーク① 大手SIerはなぜクラウドに行かないのか?

大谷:最近は大手のSIerもAWSとか、Azureとかパートナー契約するようになってきましたよね。

吉積:僕、大手のSIerはクラウド向いていないんじゃないかなと思いますね。彼らとしては、ブラックボックスがいやなんですよ。あとは利用規約と責任範囲。少しでも顧客に不利益な規約、自分たちに責任負えない範囲があると、クラウドの構築や運用保守はいやがりますよね。

大谷:なるほどね。

吉積:大手SIerってお高いだけあって、責任をきっちりとろうとするじゃないですか。データベースのパッチ当てとかも、結局誰も責任とれないからフルパスでテストするわけです。一方で、業務システムって早く立ち上げなきゃってニーズはあまりないから、責任負える範囲じゃないと大手SIerはクラウドできないんだろうなあというのが僕の意見です。

上田:SLA99.9%じゃないとダメと。

吉積:ではなくて、97%だったときに、3%はなんだっかの説明責任があるんです。これがクラウドだと「わかりません。以上。」になっちゃうじゃないですか。

上田:GoogleやAmazon落ちましたーという話になる。

吉積:でも、説明できればいいんです。SLAが97%でも、「今月3%落ちていたのはこういう理由です、次はこれが起きないようにこう対策します」が言えればいいんです。極論、翌月SLAが97%でも、3%ごめんなさいの理由で報告できて、値引きさせたみたいな実績があればいいんです(笑)。

上田:お客さんの意識もそれを求めていると。

吉積:そう。理由があって、次回からは対処させますといった実績が大事であって、100%求めている姿勢を出さなきゃいけない。「SLA99.5%以上は求めないでください」と言えないのが日本の風土と国民性。でも、特に外資系のクラウドって基本ブラックボックスだし、SLA以上は無理してまでやらないので、そういう報告できないですよね。だから大手SIerはクラウドに本腰入れてこない。

大谷:じゃあ、当分は吉積天下ですね(笑)。

吉積:特に大手のSIerは自前でデータセンター持って、お客さんのシステムを抱えている。今まで、メインフレームからオープン系の移行はOK。LinuxみたいなOSSの導入もやってきた。でも、外にシステムを出すまでは想像してないんでしょうね。だから自社のデータセンターをクラウド化しつつ、外に出せないというところで止まっている。VMwareで提案したいけど、今風にGoogle Appsくっつけて企画書出してってSIerからは言われるけど、正直もう時代が全然違う。

大谷:市場への洞察が止まってるんですねえ。

上田:まあ、クラウドって使ってみないと、そのインパクトわかりにくいですけどねえ。


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