Nutubeは音も演奏性も真空管だった
ただ、音に関して言うなら、デジタルのアンプシミュレーターもかなりの線まで行っている。実際、レコーディングやライブでは、KEMPERやAxe-FX IIのような機材はよく使われていて、他人の演奏や録音を聴く限りにおいて、チューブアンプとの違いを聴き分けられる自信はない。
それでも、自分でギターを弾く側に回ると、やっぱり真空管を選んでしまう。ピアノで言うところの鍵盤の反力やストロークの深さのような違いを、チューブアンプとそれ以外の機材で感じられるのだ。チューブアンプいいところは、音そのものも去ることながら、演奏のしやすさにあるのだと思う。
たとえば、ゲインを適当に調整しておけば、クリーンサウンドからドライブのかかった音まで、ピッキングやストロークの強さで自在に弾き分けられる。真空管は簡単に歪み始めるが、歪んだ状態からのマージンもかなりあるらしく、相当に歪んでいる状態からでも、さらにピッキングの加減でニュアンスを付けられる。
アンプシミュレーターは音こそ似ていても、ギターを弾いてから信号処理を経て音が出るまでの間にごくわずかな遅延があり、指が微妙にフレットから浮いているような、ダイレクト感に乏しい状態になる。慣れれば問題ないが、これがどうにも気持ちが悪い。
だから、やっぱり自分で弾くなら本物のほうがいいよね、ということになるのだ。そしてNutubeの演奏性はどうかといえば、紛れも無くチューブアンプのそれだった。
以上、結局長々と説明してしまったが、Nutubeを積んだ実際の製品が登場するのを心待ちにしている。コルグという会社のことだから、ひょっとしたらギターアンプではなく、想像の斜め上を行くような製品が出てくるかもしれないが、それも含めて楽しみにしたい。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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