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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第142回

自分の好きな音を持ち運べるようになりたい

真空管アンプを持ち歩ける時代がくる? Nutubeの未来を探る

2015年03月14日 12時00分更新

文● 四本淑三

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なぜ僕らはNutubeに期待してしまうのか

 さて、試奏して私はすっかり盛り上がりきってしまったのだが、ギターを弾かない方に、盛り上がらざるを得ない理由を簡単に説明しようと思う。

で、Nutubeの音はどうだったの? という方は、NAMMショーで行なわれたToshi Hiketa氏のデモ演奏をどうぞ。

 1970年代にはギターアンプの世界にもトランジスタの製品が登場したが、チューブアンプのニーズはなくならなかった。1960年代末のジミヘン登場以降、マーシャルのボリュームを上げて歪んだギターの音が「ロックのかっこいい音」として認知された影響も大きい。対してソリッドステートのアンプは、高性能で歪みにくかったわけである。

 このインタビューの最初に「真空管にいいことはひとつもない」でも「何故か音楽家は真空管の音が好き」と三枝さんがおっしゃっていたのは、そういう理由でもある。

 ただ、チューブアンプは音量を上げないと、それらしい音にならない。しかし、それらしい音で鳴らすと、都市部なら間違いなく近所から苦情が来る。おまけに重くて運ぶのも大変だ。だからチューブアンプの良さはわかっていても、なかなか手が出せない。

 そこで、エフェクターやアンプシミュレーターで「それらしい音」を作り、それをスタジオやライブハウスのアンプにつなぐ、という流れができあがった。

 今回、試奏で用意されていたローランドのJC-120は、歪まないトランジスタアンプの代表だが、エフェクターやアンプシミュレーターで作った音を鳴らすのに都合がいい。丈夫でコンディションが安定していて、経時変化による個体差も少ない。だからどこへ行っても、JC-120さえあれば同じ音が出る。

 でも、本当は持ち運びが楽で、自分の好きな音が出るチューブアンプがあったら、それを持ち歩きたいというのが本音なのだ。それを可能にしてくれそうなのがNutubeなのである。バルブリアクター回路の恩恵か、小音量でもそれらしい音で鳴るという点でも、Nutubeの試作品は魅力的だった。

(次ページでは、「Nutubeの演奏性は?」

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