アカマイ・テクノロジーズは3月11日、2015年の事業戦略発表会を開催し、ビジネスの現況や今後のビジネスの方向性を報告した。合わせて同日、東京に新たなSOC(セキュリティオペレーションセンター)を開設し、日本市場向けにマネージドセキュリティサービスを提供開始したことも発表している。
2014年は25%の売上成長、さらに今後5年で「2.5倍」を目指す
アカマイ日本法人社長の徳永氏はまず、アカマイのビジネスが「記録的な成長」(同氏)を続けていることを報告した。2014年、グローバルでの売上高は、前年比25%の伸びとなる19億6000万ドルを記録した。さらにアジア太平洋/日本地域だけに絞ると、対前年成長率は32%に達する。
アカマイでは、現在のビジネスの中心である「Webパフォーマンス」や「メディアデリバリ」といった領域(いわゆるCDN)に加え、「クラウドセキュリティ」「クラウドネットワーク」「ネットワークオペレーター」の計5領域でビジネスを展開している。2014年は、いずれの領域でも高い成長率を維持した。
さらに、アカマイではグローバルの事業目標として、5年後の2020年には現在のおよそ2.5倍となる「50億ドル」の売上を目指しているという。非常に高い目標設定とも思えるが、徳永氏はデジタルメディア領域やエンタープライズ市場のビジネスが大きく伸び、牽引していくという見方を示した。
「4K HDコンテンツの普及などに伴って、デジタルメディア領域ではトラフィックが大幅に伸び、さらなる需要が生まれる。また、これまであまりアカマイが利用されてこなかったエンタープライズ市場でも、徐々に浸透しつつある。特に、エンタープライズ市場ではセキュリティが重視される。今後数年でエンタープライズ顧客の8~9割が、セキュリティサービスも購入することになるだろう」(徳永氏)
なお、国内のエンタープライズ市場でも、デンソーやカルソニックカンセイ(関連記事)、三菱UFJニコス(J-Mups)(関連記事)など、業務システムにおけるインターネット活用に、信頼性の高いアカマイネットワークを採用するケースが少しずつ増えている。
日本市場における2015年の販売戦略は、グローバルのそれと「大きく変わるところはない」(徳永氏)が、特にパートナービジネスの拡大と深化を図っていくという。
「現状のパートナービジネスは、拡販や再販のモデルが中心。今年と来年は、すでに着手しているクラウド連携などの統合ソリューションにも取り組んでいく」「日本のエンタープライズ市場では特に、各顧客を取り巻くしっかりとしたエコシステムがある。ここにアカマイも加わり、パートナーと連携してソリューションを提供していきたい」(徳永氏)
東京SOCを開設、マネージドセキュリティサービスを提供開始
徳永氏によれば、アカマイが現在、最も力を入れ、重点的な投資を行っているのが「クラウドセキュリティ」領域のビジネスだ。具体的には、インターネット上に分散配置された17万台のエッジサーバー群で構成される同社プラットフォームを活用し、Webサイト/データセンターに対するDDoS攻撃緩和やWebアプリケーション攻撃の抑止(WAF)といったセキュリティ機能を、サービスとして提供している。
今回、アカマイでは新たに東京SOCを開設した。すでに昨年10月にはスクラビングセンター(DDoS攻撃の緩和処理などを行うデータセンター)も東京に開設しており、日本市場に向けて、日本語で即応するマネージドセキュリティサービスを提供していく。
グローバルのセキュリティオペレーションを統括するロジャー・バランコ氏は、「東京SOC開設の発表ができることをうれしく思う」と述べ、マネージドセキュリティサービスを通じて“プロアクティブな防御”を提供していくと語った。
「アカマイのマネージドセキュリティサービスでは、発生した攻撃に対する防御だけでなく、常に顧客の環境を(セキュアなものに)整えていく。顧客を守る設定をプロアクティブに行い、攻撃は瞬時にブロックする」(バランコ氏)
またバランコ氏は、東京にスクラビングセンターが設置されたことで、国内から国内へのトラフィックを海外(香港や米国)に迂回させることなく処理できるようになり、レスポンスなどへの影響もより小さくなるメリットを説明した。
なお、アカマイの調査によれば、昨年(2014年)もDDoS攻撃の件数は大幅に増加し、300Gbpsを超える大規模なDDoS攻撃も発生した。オンラインゲームやソフトウェア&テクノロジーといった幅広い業種がターゲットとなっており、犯罪グループによる金銭目的の攻撃だけでなく、政治的目的を背景とした国家が関与する攻撃も多く見られたという。
「300Gbpsにも達する大規模DDoSから身を守るためには、自社ネットワークにおける対処では不十分で、アカマイのような大規模プラットフォームを利用しなければならないだろう」(バランコ氏)