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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第44回

pixivでは三日月宗近と加州清光が人気、ニコ動では織田&伊達の愛刀が舞い踊る!

女性提督が審神者に? ニコ動・pixivを席巻する刀剣乱舞人気の現状を調べてみた

2015年03月12日 18時00分更新

文● myrmecoleon 編集●村山剛史/ASCII.jp

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「刀剣乱舞」二次創作作品の傾向~ニコ動編
織田信長と伊達正宗の愛刀がMMDで舞い踊る

 ニコニコ動画ではスタートから1週間ほどは実況プレイ動画が多かったですが、2週目頃からはMMD動画(「MMD刀剣乱舞」)が増え出し、現在では刀剣乱舞動画の大半がMMDとなっています。また手描きイラストを使った「手描き刀剣乱舞」の動画も最近増えてきています。

 その他、「刀剣乱舞ボイス集」(ゲーム中のキャラクターボイスのまとめ)、「人力刀剣乱舞」(人力ボーカロイド)、「刀剣乱舞MAD」「刀剣乱舞音MAD」「刀剣乱舞イメソン」(刀剣乱舞をイメージした楽曲。転載が多いがオリジナル楽曲もある)、「刀剣乱舞卓ゲリンク」(刀剣男士をプレイヤーにしたTRPG動画)などさまざまなジャンルの刀剣乱舞動画が投稿されています。最近ではプロによる和楽器演奏と剣舞の豪華すぎる刀剣乱舞動画も話題になりました。

手描き刀剣乱舞の例。くるりんごのボカロオリジナル曲「罰ゲーム」のPVを「鳴狐」らの刀剣男士に置き換えて描かれた作品。手描き刀剣乱舞で人気のある作品はこうしたボカロ曲やアニソン等を使った映像を刀剣男士で描いたものが多い。作者のダエは海外の方。
刀剣男士のひとり「今剣」をイメージしたボカロP「水屑」による鏡音レンオリジナル曲。数としては少ないがこのようにオリジナルのイメージソングなども投稿されている。「刀剣乱舞イメソン」のタグがあるが、刀剣乱舞に合う既存商業曲等の作業BGM動画を投稿するブームがあり、このタグはもっぱらそうした動画に使われている。
プロの三味線・笛・尺八といった和楽器の奏者が刀剣乱舞ゲーム中のBGMをアレンジカバーした作品。合わせてこちらもプロによる剣舞が舞われており、非常に豪華な動画となっている。手妻師・藤山晃太郎氏が以前からプロデュースしている杵家七三社中による演奏などの伝統芸能の紹介シリーズと、MMDトレース用に本物の武術の映像を撮影する「SAMURAI_MMD」の活動を組み合わせたもので、氏の活動が刀剣乱舞の作品と見事にハマったと言える。

 ニコ動で投稿の多い刀剣男士はおおむねMMDモデルの配布と関係があり、多くはMMDモデルの配布とともに投稿数が増えています。

 「加州清光」はこちらでも人気が高く、1月末から2月上旬ではトップでした。初期から良モデルが配布されていた脇差の「骨喰藤四郎」「鯰尾藤四郎」も継続して人気が高いです。

 2月以降人気の高い「燭台切光忠」は伊達政宗ゆかりの刀剣男士。また織田信長が持っていた時期もあり、同じく伊達家ゆかりの「大倶利伽羅」や信長ゆかりの「へし切長谷部」が同時期にMMDモデルが配布されていたことから、この3名を組み合わせたMMD動画がニコニコ動画ではよく見られます(「大倶利伽羅」とのコンビは「伊達組」、「へし切長谷部」とのコンビは「織田組」「器物破損コンビ」などのタグがあります。「伊達組」「織田組」をまとめて「おだて組」と呼ぶことも)。

 女性寄りのMMD界隈では戦国時代をモチーフにした「MMD戦国BASARA」も人気で、これとのコラボ動画も投稿されています。こちらの主要キャラクターが伊達政宗なこともあり、「伊達組」や戦国時代ゆかりの刀剣男士が人気なのかもしれません。ちなみに新撰組関連で「MMD銀魂」とのコラボ動画もときどき投稿されています。

 また「大倶利伽羅」はAKB48のフライングゲットを踊る動画から「†kuricara†(踊り手)」というタグが定着したり、「へし切長谷部」はタンバリンを叩く動画が話題になったりと、着々とネタ動画を積み重ねている点でも人気があります。

梅とらのボカロオリジナル曲「虎視眈々」を、「燭台切光忠」「大倶利伽羅」とともに戦国BASARAの伊達政宗のMMDモデルと踊る動画。刀と主人の組み合わせで、それぞれ別の方の作った3Dモデルにも関わらず統一感があるのが素晴らしい。歌は「da little」の歌ってみたから。アガちん氏の配布モーションを使用。
初音ミクカバーのレベッカの「フレンズ」に合わせてタンバリンを奏でる「へし切長谷部」の動画。アホな動きを真剣にする「へし切長谷部」が愛しい。歌手担当は「加州清光」。モーションはタンバリン芸人ゴンゾーさんを「粉ふきスティック」氏がトレースしたもの。「へし切長谷部」や「大倶利伽羅」はこのようなネタ動画でも使用が多い。

 また最近投稿が増えてきているのが少年のような容姿なのに低い声で「お前のような短刀がいるか」と話題の「兄貴」こと短刀「薬研藤四郎」。ゲームボイスの動画などで2月に入ってから話題となり、2月下旬にMMDモデルが配布、投稿が急増しています。

 薬研藤四郎は切腹しようとした主人の腹を切らなかったとの伝説から尊ばれ、織田信長も好んで持ち歩いたと言われており、信長ゆかりで「燭台切光忠」「へし切長谷部」と共演する動画もあります。2月末から3月にかけてはこの3名がトップ3となっていました。

 「薬研藤四郎」ほか藤四郎の名前を持つ刀剣男士はすべて鎌倉時代の刀工・粟田口吉光(通称・藤四郎)の作。天下の三名工と呼ばれた人物で、彼の刀は同一の刀工の作としてはゲーム中で最も多く登場しています。短刀や脇差の「~藤四郎」のほか、短刀の「五虎退」、太刀の「一期一振」も彼の作。

10名という大所帯からMMDモデル10体分の完成が待ち望まれましたが、未配布のテストモデルを含むものの、ついに勢揃いの動画が投稿されています。

総勢10名の藤四郎兄弟全員が踊るMichie Mの「好き!雪!本気マジック」。藤四郎兄弟のMMD動画にはしばしば「いち兄巡回済み」タグが付けられるが、今回は一緒に踊ってる「一期一振」が非常に幸せそうで良い。五虎退のみテストモデル。

ニコニコ動画の刀剣乱舞動画に付けられていたタグについて、特定の刀剣男士等を示すタグを関連付け、タグから刀剣男士ごとに使用されているイラストの数を7日毎に調べて並べたもの。短刀は青、脇差は紫、打刀はオレンジ、太刀は赤、大太刀・薙刀・槍は緑、その他は灰色で示してある

刀剣乱舞人気は、女性艦これユーザーの取り込みが呼び水!?
女性作者増加中のMMDとも歯車が噛み合った

 「刀剣乱舞」はヘタリア・艦これなどで成功した擬人化に伴う史実を取り入れた二次創作に、女性向けでは大昔から人気が高く「戦国BASARA」「薄桜鬼」「銀魂」などと題材の重なる戦国時代・幕末といった要素を巧みに組み込み、乙女ゲー・BLゲーどちらとしても見なせるようにプレイヤーキャラクターの「審神者」を適度なかたちで配置するなど、女性向けの二次創作を促進する上での仕掛けが多重に組み込まれています。こうした点、さすがは近年女性向けゲームソフトで成功しているNitroplusと言えるでしょう。

ニコニコ動画では、刀剣男士のMMD化を機に人気が急伸した

 タイムトリップを組み込んだシステム設計、特定の刀剣男士を組み合わせることでショートドラマが見られる仕掛けなどもよくできていると思います。

 こうした刀剣乱舞の人気の拡大に2013年から2014年にかけての艦これの拡大が大きく影響していることは間違いないでしょう。艦これは男性人気が強いタイトルですが、少なくない数の女性ユーザーが存在し、彼女らのイラスト投稿や同人活動も盛んでした。

 今回の分析を見ると、共通のプラットフォームかつ類似性の高いシステムのゲームを女性艦これユーザーに提供することで取り込み、艦これ同様に二次創作を盛んにさせたことが、他の同人活動をしている女性ユーザーに広げる呼び水となった一面があったと思われます。

 ニコニコ動画ではキャラクターのMMDモデルの制作・配布など、やはり艦これと似た状況が起こっています。また前回などで紹介した通り、最近のMikuMikuDanceでは女性作者の増加が顕著となっており、この点で「MMD刀剣乱舞」は見事にハマった印象があります

3月10日のサーバー増設で勢いを増す可能性も

 「加州清光」の新撰組人気、「三日月宗近」のレアキャラ人気から、ニコ動の影響からの「燭台切光忠」人気など、多面的にキャラクターの人気が表われており、二次創作活動の活発化に拍車をかけています。

 刀剣乱舞の開発の上で上記のようなことがどこまで想定されていたかはわかりませんが、かなり考えられて作られ、また非常によくハマった印象があります。

2月上旬には、刀剣乱舞のブレイクに素早く反応したホビーメーカー各社からのグッズ発売告知が乱舞。画像は壽屋から発売予定の「トレーディングクリアファイル 刀剣乱舞 vol.1」。(C)2015 DMMゲームズ/Nitroplus

 2月はサーバー増設が追いつかずにプレイヤーが増やせなかったことを考えると、今回のサーバー増設以降はさらなる作品投稿の拡大も予想されます。また艦これの前例があることから各種メディアでの展開もすでに多数用意されているのでしょう。

 同人活動に関しても、先日幕張メッセで開催された刀剣乱舞のオンリー同人誌即売会「百刀繚乱」は突然の募集にも関わらず最終的に700を超えるサークルが参加。来場者も非常に多く、会場全体が大混雑になったと伺っています。

 夏コミの申し込みはどこまで行くのか(サークル申し込みの直前に人気が沸騰したため、急遽ジャンル誘導が行なわれました)、今後も継続するジャンルとなるのか、興味は尽きません。

 今後も刀剣乱舞の拡大に注目していきたいと思います。

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