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世界初のPepper用アプリコンテストに、ユニークなアプリ10作品が集結

介護からマジックまで!? 「Pepper App Challenge 2015」でロボットプラットフォームの未来を見た

2015年03月16日 11時00分更新

文● 松野/ASCII.jp

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「ペッパーのクロースアップマジックへの挑戦」(マッキー小澤)

Pepperがクロースアップマジックに挑戦する「ペッパーのクロースアップマジックへの挑戦」。Pepperの動きに工夫を凝らし、うまくマジックを演じさせている

 その名の通り、Pepperがクロースアップマジック(少人数の観客に至近距離で演じるマジックの形態)に挑戦する、というユニークなアプリ。Pepperが自身の心と葛藤しつつマジシャンを目指すストーリーを、コミカルな動きと胸のディスプレー機能を活かして実演する。

開発したのはマジシャンのマッキー小澤氏。普段は会社員をしているとのこと

 クロースアップマジシャンで、普段は会社員というアプリ開発者のマッキー小澤氏は、「マジシャンにとってキャラは重要、個性が5割、技術が4割、ネタが1割と言われる。喋り方や動きの不自然さもPepperの個性の1つとして考え、『手先が器用じゃなくても工夫次第でマジックができる』ことを見せたかった」とコメントした。今後は一般家庭やショー向けに発展させていくとのこと。

 いきなりの独特すぎるアプリとマッキー小澤氏のコミカルなプレゼンに、「もう優勝でいいんじゃないですか」との声も出たが、審査員の蓮実氏は「人格やキャラクターに突っ込むのはPepperにとって非常に重要なこと。そこに挑戦しているのがとてもいい」、大和氏は「Pepperは構造上、手首の動きがない。人間ほどしなやかではないのに、うまく工夫したり、ディスプレーの映像を効果的に使ってマジックを演じさせている」と講評した。

「Pepper remote」(OYOYO-PROJECT)

スマホと連携し、Pepperを操作できるアプリ「Pepper remote」

 Pepperをスマホ操作できるアプリ。QRコード読み取るだけで、前進、後進、回転など、ラジコンのようなリモート操作が可能になる。また、操作中にはPepperの頭部カメラの映像がリアルタイムでスマホ画面に表示される(10fps相当)。

 動作だけでなく、スマホのテキストフィールドに入れた任意の言葉をPepperがモーション付きで喋ってくれる機能、頭部カメラで撮った写真をスマホに送信してくれる機能などを備える。

 ディスプレーに表示するQRコードはクラウドから取得する仕組み。開発者の山内尋満氏は「Pepperの特徴は、クラウドに繋がっていること。ロボットとクラウドを上手く繋げるにはどうしたらいいかを考え、サーバーとクライアント間のリアルタイム双方向通信を可能にする『WebSoket』を利用した」と解説。今後は外出先から家の状況を確認するセキュリティー用途、ビデオチャットなど、リアルタイムWebの力を借り、Pepperが人の心を動かすようなアプリを作りたいとした。

 審査員の中野氏は、「連携もスムーズで、Pepperの目を通して世の中を見る楽しさがある」と評価した上で「リモート操作でPepperに何をさせるか、という視点が欲しい」と課題を提示。スプツニ子!氏は、「クリエイティビティの観点で見ると、ややストレートかなと思う。どう使うかというストーリーが見たかった」とコメントした。

「ペッパーと遊ぼう! 忍者ゲーム」(とのさまラボ)

Pepperに指示を出してゲームを楽しむ「ペッパーと遊ぼう! 忍者ゲーム」

 Pepperの胸部ディスプレーに表示された横スクロールアクションゲームを、Pepperに「右」「ジャンプ」などの指示を出すことで遊べるゲームアプリ。忍者の動きやゲームの進行はペッパーが喋って伝えてくれる。提供されたコンテンツをただ遊ぶだけでなく、一緒に遊んでいる感覚が得られことを期待し、このような仕様にしたとのことだ。ディスプレーに表示されるゲームはHTMLで作成、Pepperのプログラムに埋め込んでいる。

 西田寛輔氏は、「『ロボットとコミュニケーションができる時代』が来たと思っている。クイズを楽しんだり、お得な情報を獲得したりできるが、まだまだ『Pepperで遊んできた』という言い方になってしまう。ゲームの下手な友人と遊んでいるようなアプリを作ることで、『Pepperと遊んできた』と言ってもらえたらいい」と語った。

 審査員の安生氏は「ふだんゲームを作ってる側からすると『まずやらないだろうな』というもの。指示とPepperの認識にラグ(遅延)があるので、そもそもどうなのかというところはあるが、作る前に尻込みするところを作りきったのを評価したい」、池澤氏は「物理コントローラーよりも入力がきついぶん、もどかしさを感じるこそ生まれる新しさがいいかもしれない」とそれぞれ講評した。

「ニンニンPepper」(プロジェクトチーム・ディメンティア)

認知症患者のサポートが可能な「ニンニンPepper」。服薬の管理なども想定している

 Pepperに「認知症サポートロボット」としての役割を与えられるアプリ。認知症の患者は2025年には730万人、軽度認知障害(MCI)を含めると日本人口の3人に1人に達するという予測を受け、今後の超高齢化社会の到来に向けて実用化が期待される。

 アプリにはいくつかの機能があり、毎日の生活リズムを整える「目覚ましアプリ」では、毎日の曜日の確認や声を出してのあいさつを促すことにより、認知症の予防を目指す。「孫の写真アプリ」は、写真付きメッセージの送受信を行うとともに、認知症患者に対し孫の年齢などを確認する、家族との交流を増やすなど、認知症の進行を遅らせる効果が期待できるとしている。将来的には服薬管理機能なども本格的に実装し、「高齢者だけではなく、認知症患者とその家族を明るくする介護ロボット」となることを目指して開発されたそうだ。

 アプリを開発したプロジェクトチーム・ディメンティアは、大学教授、医療現場のプロ、プログラマー、クリエーターなど、異なる職業のメンバーが有志で集まった個性派チーム。審査員の大和氏は「この短期間でよくこれだけのものを仕上げてきたなと思う。認知症には身体活動が重要という話があり、ダンスなどもできるPepperが関与すると、社会ニーズにマッチした非常にすばらしいアプリになると思う」と絶賛。山海氏は「世界的に重要な課題に取り組んでいる。介護ロボットは物理的なインタラクションだけでなく、メンタルな部分での関与も期待できると言われており、これまでと違うアプローチが期待できるのではないか」とした。

「Pepper受付スマホ通知アプリ」(イサナドットネット株式会社)

「Pepper受付スマホ通知アプリ」。将来的にはPepperがオフィス全体のハブとして活躍するかも?

 Pepperをオフィスの受付として活用するためのアプリ。「こんな受付あったらいいよね」というコンセプトのもと、理想の受付をイメージして作られたという。

 事前に発行されたQRコードをPepperに見せると、担当者のスマホにプッシュ通知が送られるほか、プッシュ通知をタップするとゲストの写真を閲覧できる。スマホで担当者に直接通知するため、スムーズな取次をうたう。また、QRコードを導入しているオフィスは多いため、既存受付システムにも簡単導入できるメリットがあるとしている。今後は、勤怠管理システムと連携し残業が多い人に呼びかけ、会議室調整、あいさつ文化の定着、社員記念日リマインダーによりオフィスのコミュニケーションを円滑にするなど、受付だけでなくオフィス全体のハブとして活用できるようなアプリにしていきたいとのこと。

 審査員の中野氏は「非常にいいアプリだと思う。受付の人の態度が悪いとその後の打ち合わせに引きずってしまうこともあるが、Pepperはそういう心配がなくていい。ただ、来客者の写真が担当者に送信されるのは抵抗がある人も多いのでは」とした。蓮実氏は「Pepperを会社の受付にしたいという声は多くある。QRコードではなく顔認識するなど、人間の受付を置き換えるだけではなく、それを超える機能を持たせられたら」と語った。

(次ページ、「『Pepper セルフィ』IMJすまのべ!」に続く)

Pepperに触ってみたい方はアルデバラン・アトリエ秋葉原 with Softbankへ!

 アルデバラン・アトリエ秋葉原 with Softbankでは、今回のPepper App Challenge 2015の決勝進出者も参加する開発体験ワークショップ・ハッカソンなど各種イベントを開催中だ。とにかくPepperを触ってみたい、アプリの開発を体験してみたいという方は、ぜひ参加してみよう。

・イベント一覧や参加申し込みはこちらから

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