2015年の転換期、メーカーはパソコン市場をこう考えている 第4回
多くのユーザーの声を聞いてさらに高みを目指す
今年の東芝は“本当に使える”を目指したタブレットで攻める
2015年02月26日 09時00分更新
“使えるツール”として企画した「dynabook Tab S90/S80/S68」
── 最近はタブレットの機能はよりシンプルになり、低価格化を目指す傾向にありますが、dynabook Tab S90/S80/S68に盛り込んだ特徴とはなんですか?
寺内 「タブレットは、どうしても似たような製品になってしまう傾向があります。そこでどう差異化するかというのが課題になっていました。タブレットはウェブや動画などのメディアを見るという部分で非常に有効で、それで売れていると思うのですが、当社では生産性を向上するとか、何かをクリエイションするなど、“仕事や学習に使えるツール”としてタブレットを定義できないかなと考えたんです。
そこで、使えるとは何かを考えた時に、人間が古代から行っている「書く」ということをしっかりやっていただきたいなと。また、会議などで見たり聞いたりするものも全て取り込む、ビジネスでもしっかり使えるようなタブレットを作りたくて企画しました。
そこで書くという部分では今回、ワコムさんと協業して新しい技術を一緒にやらせていただきました。クリエイターさんが使用しているような電磁誘導式のデジタイザーは、どうしてもコストが高くついてしまい、お客様に気軽に使っていただけないので、『アクティブ静電結合方式』という入力技術を開発しました」
使ってもらわないとわからない書き心地
── アクティブ静電結合方式とは具体的にどういった方式なんですか?
寺内氏 「電磁誘導式のデジタイザーはペンに電池がいらないのですが、ディスプレー側に専用のセンサーが1枚必要なので、その分タブレットが厚くなり、コストもかかってしまうんです。一方アクティブ静電結合方式は、ディスプレーのタッチ用の静電センサーしか使わないので、専用のセンサーが必要ないんです。その代りにコントローラーは特殊です。タッチ用の静電センサーだけだと信号が弱いので、デジタイザーに電池が入っていて、電波を出しているんです。
紙に書くのと同じような書き心地にこだわっていますので、少しペンを斜めに持ってもしっかり反応します。また、非常に細かい文字が書けます。この価格帯でここまで細かく書けるタブレットは他にないと思います。
── 書き心地の向上にあたって、こだわった部分や苦労した部分を教えてください
寺内 「開発段階で課題となったのが、画面や電源系から出るノイズがセンサーの感度へ影響をあたえてしまうことです。この点は、弊社のノートPCなどで実装してきた技術と経験がありますので、かなり完成度を上げることができました。
また、書き心地の要因として応答性が良いという点があります。昔のパソコンだと、書いてしばらくしないと反応しないこともあり、かなりフラストレーションになってしまいます。いかに手書きの感覚からずれないようにするかは徹底的に追い込みました。具体的には、ペンの先の素材とディスプレーのフィルムをカスタムして、紙にボールペンで書く感覚に近づけられるように調整しました。
過去にデジタイザー付きの機材を使用したことがある方からは、非常に高い評価をいただいています。カタログに2048段階の筆圧検知機能とか色々書いてはありますが、実際に試していただくのが一番伝わりやすいんです。これは個人的なんですが、予想以上にいい出来になっています」
(次ページ「自社開発の搭載アプリ『Truシリーズ』」へ続く)
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