国内鉄道事業者で初の試み、東京メトロは「刺激を受けた」
コンテスト審査員を務めた東京メトロ 常務取締役の村尾公一氏は、「たった2カ月の募集期間という厳しい条件にもかかわらず、281点もの応募があったのは想定外。さらに台湾や上海、ベトナム、ロンドンなど、海外からも応募があった。東京メトロとしても、今回はまったく新しい体験ができた」とコンテストを振り返った。
国内鉄道事業者として初めて、全線の列車位置や遅延時間などの情報をオープンデータとして公開した理由について、村尾氏は「10周年を迎えた東京メトロが、さらに20周年、30周年と歳月を重ねていくために、イノベーションが重要だと考えた」と説明する。応募されたさまざまなアプリから新たな「東京メトロの使い方、楽しみ方」を発見することになり、「われわれも刺激を受けた」と語った。
「『世の中にこういうものが求められているな』ということを強く感じた。われわれが公開するオープンデータを使って、皆がアプリを作る。顧客ニーズが強いアプリは、やがて多くの人が利用するようになる。われわれにとっては、顧客の声を間接的に聞く“マーケティング”だと言える」(村尾氏)
審査員長を務め、コンテスト運営にも協力した東京大学大学院情報学環教授/YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP UNL)所長の坂村健氏は、海外のオープンデータ動向なども紹介しながら、「オープンデータの根底にある考えは『一人ではできない』ということだ」と述べ、オープンデータ公開は多くの人の手を借りて、公共のイノベーションを効率よく進める手段であることを強調した。
「今回は東京メトロという民間会社が、データを公開することで鉄道利用を活性化するという試みを行った。最初から課題のない試みなどない。継続していく中で、どんどん改善していくことができる。次々に新しいことをやっていくのが活性化だ」(坂村氏)
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なお、オープンデータ公開を今後どうするかといったことについては「現在社内で議論しているところ」(村尾氏)だという。今回のコンテスト開催の結果を見るかぎり、同社のオープンデータ公開に対するニーズが少なくないのは明らかであり、さらなる可能性も感じられる。公開方法のルールづくりなども含め、今後も継続的なオープンデータ公開の取り組みを期待したい。