最初の三極管の発明者は電子楽器を作っていた
―― Nutubeというネーミングですが、真空管とトランジスタが入れ替わる時期に登場したニュービスタ管の綴りが「Nuvistor」でした。Nutubeはそれに引っ掛けていたりしますか?
遠山 引っ掛けていないです。"6P1"という型番も深い意味はなく、第1世代、第2世代と何度も何度も試作しているうちに、ついに第6世代まで来て、その1個目のサンプルが一番良かったからなんです。
三枝 そういえば、三極管を発明したド・フォレスト※2という方がいらっしゃるんですけど、彼はその真空管にオーディオン(Audion)という名前を付けているんですよ。オーディオ(Audio)とイオン(Ion)を合わせたようです。
※2 Lee De Forest。アメリカの発明家で、1906年に最初の三極管を発明した。映画フィルムに音を記録する「フォノフィルム」の発明でも知られる。
―― いいネーミングじゃないですか。
三枝 そのオーディオンの構造なんですけど、ここに熱いもの(フィラメント)があって、網焼きの網(グリッド)みたいなものを挟んだ、向こう側に板(プレート)があるんですよ。Nutubeと同じように。
―― 今のようなグリッドとプレートがフィラメントを囲う円筒形じゃなくて、平べったいんですね。Nutubeでド・フォレストの頃の形に戻ったと。
三枝 そうですね、位置関係はそっくりです。あの方がオーディオンで最初に作ったのはラジオなんですけど、真空管が発振するということも見つけたんですね。それで何を考えたかというと電子楽器なんですよ。その特許を1915年に出しているんです。それには「これにピアノの鍵盤みたいなものを付けたら、鍵盤楽器になる」って書いてあるんですよ。テルミンが最初の電子楽器と言われていますけど、そうじゃないんですね。
―― じゃあ、三枝さんもNutubeでシンセサイザーを造るんですか。
三枝 ええ。
―― ホントですか!
三枝 いや、それは嘘ですけれども。
(爆笑)
(次回はNutubeで試作されたギタープリアンプを実際に操作してみます)
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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