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日本のITを変える「AWS侍」に聞く 第11回

大阪を中心にコミュニティ活動に邁進!西日本のエンジニアを幸せに

売上と利益優先の比企さんがコミュニティにコミットする理由

2015年02月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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モバイルとクラウドの選択でクラウドを選んだ理由

 こうした経緯で比企さんが最初に触ったクラウドは、実はGoogle AppEngine(GAE)だった。「インフラエンジニアでもなんでもなかったので、モバイルと連携できるGoogle AppEngineの方が魅力的だった。私がクラウド側、部下がモバイル側で、Android+GAEのクイズアプリを作った」とのことで、当時はGoogle AppEngineが一番魅力的だったという。

 とはいえ、フレームワーク化しているAndroidのプラットフォームでは、端末開発者が食っていけないという理由で、Googleからは徐々に離れていった。「昔のケータイの開発って、機能単位で10人規模でした。でも、Androidではフレームワーク化されているので、むしろそこはいじれない。開発者がさわれるところが本当に少なくなった」(比企さん)。

 当然ながら、モバイルの開発に関しても将来性を見出せなくなり、比企さんはクラウドにシフトする。「従量課金のクラウドはコストが見える。開発効率に興味がない経営者とも、コストであれば話すことができる。地理的な条件にとらわれず、100台のサーバーをすぐに用意できるクラウドは、エンジニアにとって大きな武器」(比企さん)と考えた。

「100台のサーバーをすぐに用意できるクラウドは、エンジニアにとって大きな武器」

薄利多売モデルに共感!JAWS-UG大阪で主催する側へ

 そして、GCEに次に目を付けたのがMicrosoft Azureだ。比企さんは「僕の中ではマイクロソフトは安定の第2位。嫌いになることは絶対になくて、開発環境のすばらしさやいろんなハードウェアで動くWindowsのすごさは昔から評価しています」と評価する。こんな経緯で意気揚々と勉強会に参加した比企さんだったが、残念ながら講演したエバンジェリストに情熱を感じなかったという。「GoogleやAWSはもちあげて、自社サービスへの愛着が全然なかった。熱いエバンジェリストに出会っていたらJAWS-UGではなくJAZ-UGだったかもしれない」(比企さん)。

 こうしてマイクロソフト熱が下がった比企さんが参加したのが、JAWS-UGの第0回。「Amazonが伸すと、自分の好きな商店街がなくなる(笑)」という理由で、今まで比企さんが敬遠していたAWSの勉強会である。そこで、比企さんはAWSの玉川さんと小島さんの激アツなプレゼンに圧倒される。

 そして、比企さんは、自社をベースにお客様に利益を還元していく薄利多売のモデルにIT業界の次を見たという。「人月単価の受託開発の場合、値段を上げていくしか価値が上がらない。でも、値段は簡単に上げられない。付加価値戦略は限界かなあと考えていたところに、逆の思想となるAmazonの薄利多売のモデルを聞いた。これにチャレンジしてもいいんじゃないかと思った」(比企さん)。こうした経緯があり、勉強会に参加する側に回っていた比企さんも、恩返しのつもりで1回目以降からイべントを作る側に回る。そして、JAWS-UG大阪の支部⻑代理を務めるようになったという。

10人程度から100倍規模の拡大へ。JAWSも越えて

 比企さんのコミュニティ運営は、ある意味「こじんまり」や「暖かみ」とは逆の「数」の力がメインだ。「エンジニアや企業が交流できる場所でありながら、『流動性がある』『オープンであること』というリクエストを満たすには、とにかく数を入れていって、出会いを増やす必要と考えた」(比企さん)とのことで、動員数の拡大を目指した。

 2012年末、大阪の勉強会が60名規模までいった後、より大型のイベントということでスタートしたのが、大阪、京都、神戸のコミュニティを巻き込んだ「JAWS-UG 三都物語」だ。「炎上したプロジェクトを支援している最中に、JAWS-UG 三都物語の進捗管理もやっていた」(比企さん)とのことだが、2013年の春に行なわれた三都物語は無事180人規模まで拡大できた。

 その後、1000名規模のイベントとなる「JAWS Festa 2013」を開催。「400人くらいで頭打ちになって、会場が寒くなるのがいやだったんです。だから、RubyやWordPressの勉強会、Android系など、ほかのコミュニティにも声をかけた」とのことで、さまざまなコミュニティが参加。「フェスタ」の名にふさわしいお祭りイベントになったという。

「400人くらいで頭打ちになって、会場が寒くなるのがいやだったんです」

 最近はJAWS-UG以外のイベントにも手を染めている。「もはやAWSもMicrosoftもGoogleも関係ない。関西をクラウドに巻き込むのが私の野望」(比企さん)とのことで、2014年にはクラウドごった煮の関西版である「XEgg」やIT初心者向け勉強会の「Innovation EGG」などのイベントも手がけた。そして、「クラウドがなかったら、前の会社にいたかもしれない」とのことで、昨年からはcloudpack(アイレット)に合流。名実共にクラウド、そしてコミュニティにコミットすることとなる。

 初めはリーマンショックの時になにもできなかった自身の罪滅ぼしで始めたというコミュニティへのコミットだが、すでに新しい段階に移っている。「今後はインテグレーターのような会社単位ではなく、コミュニティ内の個人で課題を請け負うようになる。実際、場所にしばられないで、こうした働き方をしている人も増えている。エンジニアが楽しんで食べていける状態を、関西でも作りたい」と比企さんは抱負を語る。今は3月22日に開催される「JAWS DAYS 2015」に邁進しているところだ。

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