勝敗をも左右するドライバーたちの活躍
今回のリアル車将棋は、指し方に特別なルールがある。持ち時間4時間の切れ負けルールとなるのだが、これは車の移動完了までの時間が含まれるのだ。そして移動完了はドライバーが完全に車から離れるか、助手席に移動することで完了を認定される。運転席にドライバーが待機してはいけないのである。そしてドライバーは20駒に対してたったの5人。ドライバーの動きひとつでも勝敗を左右するのだ。
両棋士ともに自らは陣の中で指すことになる。棋士はこの陣の中で駒を動かし、その動きをマイクで宣言する。
陣横の作戦処の中で、マイクの宣言を聞いたサポート棋士が大盤で駒を進める。
進めた駒を確認し、ドライバーは一目散に駒となるクルマに駆けて行く。移動時間も持ち時間に含まれるので、ここでのダッシュは重要なのだ。
史上初のリアル車将棋、史上初の勝者は羽生名人!
会場となった西武ドームは、ドームの屋根を構造物として保持しているので、周囲は柱などのみでスタンドから上には壁がなく、施設的には屋外とされる。だからこそガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載した自動車が走行するイベントが開催できるのだ。東京ドームやビッグサイト、幕張メッセでは開催できないイベントである。
序盤中盤は豊島七段が果敢に攻め込んで優勢に展開する。それにしても香車の駒はまったく動きを見せないものだというのが筆者の素人っぽい感想。せっかくのMR-Sなのだから動くところが観てみたい。対局開始から5時間45分ころ、やっとひとコマだけ動いた。香車が動いたのは両棋士含めてこの一度きり。
持ち時間で30分以上優勢だった豊島七段だったが、開始後およそ7時間40分後に羽生名人が指した6九銀から33分以上に及ぶ長考。そこから羽生名人の怒涛の攻めにより午後7時半ごろに豊島七段が投了し、史上初のリアル車将棋を制したのは羽生善治名人となった。
終了後のインタビューでは羽生名人は「最初は車の動きが想像できなったのですが、ドライバーの皆さんが迅速に、そして最短コースで走っていくところを感動しながら見ていました」と語った。
リアル車将棋は棋士の力もさることながら、ドライバーとの一体感も勝負に反映されるチーム戦であるところにも面白さがあった。それは各棋士自身も感じている部分であったのだ。