デル・ソフトウェアは2月5日、昨年11月に国内販売を開始した統合データ保護ソフトウェア「Dell AppAssure」についての記者説明会を開催した。この“新しいアプローチ”の新製品と、従来の「NetVault Backup」や「vRanger」を並行して提供する意味についても聞いた。
AppAssureは「いかに早く復旧させるか」に主眼を置いている
AppAssureは、デル・ソフトウェアが昨年11月に国内発売したデータ保護製品だ(関連記事)。デル・ソフトウェア 代表取締役社長の中村共喜氏は、旧来のバックアップソリューションと比較して、AppAssureは「いかに早く復旧させるかに主眼を置いた、新しいアプローチのデータ保護ソリューションだ」と説明する。
同社データプロテクション営業本部の原田宏彦氏は、バックアップソリューションに「新しいアプローチ」が必要になった背景を次のように説明する。
バックアップ処理は従来、業務に支障の少ない夜間~朝にシステムを止めて行われるのが一般的だった。だが近年では、企業の保有するデータ量が爆発的に増え、朝までにフルバックアップ処理が終わらないトラブルが増えている。加えて、システムの24時間稼働も求められるようになり、バックアップ作業のためにシステムを停止するのも難しくなっている。1日1回、24時間ごとのバックアップでは足りない(RPO:目標復旧時点が長すぎる)システムも多い。
こうした課題を解決するべく、AppAssureは新しいアプローチで、「継続的なデータ保護」「迅速なシステムリストア」「どこにでもリカバリ」という3つを備えるソリューションを提供している。
AppAssureでは、保護対象のWindows/Windows Serverが備えるVSS(ボリューム・シャドー・コピー・サービス)を利用して、スナップショットベースでバックアップ処理を行う。さらに、そのバックアップは永久増分バックアップだ。したがって、バックアップ作業のためにシステムを止めることなく、最短5分(デフォルト設定は1時間)間隔でバックアップが実行できる。
短時間でリカバリするための独自機能として、「Live Recovery」や「Virtual Standby」を備える。Live Recoveryは、ファイルシステムのインデックス部分を最初に復旧させてアクセス可能な状態にし、バックグラウンドでリカバリを続行するという機能だ。ユーザーからファイルアクセスがあれば、それを優先的にリストアする。データボリューム(非システムボリューム)で利用できる。
またVirtual Standbyは、VMware ESXi/Hyper-Vの仮想マシンを利用してコールドスタンバイ環境を構築する機能だ。AppAssureのバックアップデータを常時仮想マシンに反映しておき、本番環境で障害が発生したときには、この仮想環境(縮退運転用)に切り替えればすぐにシステムが復旧できる。
原田氏は、AppAssureはBCP/DR対策でも有効活用できると紹介した。増分のみ、重複排除/圧縮済みのデータをリモートに転送するため効率的であり、仮想アプライアンスなので幅広いクラウドサービスをDRサイトとして利用できる。複数のリモート拠点へのレプリケーションも可能だ。
なお、AppAssureサーバー1台で最大100台のマシンを保護できる(データ容量など顧客の環境により変化する)。また、保護対象マシンにインストールするエージェントはWindows用、Linux用が用意されているが、Linuxでは上述したような特徴的な機能が使えないため、主にWindowsシステムをターゲットに販売していくとしている。
NetVaultとAppAssureとの棲み分けは?
デルでは、11月のAppAssureの国内発売と同時に、データ保護バンドルライセンス「Dell Backup & Disaster Recovery Suite」の提供も開始している。これは、AppAssure、NetValut Backup、vRangerという3つのバックアップ/リカバリ製品を、単一ライセンスで利用できるようにするというものだ。ライセンス料は保護対象のデータ容量ベースとなっている。
すでにLinux市場で大きなシェアを持つNetVaultと、新しいAppAssureを同時に展開する理由は何か。また、新たなバンドルライセンスを提供する理由は何か。
中村氏は、上述のとおりAppAssureは特定用途/環境向けのソリューションであり、従来からの汎用的なバックアップニーズでは引き続きNetVaultが求められるという見解を示した。また、AppAssureでスナップショットベースのバックアップを実行し、長期保存/アーカイブ用にNetVaultを使うといった組み合わせも可能だ。
さらに、保護容量ベースのライセンスを提供することで、システム規模の拡大に応じた段階的な投資を可能にし、バックアップに無駄なコストを費やすことなく必要なデータ保護機能だけを利用できるとしている。