Out-of-Orderを実装した
EV6こと「Alpha 21264」
続いて1996年10月のMicroprocessor Forumにて、EV6こと「Alpha 21264」が発表される。内部構造は4-wayのスーパースカラーという点はEV5と一緒ながら、ついにOut-of-Orderを実装することになった。
これにともない、ALUの構造が大幅に変化している。下の画像が21264の内部構造であるが、整数演算部は2組のALUと、それと対になるアドレス計算ユニットが用意されているのがわかる。
アドレス計算ユニットの役割は、整数演算にともないメモリーアクセスが発生する場合、これをハンドリングすることである。これはAMDのK7などと近い発想だが、Alphaの設計チームがまるごとAMDに移動して開発を行なったのだから当然同じというべきか。
パイプラインは整数演算が7ステージ、メモリー書き込みが9ステージ、浮動小数点演算が10ステージで、Out-of-orderを実装した割には少ないと感じる。
プロセスは引き続きCMOS6を利用し、当初の動作周波数は500MHzと発表された(ちなみにこの発表時点では、EV56もまだ500MHz駆動であった)。
消費電力はこの500MHz版で60Wと推定されており、結構な大きさであるが、最終的に600MHzまで動作周波数は引き上げられ、消費電力は110Wに達した。
このEV6の改良型としてSamsungの0.25μmプロセスを利用し、動作周波数を833MHzまで引き上げたのがEV67で、これは1999年末に市場に投入される。
さらに2000年にはIBMの0.18μm+銅配線プロセス利用したEV68Cがサンプル出荷を開始し、最終的に1.25GHzまで動作周波数が引き上げられた。ASCI Qで利用されたのはこの1.25GHz駆動のEV68Cとなる。
EV8まで続く後継プロセッサー
続く製品も簡単に説明しておこう。2002年にはEV68コアを利用しつつ、大容量の2次キャッシュと4chのDirect RDRAMコントローラー、それとプロセッサー間をハイパーキューブ構成の専用リンクで接続するためのルーターを追加したEV7こと「Alpha 21364」が発表される。
もっとも当初は1999年中にテープアウトし、2000年には量産出荷の予定だったが、実際のテープアウトは2001年4月まで遅れ、出荷は2002年に入ってからとなる。最高動作周波数はEV68と同じく1.25GHzとされたが、実際の製品は最大でも1.15GHzどまりとなった。
これをIBMの0.13μm SOIプロセスにして動作周波数を1.45GHzまで上げる予定だったEV79は2003年にキャンセルされ、プロセスを変えずに1.3GHzまで動作周波数を引き上げたEV7zが1994年に投入され、これが最後のAlphaとなった。計画ではさらに4-way SMTを採用したEV8もあったが、これもキャンセルされている。
COMPAQがDECを買収し
ASCIプロジェクトに参加
さて、Alphaの説明にページを取ってしまったので先を急ごう。このAlphaを設計・製造していたDECは、1990年台前半から急激に業績を悪化させており、結果さまざまな製品や部隊を外部に切り売りして凌いでいた。
端的なのは1997年にインテルに対して起こした訴訟であり、この和解条件としてDECがマサチューセッツに保持していたファウンダリーを8億ドルで売りつけることに成功している(StrongARMやIXPといったプロセッサーも、この時一緒にインテルに売り渡された)。
そこまでしてもDECの業績は回復せず、結局1998年6月に同社はCOMPAQに買収された。COMPAQは非常に強力なサーバー製品のラインナップを手に入れ、これをベースにASCIプロジェクトに応募することを決定した。
なお、一説によるとCOMPAQは、DECの時代から応募する意向があり、いくつかのプロジェクトには応募しても落選していたらしいが、公開資料にそれを明示的に示すものがないので、本当のところは藪の中である。
→次のページヘ続く (核実験以外の用途に転用するも戦力外通告)
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