今回のスーパーコンピューターの系譜はASCI Qを説明したい。ASCIの名前を冠するのはこのASCI Qが最後で、Red StormなどはASCIではなくASCとなるからだ。
ASCI Q
まずは30TFLOPS、次いで100TFLOPSを狙った
ASCI Q
前回の最初で触れたとおり、ASCIの次なるターゲットは30TFLOPSである。一番最初の計画では1998年中に契約を済ませ、2001年中に運用に入ることを目標としていた。ただ、いろいろとシステムの選定は遅れ、最終的にエネルギー省がASCI Qに冠してCOMPAQと契約したのは2000年8月22日のことである(関連リンク)。
この時の計画では375システムのAlpha GS320 Server(関連リンク)を納入して30TFLOPSを狙った。さらに後にこのシステムをAlpha EV7ないしAlpha EV8にアップグレードすることで100TFLOPSも視野に入れるオプションも用意されており、最初のシステムは2002年の早い時期に、100TFLOPSアップグレードのシステムは2004年にそれぞれ運用を開始することになっていた。
契約金額は約2億ドルで、当時の為替レートで換算するとおおよそ210億円ほどになり、ASCI Whiteの倍である。ちなみにこれはASCI Blue Mountainの後継としてロスアラモス国立研究所に設置されたが、ASCI Blue Mountain自体は2004年11月まで運用されていたため、別の設置場所が必要である。
このためにロスアラモス国立研究所はASCI QにあわせてSCC(The Stragegic Computing Complex)と呼ばれる建物を6400万ドルかけて建設している。ちなみにこの建物は2002年に“Nicholas C. Metropolis Center for Modeling and Simulation”と命名された(関連リンク)。
ASCI Qに採用された
初の64bit RISCプロセッサー「Alpha」
さて、このAlpha Serverに利用されているAlphaというプロセッサーについて少し紹介しておきたい。Alphaプロセッサーは元々DEC(Digital Equipment Corporation)という会社が1980年代後半から開発を始めたチップである。
同社は元々PDPという16bitのマシンを開発・販売したメーカーだ、最初のUnixはPDP-7で、UNIXが広く普及するきっかけになったSystem V6はPDP-11上で動作しており、これが目的でPDP-11を導入したサイトも少なくなかったと聞く。
DECはPDP-11に続き、完全な仮想記憶に対応する32bit OSをサポートしたVAXと呼ばれるプロセッサー、というよりシステムを1977年に発表、主流はこちらに移る。
VAXがプロセッサーでなくシステムなのは、当時の技術ではCPU全体はとても1つのチップに乗り切るようなものでなく、大掛かりな基板に複数のチップを組み合わせるCPUボードの構成を取っていたからである。
その後同社はVAXの高性能化やワンチップ化を進めていくが、同社は設計技術はともかく半導体製造技術では遅れを取っており、1980年代も後半になると性能面でだいぶ他社(主な競合はIBMだったが、他にも多くのメーカーがDECの市場に性能/価格比でチャレンジしてきていた)に追い越されてしまった。
この劣勢を一気に覆すべく同社は複数のプロジェクトを走らせ、ほぼ全部がキャンセルされているのだが、その中にPRISMというコード名で知られるRISCプロセッサーのプロジェクトも含まれた。AlphaはこのPRISMから多くの成果を利用しつつ、初の64bit RISCプロセッサーとして改めて開発が始まることになる。
→次のページヘ続く (性能を引き上げていくAlphaプロセッサー)
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