レノボ・ジャパンは2月10日、都内で“Broadwell”世代の最新CPUを搭載したThinkPadの新ラインアップを発表した。先行して市場投入している「ThinkPad X1 Carbon」や「ThinkPad E」シリーズと合わせ、全17機種のラインアップが出揃った。
タブレットはパソコンの導入にとって好影響
発表会冒頭ではレノボ・ジャパンの執行役員専務、瀧口昭彦氏などが登壇。瀧口氏は、直近の市場調査結果を踏まえ、レノボのシェアが世界市場で20%の大台に乗ったこと、国内でもNECPCのシェアと合わせ30%のシェアを獲得していることなどを紹介した。また、IBMから事業譲渡を受け設立した、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズについても言及。クライアントからサーバーまでワンストップで提供できる企業に変革した点や、シンクライアントをはじめとした、企業システムの一翼を担う存在として、ThinkPadシリーズを位置づけていくことなどについて述べた。
一方ThinkPad製品事業部 ThinkClient Brand Managerの土居憲太郎氏は新製品の投入にあたり、改めて市場調査を実施したとコメント。国内における企業向けPCの出荷台数は、2009年のリーマンショックで一時減少したものの、Windows XPマシンのリプレースに伴う特需などもあり、順調に数字を伸ばしているとした。
同時にタブレット導入も増加しているが、2014年はいったん落ち着いた状況。競合関係だけではなく逆に既存のパソコンの導入に対しても好影響を与えているとした。土居氏は「バック・ツー・ベイシック」(基本に立ち返る)という言葉でこの状況を表現。ビューイングやシンクライアント的な用途での活用が進むタブレットに対して、パソコンでなくてはならないこと、パソコンをどう使っていくかが焦点になるとした。
企業システムの状況を鑑みると、Internet Explorer 8のサポート終了による業務アプリケーションの刷新という大きな課題がある。また、企業内でパソコンを個人で使う立場で見ると、LTEへの対応や携帯性の改善に対する要求、あるいはスマホなどに慣れたユーザーから会社のパソコンでなぜタッチ操作ができないのか、もっと高速に起動しないのかといったUIの改善に関する要求があるとする。これら導入や運用にかかわる問題に加えて、管理性やセキュリティーといった要望にIT管理者は応える必要がある。エンドユーザーの使い勝手を優先に考えたThinkPadシリーズと、信頼性の高いSystem xを組み合わせることで、こうした課題に応えられるとする。
その一例として、約1万4000台のThinkPad XシリーズとSystem xを導入したキリンの事例を紹介。同社ではThinBoot ZEROと呼ばれる、レノボ製パソコンベースのシンクライアントシステムを導入している。
直射日光やカビにも強い、新ThinkPad
ThinkPadシリーズの新ラインアップは、6段配列キーボード/ThinkPadクリックパッドの回帰、あるいは第5世代Core iシリーズの採用による長時間駆動などが第1のポイント。一方で拡張性の確保、そしてバッテリーをはじめとした各種オプションの共通化なども注目すべき内容となる。
これまでもドックコネクタや各種オプションの共通化などを積極的に進めてきたThinkPadだが、今回のシリーズではバッテリーに関しても共通化を進めており、X/T/Wの各シリーズが同じバッテリーパックを搭載している。モバイルワークステーションのThinkPad W550シリーズなど、着脱式のバッテリーパックのほかに、本体内蔵のバッテリーを持つ機種も用意。ホットスワップに対応し、さらにThinkPad X250などのバッテリーを外出先で貸し借りするといった使い方も可能になる。
さらに従来からの特徴であった堅牢性に関しても、湿度や温度、粉塵、振動など10項目のMILスペック(米軍調達基準)を満たすことに加え、太陽放射(屋外での過酷な使用を想定)や耐菌試験(研究室や実験室での使用を想定)など2項目を追加している。
またThinkPad Helixでは、ThinkPad X1 Carbonに続き、PCIe x4接続の高速SSDの搭載が可能となった。低消費電力のCore Mによるファンレス筐体や企業向けのみに提供されるSIMフリーモデルによる、LTE経由でのInstantGoなど、機動性やシーンに応じた利用形態の豊富さなども特徴となる。さらにHDMI端子とMini Displayportを持つため、3画面の同時利用も可能となっている。
発表会ではThinkPad Helixを中心にThinkPadのさまざまな利用提案がなされた。外出先には開発中の「ThinkPad Stack」などと一緒に本体(タブレット部分だけ)を持ち運び、VDI環境で使う。あるいはStack内蔵のBluetoothスピーカーを使って、Lync 2013で会社のデスク向けにかかってきた電話を取る。帰社後は会社のデスクにあるThinkPad Tabletドックにおいて、複数画面の快適な操作環境を手軽に手に入れ、かつ外出先と同じVDI画面が表示されるのでシームレスに作業が続けられる……などの提案だ。
その過程では、DisplayportをアナログRGB出力に変換する純正アクセサリーを用意する点やデータ交換に便利なmicroSDカードスロットを備える点なども紹介された。
米沢生産のThinkPadシリーズも出荷開始
また、1月14日から500台限定で先行予約を受け付けていたThinkPad X1 Carbon Japan Limited Editionを皮切りに、ThinkPad X1 Carbon、ThinkPad X250シリーズの国内生産モデルを受注していく点も紹介。これらは発注時のCTO画面で、選べる仕組みになっており、国内生産による短納期で提供していく予定だ。出荷時には米沢生産をうたった梱包が使われるという。