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CROSS 2015で聞いた!失敗しない引き継ぎのための「金言」をどうぞ

正しい引き継ぎを異業種バトルで考える「引き継ぎ式年遷宮」

2015年02月10日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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属人化、モチベーション……引き継ぎにまつわる意見交換

 後半のディスカッションでは、引き継ぎにまつわるさまざまな意見交換が行なわれた。

引き継ぎに関して一言あるパネルディスカッションのメンバーが意見交換

 まずは業界を問わず問題となる属人性。不動産の営業をやっていた竹下さんは「営業の世界では基本、引き継ぎはない。辞める時は顧客は持っていく」と断言し、そもそも引き継がれないものも多いと指摘。「同じ会社でもお前とは話すけど、あいつは寄こすなという話はよくある」(竹下氏)とのことで、顧客などの引き継ぎでは、人選自体でもめることもあるという。

 杉山さんは「仕事が人についてしまうと渡しづらくなる。だから、いつでも渡せるよう、仕事の仕組みを作っておく必要がある。そうしないと『俺がいないと進まない仕事』になる」と属人性の排除と業務のマニュアル化はセットにして考えるべきと指摘。

 人を相手にする介護の場合、当然担当の好き嫌いもあるし、好みや嗜好も変わってしまうため、一律の対応はできないという。そもそも引き継ぎ項目は現状は23項目のアセスメントのみ。飯塚さんは「人に関する生活行為って実は1万くらいあるので、23項目以外は手書きや口頭になってしまう。本当は全部勝手に記録してくれるといいなと思う」と介護のIT化に期待を寄せた。

 次に引き継ぎのモチベーションについても話がおよぶ。IT業界のエンジニアは100点からの減点主義。「システムは動いて当たり前で誰も褒めてくれないが、動かないと怒られる。障害が起こるのはともかく、復旧に時間がかかるとマイナスになる」(舘岡さん)。そのため、引き継ぎの失敗はきわめて致命傷になる。「システムは見えないところでつながっているので、そこまで引き継ぐのが鍵」と舘岡氏は指摘する。

 同じく減点主義となるのが役所。ミスをしないのが当たり前で、ルーティンワークを淡々とこなせばよい仕事もある。しかし、杉山さんは「減点主義でも改善できるところ、自分なりに攻められるところというのは、絶対どこかである。マニュアル作りとか、周りが褒めてくれなくても、実績を積み重ねていれば、無理も利く」と攻めることの重要さを語る。

あえて引き継がないという選択肢とは?

 新鮮だったのは、あえて引き継がないという選択肢。杉山さんは「式年遷宮ではないけど、引き継ぎは仕事のやり方をリフレッシュする最適な機会でもある。前の人をそのままやることが引き継ぎじゃない」と、あえて引き継がない、後任にやり方を任せるという方法もあると持論を展開。

 IT業界で「引き継がない」という選択肢はあるのか? 竹下さんは、「障害対応のあとにドキュメント作っても、次に障害が起こったら、それに忙殺されてしまう。だから、システムの目的とそのシステムが他とどうコミュニケーションしているかを完璧に把握したら、障害に対してはドキュメントに頼らず、すべて新規だと思って戦えと上司に言われたことがある」とコメントする。

 引き継ぐことが前提のIT業界の冨田さんと舘岡さんは、そもそも引き継がないという選択のイメージができないよう。「引き継がれないと、苦労の連鎖が憎しみの連鎖につながってしまう」(富田さん)、「ちゃんと情報くれないとこっちが苦労するので、(引き継がないというのは)受け入れられない。作ったお前がなんとかしろよと思う」(舘岡さん)。

 セッションの最後でコメントした杉山さんは「結局、人の仕事をやるという点で引き継がれた側のモチベーションが下がってしまう。だから、次の人がやる気を出せるように話を伝えるのが重要」とまとめた。

 総じてどこの業界・業種でも引き継ぎには苦労しており、それぞれ対応が異なることがわかった。とはいえ、今回のセミナーを見る限り、成功へのベストプラクティスがもっとほじくり出せそうな状態なので、長い目で多くの意見を集めたいテーマに思えた。

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