コルグ・ノリタケからはまさかの真空管「Nutube」
このアナログシンセの蔓延も、元をたどってゆくとコルグの皆さんが火を付けたわけです。コルグは日本国内でモーグの代理店もこなす一方、かつてはそのライバルだったアープまでも復刻するという、アナログシンセの伏魔殿ようなことになっています。
しかし復刻だけでいいのか? アナログなら何でもいいのか?
そうした懐疑へのひとつの答えが、ローランドの新しいJDシリーズではないだろうかと私は思っているのですが、やりたいことをやった当のコルグの皆さんは、またしても奇天烈な方向へと駒を進めました。
おそらく今年のNAMMショー最大の目玉は、コルグの発表した新しい真空管「Nutube」です。しかし、その発表は実に簡単なものでした。
NAMMショー開催を前にしてアナハイムで行なわれたコルグのプレゼンテーションでは、後にARP Odysseyのお披露を控えていたこともあるのでしょうが、冒頭で30秒ほど「これは新しい真空管です」と紹介されたのみで終わってしまいました。
画面の前で「ちょっと待て! 今のは何?」と叫んだのは私だけではないはず。そのLSIのような形状から言って、ノスタルジー需要を狙ったものではないのは明らかでしたが、後にメーカーから出されたリリースを要約すると、こんな感じです。
- 省電力: 従来の2%以下の電力で動作し、発熱も少ない
- 小型: 容積比で30%以下で、基板に直接マウント可能
- 長寿命: 30000時間
じゃあ、これでできる製品は何なのか。実は現地ではNutubeを使って試作されたギターアンプのデモがあり、その動画が一時YouTubeの"Korg USA"のアカウントで公開されていたのですが、ほどなく非公開となってしまいました※。
そして、その後、どこからも続報が出てこない。そこでコルグさんに取材を申し込み、2月6日にインタビューを終えて帰ってきました。続報を待て!
※ 現在非公開になっているデモ動画はあまり音が良くなかったため、再編集されて後日公開されるということです
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ