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TOKYO AUDIO STYLE 第4回

「いい音」を探る楽曲制作プロジェクト

東京女子流の録音開始、エンジニアの機材はほぼ使わないって本当!?

2015年03月09日 17時00分更新

文● 構成●荒井敏郎
写真●Yusuke Hommma(カラリスト:芳田賢明)

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できあがった歌詞を元に、東京女子流メンバーの歌割りを決める

 今回の楽曲制作プロジェクトでは、「いい音」での曲作りというテーマを持っており、歌詞に関してはとりたてて新たな試みがあるわけではない。ただし、歌詞はそのまま歌につながるものなので、無視できない要素のひとつだ。東京女子流は5人のメンバーから成るグループであるため、それぞれがどのパートを歌うのかというのは重要になる。これまで歌割りは与田氏が決めることが多かったが、今回は、グループのリーダーである庄司さんが担当。メンバーの歌声の特徴などを踏まえながら、与田氏や坂田氏などを交えて歌割りを決めていく。

 後述するが、サビの部分は3名→ソロ→3名→ソロとなる。1番と2番で歌う組み合わせを変更することで、メンバーがある程度均等に登場するようにパートを振り分けている。ただし、メンバーとしてはサビによってパートが変わるというのは、若干ややこしいとのこと。

与田氏、坂田氏などを交えて、歌詞を元にメンバーの歌割りパートを決定していく

レコーディングの様子を紹介! デジタルで作業は大幅アップ

 実際のレコーディングに入る前に、小島氏と与田氏による対談を掲載する。現在のフルデジタルでの録音による、いい点と悪い点が見えてくるものとなっている。

「Pro Tools」上で歌を録音していく。今回は、ハイレゾでの配信を踏まえて、「サンプリングレート」を「96kHz」に設定した

与田 今回の歌録りは、サンプリングレートを「96」にしています。普段は「48」ですね。

※ アナログ信号をデジタルに変換する際に、アナログの電圧を数値化する1秒あたりのサンプル数。この数字が大きいほど、アナログ信号をより正確に表現できる。CDには44.1kHzのサンプリングレートが採用されている

小島 サンプリングレートだけで単純に容量が倍ですよね。普段はProToolsのオーディオ・トラック数はどれくらい使っていますか?

与田 楽器だけで30トラックくらいですかね。そこに歌が入って、5人それぞれでいろいろやるので150トラックくらいになっちゃうこともあります。

小島 それは、物理トラックだったらできないですね(笑)。

与田 昔のマルチトラックを使ったレコーディングだとここまでできなかったかもしれません。だから、そう言った意味では、昔の歌手の方達は歌がうまかったですよね。いまは僕ら録るほうも、あとでなんとかなると思うと「じゃあお疲れさん」ってなるじゃないですか。何度も何度も歌わせて本人のテンションを落とすのも嫌だし、難しいところですよね。

小島 なるほど。

与田 マルチが48トラックでも足りないことがあって、そんなときは楽器のトラックを別のところにダビングしておいて、あとで戻してたりしたんですけど、相当大変です。

小島 「ピンポン」ってやつですね。

与田 そうです。昔はそうしたやりくりが大変でした。事故も多くて、アシスタントが「あー! 消えました……」ってこともよくありましたよ(笑)。アンドゥーできないですからね。

小島 いまはフルデジタルですか?

与田 そうですね。

小島 外部のコンソールみたいなものも使わない?

与田 ほとんど使いませんね。よく音楽雑誌の取材風景などで、SSLやNEVEの卓で作業している風景が写ってますけど、モニターで通してるだけでハリボテです。

小島 モニター専用なんですね(笑)。

与田 僕らの時代は、立ち上げて設定して……という作業が4、5時間かかってました。そのあと作業が終わって「お疲れさん」となったらスタジオアシスタントが初期設定に戻しちゃうので、次の日にまた同じ準備が必要なんです。だったら、「Pro Tools」でやったほうがすぐに戻せて簡単です。たぶん若いエンジニアで卓でトラックダウンできる人はほとんどいないと思いますよ。

小島 Pro Toolsの画面には、リアルなコンソールが表示されるじゃないですか? その現物を知らない人がほとんどってことですね。

与田 そうですね。

昔と今の録音について語る与田氏

(次ページでは、「同じパートを繰り返しながら、少しずつレコーディングは進んでいく」

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