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建物全体が煙突構造という省エネデータセンターの新標準

IDCFの“呼吸するデータセンター”を白河で体感してきた

2015年02月05日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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「入館レス」を前提としたマネージドサービス

 サーバールームは2層積みとなっており、上層の床は開口部の高いグレーチングとなっている。つまり、下層から上層へ空気が上昇するようになっているわけだ。ラック総数は1棟あたり600本。ラックの高さは1号棟では49U、2号棟では50Uと高く、集積密度はかなりのもの。このラック単位で、平均8kWの電力が供給されている。現在は顧客のサーバーのハウジングや自社のクラウドサービスのほか、Yahoo! JAPANグループもここを使っているという。

49Uのラックが並ぶサーバールーム

IDCFクラウドのサービスを担うサーバー群

新開発の移動式の高感度煙感知装置(VESDA)を採用

上のサーバールームから下がグレーチング越しに見える

グレーチング越しに下から排気が吹き上げているのがわかる。自然の空気の流れを使っている

 特筆すべきは、「入館レス」を前提とした充実したマネージドサービス。都心から離れている郊外型データセンターの場合、どうしてもオンサイトの作業やメンテナンスは面倒になる。この課題を解決すべく、究極はユーザーが現地に1度も行かずに済むよう、さまざまな遠隔での構築・保守サービスを提供している。

 IDCフロンティアが調べたところ、入館理由の半分は機器設置や搬入作業なので、現地のオペレーターで十分事足りるという。リモートオペレーションでよく出てくる「機材が見えないと不安」という心配に対しては、現地に高解像度なWebカメラを用意しており、ラックの様子を直接見ながら作業の指示が行なえる。そもそも現地に専任SEが常駐しているため、トラブル対応なども確実でスピーディ。そのため、ほとんどのユーザーは現地に来ないで運用・管理ができているという。

データセンターの入館理由を調べると、現地のオペレーターで十分な機器の設置や搬入が半分を占める

高解像度なWebカメラを活用。iPadのジャイロ機能で遠隔操作したり、直接保守要員に指示できる

 こうしたマネージドサービスを提供しつつ、入室時の情報セキュリティ対策もきちんととられている。非接触型のIDカードと静脈認証装置による入所管理を行なっているほか、警備員が24時間365日常駐し、身分証明書による本人確認を行なっている。屋内はもちろん、屋外にも監視カメラが設置されており、高い物理セキュリティを確保している。

都心型ともコンテナ型とも異なる新しい形の省エネデータセンター

 白河データセンターをじっくり見学してきたが、いかがだったろうか? 冒頭で外気冷却を全面採用した郊外型データセンターの代表格と書いたが、建物全体を巨大な煙突と見立て、自然な循環でIT機器の排熱を実現するという、その独特な設計や建築に驚く。しかも、これらを自動制御しているというのだから、「呼吸するデータセンター」という表現もあながち間違ってないだろう。サーバールーム以外のスペースにとても余裕があるので、もう少し詰め込めるだろうと考えるのは、集積密度命の都市型データセンターを見慣れているからだろうか?

 オフィスビルの延長にあるような都心型データセンターとも、モジュラー型を突き詰めたコンテナ型とも明らかに異なる。地の利を活かし、自然の力で無理なくIT機器を快適に動かすといったコンセプトで作られた白河データセンターは、日本型省エネデータセンターの1つの完成形と言えるだろう。

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