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東急ハンズアプリ オフラインからオンラインへ3つの狙い (2/2)

2015年02月16日 11時00分更新

文●野本纏花

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足掛け2年のビッグプロジェクト

「コレカモ.netからの付き合いなので、風通しよくアプリ開発はできました」と話すチームラボ Catalyst Div.竹村賢人氏

 東急ハンズアプリの開発を担当したのが、チームラボ Catalyst Div.の竹村賢人氏だ。東急ハンズとチームラボのコラボは、2010年にリリースされた東急ハンズが企画、チームラボが開発した「コレカモ.net」にまでさかのぼる。

 経済産業省のコンペのために作られた「コレカモ.net」は、Twitterで探している商品をコレカモのアカウントに対してメンションでつぶやくと、商品をレコメンドしてくれるサービスだった。あまりの精度の高さに、人力で返信していると勘違いする人もいたという。

 商品の在庫情報などのやり取りを「コレカモ.net」を通じてユーザーとコミュニケーションしていた緒方氏は、Web上でもユーザーと“1対1の「接客」”ができる可能性に気づいた。

「コレカモ.net」のトップ画像。かわいい鴨のキャラクターが「コレカモ」と商品を提案してくれる

「“ネットを使ってリアルを活性化する”というベクトルに、大きな価値を感じました」

 これをきっかけに、実店舗とインターネットを循環させる仕組みづくりを目指して、プロジェクトは1歩ずつスタートすることになる。

 しかし、実際にアプリを作り始める前に、店舗とネットストアでバラバラに持っていた商品データの整備や、会員情報とポイントシステムの統合といった、バックエンドのシステムから手を入れる必要があった。

 例えば、商品データベースだ。通常の商品データベースは、ミニマムにすれば販売価格・卸値・発注時のロット・商品名の4項目があればよいのだ。しかしネットで商品を売るとなると、複数枚の写真や、幅・奥行き・高さといった商品サイズ情報など、圧倒的にリッチなデータベースを用意する必要がある

 しかも、アプリを持って顧客が全店舗を歩き回るとなれば、従来からあるネットストアで扱っている商品だけでなく、全店舗の全商品のリッチデータが必要だ。現時点で全商品70万点中、12万点程度までは、リッチデータになっている。データの更新にはまだまだ時間がかかりそうだが、「スピード感を爆発的に上げるアイデアはある」とのことだ。

 こうしたハードルをひとつひとつ超えて、ようやくアプリで会員カードやポイントを管理しながら、ネットショッピングや店舗の在庫情報検索までできる“究極のお買い物ツール”として「東急ハンズアプリ」が誕生した。

 複数回に渡る大きなUI/UXの見直しと機能追加を経て足掛け2年がかりでリリースという難産プロジェクトとなったが、「まだまだ未完成品。やりたいことは山ほどあるし、UI/UXはもっと洗練させなければならない」と緒方氏は語る。

 どんなによいアプリを作っても、実際にダウンロードして使ってもらわなければ宝の持ち腐れだ。既存の会員450万人へのアプローチを皮切りに、Web広告も併用してユーザー数を伸ばしていく予定だ。

※ ※ ※

 東急ハンズの「来店前、中、後」という3つアプローチ、商品データベースのリッチ化など、オムニチャネル化を進めるために必要な取り組みは、多くの業種にも当てはまるだろう。次回は、東急ハンズのオムニチャネルの取り組みについて、さらに詳しく紹介していく。

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