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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第41回

いま投稿が多いのは「艦隊これくしょん」「東方」「刀剣乱舞」

海外からも集まる100万人の「絵師」の遊び場・pixiv

2015年01月29日 18時00分更新

文● myrmecoleon

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拡大する「オリジナル」
安定して人気の高い「東方」、台頭する「艦これ」

 pixivもニコニコ動画と同様にソーシャルタグの仕組みを採用しており、タグを利用して作品の傾向を概観することができます。

 pixivで最もイラストに付けられているタグは「オリジナル」。pixiv全体としては既存作品の二次創作が多いのですが、個別のタグでは「オリジナル」が最も多いです。

 「オリジナル」タグのイラストの投稿は年々増加しており、2013年は60万以上投稿されていました。同様にオリジナル作品に付けるタグとしては「創作」「原創」などがあります。

 「R-18」は男性向け・女性向け双方の成人向けイラストについて「R-18」指定をすると付けられるタグ。グロテスク描写の場合に付けられる「R-18G」タグもあります。

 また「漫画」タグは複数のページを投稿する際、自動的に付与されるタグです。

 いずれもシステム的に付くタグのため投稿数は多く、また年々投稿は増えています。

 特定の作品に関連するタグでは過去にも取り上げてきた「東方」(東方Project)がダントツで多くのイラストが投稿されています。作品タグとしては2014年7月現在まで継続して最大規模のタグです。一方投稿数のピークは2010年で、以降はゆっくり減少してきています。

 ほかに継続して人気の高い作品タグでは「ヘタリア」「ポケモン」「VOCALOID」「初音ミク」「アイドルマスター」「戦国BASARA」「銀魂」などがあります。また2011年から「魔法少女まどか☆マギカ」「TIGER&BUNNY」、2012年から「黒子のバスケ」「カゲロウプロジェクト」、2013年から「進撃の巨人」「艦隊これくしょん」の投稿が拡大しました。

 ほか2014年上半期に大きく伸びた作品タグとしては「鬼灯の冷徹」「弱虫ペダル」「ラブライブ!」「ハイキュー!!」があります。

 「落書き」「らくがき」は気軽なイラストやTwitterなどに上げた落書きのまとめなどでよく付けられるタグ。クオリティー的には落書きと思えないイラストも多いです。「女の子」「少女」はオリジナルイラストで人気の高い題材。「腐向け」は要するに腐女子向けで、男性同士の関係を描く作品に付けられます。「アナログ」など画材系のタグも多いです。

 「なにこれかわいい」はいわゆる評価タグ。かわいいイラストに付けられます。同様の評価系のタグとしては「ふつくしい」などがありますが、いずれも最近になるほど付けられていないようです。作品ごとにブックマーク数を基準とした「黒バス100users入り」のようなタグもよく使われています。

 ほかpixivで特徴的なタグとしては「描いてもいいのよ」(オリジナルのキャラクターなどを他の投稿者にも描くことを勧めるタグ)、「塗ってもいいのよ」(オリジナルの線画を投稿して色塗りを勧めるタグ)などがあります。

 また「pixivファンタジア」シリーズなどの企画タグもpixiv独特の文化です。これは共通の世界観や設定の上で各作者が自分のオリジナルキャラを描いて投稿し、企画内で物語を展開していくという遊びで、人気の高い企画、たとえばちょうどデータ収集の直前まで行なわれていた「pixivファンタジアFK」では5万件近くのイラストが投稿されていました。期間限定のため継続的に投稿されるタグではありませんが、参加する投稿者は非常に多いです。

 この他さまざまなタグがpixivのイラストには付けられています。

2014年6月末までに投稿されていたイラストのタグ(グラフ5とは違い、作品別の名寄せは行なっていない。このため「艦これ」と「艦隊これくしょん」などは個別にカウントしている)について、イラストの投稿年ごとの数を集計したもの。全体の投稿数が多い上位

現在のpixivのブームは?
2015年1月アニメ効果と「刀剣乱舞」

 ここまでに紹介したのは半年近く前の古いデータとなりますので、参考までに最近のデータも見ておきましょう。

 今回2015年1月15日から21日にかけての1週間に投稿されたイラストのメタデータを収集しました。今回収集した作品は10万5884件。平日は毎日1万3000件、土日は1万7000~1万9000件程度の作品が投稿されています。R-18イラストが約8%。1週間のユニークな投稿者数は6万6222名でした。

 タグから名寄せして投稿数の多い作品を見ると、オリジナルが約1万8000のほか、以前から投稿の多い艦これ・東方に次いで「刀剣乱舞」が4000件近くも投稿されていました

 「刀剣乱舞」は艦これと同じくDMMオンラインゲームの新作で、ちょうど1月14日からサービスインしました。名刀を美男子に擬人化した「刀剣男子」というキャラクターたちを指揮し、過去に遡って歴史を改変しようとする勢力と戦うゲームで、ゲームシステムが艦これと似ており経験者にはプレイしやすくなっています。

 女性を中心に急激に人気が拡大してきており、この週は女性向けの作品としてはトップで、後半では「艦これ」「東方」を超える規模となっています。22日以降も高いペースで投稿が続いており、今後のpixivやコミケなどの二次創作人気にも大きな影響を与えるでしょう。

 ちなみに投稿数の多い刀剣男子はダントツで「加州清光」で、次いで「三日月宗近」「山姥切国広」など。刀剣男子の組み合わせ(カップリング)では「加州清光」と「大和守安定」の組(ともに新撰組の沖田総司の愛刀として知られています)などが人気です。

 艦これのイラストはアニメ効果もあり投稿数が増加してきています。特に以前はかなり下位だった「吹雪」の投稿数が「島風」「加賀」と並んで上位につけており、アニメ効果が大きく出ています。最近実装された艦娘では2014年秋のイベントで登場した「プリンツ・オイゲン」の人気が高いです。

 アニメ効果でいうと「アイドルマスター」(アニメ放送中のシンデレラガールズを含む)の投稿数が今月になって急増しています。やはりシンデレラガールズ関連のタグの投稿が多く、「渋谷凛」「武内P」「島村卯月」らのキャラクターのイラストがよく投稿されていました。また期間中にアイドル「四条貴音」の誕生日(1月21日)があり、こちらの投稿も多いです。

 ほか「ハイキュー!!」「弱虫ペダル」「ラブライブ!」などの投稿が多いです。ちなみに「ラブライブ!」は期間中にヒロインのひとり「小泉花陽」の誕生日(1月17日)がありました。

 変わったところでは昨年から公開中のディズニーの新作アニメ映画「ベイマックス」が二次創作でもヒットしています。人気の傾向としては女性寄りで、主人公と兄の組み合わせの「ハマダ兄弟」などが人気でした。海外からの投稿が多いようです。

 新作アニメとしては「夜ノヤッターマン」が健闘しており400件近く投稿されています。投稿のほとんどがヒロインの少女「レパード」に関するもので、男性の投稿が多く、R-18作品が2割を占め、今期男性向けの期待作となっています。

 ちょうど次回コミックマーケットの申し込みがされる時期です。次回の人気ジャンルは今回調査したあたりから出てくると思われます。2015年1月アニメの話題が盛り上がるかと思いきや、伏兵の「刀剣乱舞」が大ブレイク中ですので、夏コミはこのあたりがどうなるかが注目しどころかと思います。

 ほかではこの週は16日からスタートした「【黒オク】」(Black Auction)という人身売買をテーマにしたpixiv内企画の投稿が多く、450件ほどのイラストが投稿されていました。pixivではこうした企画が有志の発案でときどき開催されています。

2015年1月15日~21日に投稿されたイラストについて作品ごとにタグを名寄せして作品数をカウントしたもの。たとえば上記の「艦これ」は「艦これ」「艦隊これくしょん」など、「東方」は「東方」「東方Project」などの関連タグのいずれかが付いていたイラストの個数をカウントしたものである

二次創作・UGC文化にとって重要なサービス
国際化の傾向も

 pixivはコミケなどの同人誌即売会と親和性の高い二次創作イラストの投稿を中心としたコミュニティーとなっています。同時にニコニコ動画と同じくネットで場所や時間と関係なく参加できることから、コミケなどはハードルが高い若い世代の参加も多く、過去に紹介した「カゲロウプロジェクト」などのように同人誌即売会では掬い切れないニーズもそこには表われています。

 また今回「刀剣乱舞」人気が急激に拡大したように、ニコ動・pixivが登場して以降、二次創作人気の拡大は高速化しています。pixivは国際化の傾向も強く、「ベイマックス」のように海外人気に押されてpixivでも投稿が増えているものもあります。

 ニコニコ動画に代表されるネット文化、コミケに代表される同人誌文化、そして海外の動きやpixiv独自の文化も含めて、pixivは二次創作やUGC文化を考える上で非常に重要な位置に存在しているサービスです。今後も注目していきたいと思います。

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