良品を作り続けるこだわりは部品受け入れから
では、生産の流れに従って、工場を見ていこう。甲府事業所の工場棟は4階建となっており、1階で受け入れた部品をボードに搭載し、3階で組み立てるという流れになっている。
部品受け入れ工程
まずはトラックで運ばれてきた部品をチェックし、ボードの製造工程に回していく。ここではワイヤレスタグのRFIDを搭載した「かんばん」を用いることで、効率的に検品する仕組みが導入されている。これにより、物流業者は受け入れゲートを通過するだけで、一括検品が実現する。
とはいえ、複数の部品がバラバラに混載される場合は、RFIDの読み取りミスもあり得る。RFIDは金属部材が苦手で、混載されるとタグ同士の重ね合わせも避けられないからだ。そのため、混載箱を一括検品できるシステムを別途用意している。
混載箱の検品システムでは、アンテナの配置が最適化されており、混載箱自体を回転させることが可能だ。最適なアンテナ配置と回転機構で多数のRFIDかんばんをミスなく読み取り、一括で検品できるという。
ボード製造(SMT実装工程)
検品を受けた後は、プリント配線基板に電気/電子部品を組み付けていくボード製造の工程になる。プリント基板のパッド部にペースト状のはんだを印刷し、マウンターが高速で部品を取り付けていく。その後、はんだを熱で溶かして部品を接続するわけだ。甲府工場には、この「表面実装技術 (SMT:Surface Mount Technology)」のラインが複数ある。
これらボード製造の工程は基本的にマシンで行なわれるが、いくつもの工夫が施されている。
たとえば、少量多品種の生産を共通のラインで行なう「一括段取り方式」だ。取り付ける部品が同じ製品を大量に生産するラインであれば、取り付ける部品を変更するために設備を停止させる回数と時間は少なくて済む。「しかし、異なる部品を取り付ける多品種生産の場合、製品の数分だけ、設備を止めなければなりません」(NECプラットフォームズ 甲府生産統括部 モジュール部長 上條和久氏)。
これに対して、甲府事業所では共通の部品を取り付ける製品をグループ化し、設備停止の時間を可能な限り少なく抑えている。製品開発も「作りやすさ」を前提に部品の共通化が進められているので、多品種を量産製品と同じように生産できるのだ。
また、マウンターに取り付けるリール部材も、ユニークな個体IDが付与されている。リール部材のバーコードを読ませて、取り付けるプリント基板が正しいかをチェックし、誤った部品を取り付けられないようにしているという。
さらに、はんだ付けに関しても、プリント基板全体を加熱し、たくさんのはんだを一度に溶かす「VPSリフロー方式」が採用されている。この方式だ と不活性液の蒸気で製品全体を包み込むので、大小どんな部品も均一に加熱できる。「加熱しすぎないため、電子部品にも優しいですね」(上條氏)。リフロー装置への投入も、自作装置が使われているので、設備を通すスピードを変えるだけで、製品の切り替えることが可能になっている。
作業が完了したプリント基板は、X線を用いた検査機ではんだ付けの精度をチェックする。CTスキャンと同じく、はんだ付け部分を輪切りにしたX線透過画像で、はんだの量や形状を割り出し、良否を自動判定する。こうしたマシンのチェックに加え、光学式の基板検査装置、さらに人間による目視でのチェックを経た後、次の組み立て工程に移る。
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