情報が吸収しやすい形に変わっていくことを多くの人たちが求め始めた
2014年に見えた「コンテンツは集約/シェアされるべきだ」という潮流
2014年12月31日 09時00分更新
話題のソーシャル&コンテンツ関連トピックを、ITジャーナリストのまつもとあつし氏が独自の視点でざっくり解説! 5分でなんとなくわかります。
著者紹介:まつもとあつし

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。デジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆などを行なっている。DCM修士。
主な著書に、堀正岳氏との共著『知的生産の技術とセンス 知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術』、コグレマサト氏との共著『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』(マイナビ)、『できるネットプラス inbox』(インプレス)など。
Twitterアカウントは@a_matsumoto
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2014年は情報が吸収しやすい形に変わっていった
―― ソーシャルメディアの大きなトピックを挙げるとすれば?
まつもと まず、コンテンツの送り手の変化ですね。
SmartNewsやグノシーのようなキュレーション型のアプリ、またはニュースアグリゲーターと呼ばれるサービスが伸びてきました。その背景にあるのはスマホの普及です。これは前回、SmartNewsについてお話したときにも触れました。
一方、バイラルメディアという言葉もよく耳にしました。TwitterやFacebookで記事をシェアしてもらって、そのトラフィックで稼いでいきましょうというモデルです。
これらは、スマホとソーシャルメディアがさらに一般層へ広がったことによって、メディアの中心がずれ始めていることを示していると考えています。
つまり、ニュースサイトや四大紙を個別に見るのではなく、ニュースは一ヵ所で見たいと。情報が吸収しやすい形に変わっていくことを多くの人たちが求め始めた、というのが今年の変化ではないでしょうか。
功罪両面あるものの、スマホとソーシャルメディアの普及が、いよいよメディアに対して具体的な変化を及ぼし始めた。パワーシフトが始まったなという感があります。
2015年、コンテンンツは集約&シェアの方向に動いていく
まつもと そして今年驚いたのは、一部のバイラルメディアをやっている人たちの著作権に対する意識が非常に低いことでした。
結構炎上したりもしましたけど、記事を広めてあげているんだから、みんなの役に立っているんだからいいじゃないかというスタンスが見え隠れするわけです。これは著作権への共通理解がまだまだ足りなかったんだなという話ですが、ここから著作権の意識を高めていくためには……と考えると気が遠くなる思いがします。
とはいえ、完璧にそれが遵守された世界でYouTubeやニコニコ動画は発展したのかと言われると悩ましいものがあります。ただ、YouTubeもニコニコ動画も決して開き直ったままじゃなかったですよね。巨大化するなかで、ある段階から権利者との仕組み作りを進めていきました。バイラルメディアの規模が今後大きくなっていくのであれば、今のままのスタンスではいられないでしょう。
「シェアする」という行為は責任も伴うってことは、ある程度リテラシーのある人たちはわかっていますが、それがあまりに急速に広がっていった結果、それを知らないまま行使する人が増えた。
2chまとめからTwitterまとめに鞍替えしたサイトって案外ありました。ちゃんとまとめサイトとして機能しているし、アクセスもある。
2chが掲示板からの転載を禁止した一方、Twitterは正しい記述方法を使う限りツイートの再利用を認めています。シェアされることを前提に投稿をうながしているわけです。これは大きな違いですね。
その話がやはり2014年に注目を集めたYouTuberにつながっていくと思います。「シェアされることを前提としたコンテンツの送り手たちが生まれてきましたよ」ということですね。ニコニコ動画でも生主とか歌ってみた・踊ってみたという人たちはいますが、かなりアートやカルチャーの才能に寄った人たちです。
ところがYouTubeというプラットフォームになると、家電の最新情報であるとか、オモチャのレビューといった、より一般的なジャンルにもシェア前提の送り手が登場してきた……というのは特徴的です。
今回の話は結局、「コンテンツは集約されているべきだ」「コンテンツはシェアされるべきだ」ってことで、この2つが今年のメディア界隈にパワーシフトをもたらしたということが言えるんじゃないでしょうかね。

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