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米国におけるApple Payの現状 - iPhoneによるモバイル決済は花開くのか

2014年12月25日 11時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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Apple Payの使える場所、使えない場所

 本来このApple Payは標準の決済インフラを活用したものであり、例えばMasterCardのPayPassやVisaのpayWaveが使える店舗であれば、Apple Payに登録したカードでiPhoneを使って問題なく決済できるはずだ。もちろん、相性や処理的な問題で、端末をかざしてもうまく決済できないこともある。それは個々に検証して潰していく問題であり、時間とともに解決していくものだと筆者は考えている。ただし、それとは別に「Apple Payの利用を許可しない」という明確に利用を拒否するケースがある。それが「MCX(Merchant Customer eXchange)」と呼ばれるWal-Mart Storesら小売りチェーンが作る業界連合だ。

 MCXでは「CurrentC」(カレンシー)と呼ばれるポイントカードを組み合わせた独自のデビット型決済システム導入を進めており、この推進の妨げとなる従来インフラを活用するApple Payの受け入れを拒否しているというのが一般的な見解だ。

 真相は不明だが、CurrentC導入はまだ途上にあり、膨大なインフラ整備コストの回収と、ローンチ後のスムーズな移行の時間稼ぎのため、一時的もしくは中長期的にApple Payの受け入れを拒否しているのだといわれる。Best Buyや7-ElevenのようなそもそもNFC対応を止めてしまったチェーンならともかく、数あるNFC決済の中でApple Payのみを拒否するとはどういう状況なのだろうか。

7-Elevenは比較的古くからNFCによる決済サービスを全店導入しており、Google Walletでもローンチパートナーだった。だが現在では決済ターミナルをすべてIngenico製の新型のもの(iSC350シリーズ)へと入れ替え、NFC対応のタッチ表示も出なくなっている

 実際に、MCX加盟店でNFC決済を受け入れているCVSとRite AidというドラッグストアチェーンでApple Payを試してみたところ、iPhone端末では決済が成功しているように見えるものの、POSに接続された決済ターミナル側では画面上に「このカードは取り扱いできません」「別のカードを挿入してください」といった表示が行なわれ、決済処理の途中で中断された様子がうかがえる。

サンタクララにあるCVSというドラッグストアチェーン。MCXを構成するチェーンのひとつであり、Apple Payには非対応。iPhoneをかざしたところ、Apple Payの画面には成功の文字が出ていたものの、決済ターミナル側では「取り扱い拒否」の表示が出て処理を受け付けない

 具体的なタイミングは不明だが、カード取り扱い拒否の表示が出るまで時間がかかるため、バックグラウンドのどこかでApple Payによる決済であることを検知して(トークン化されたカード番を見て判断しているという説もある)、拒否するような動きになっているとみられる。

 このほか、使える場所のはずなのに、なぜか使えたり使えなかったりと、相性問題なのか一定しない挙動にも何度か遭遇した。サンフランシスコ内のあるWalgreens店舗では、あるPOSに接続された決済ターミナルのみiPhoneがまったく反応せず、端末を近付けてもApple Payの決済画面が出現しなかった。

 また米国のホテルやショッピングモールでは飲料の自販機が設置されており、このうちの一部がNFCによる決済に対応していたが、これもApple Payが通るケースと通らないケースで半々だった。見た目上は判別する方法がないため、使えなかった場合は「運が悪かった」と考えるしかないだろう。

基本的に自販機はあまり見かけない米国だがホテルやショッピングモールなどで発見できる。これは今回の滞在中最初に泊まったサンタクララのMotel 6にあった自販機だが、Apple Payは使えなかった

こちらはApple Payが通った自動販売機。サンフランシスコ市内のWestfield San Francisco Centre地下にて

米国における非接触決済自体がまだ発展途上

 雑感だが、米国における非接触決済はまだ発展途上の段階で、Apple Pay登場がその転換点として普及のきっかけをつかみ始めたところなのかもしれない。まだ利用者は少なく、今後2015年10月のEMV(チップ付きクレジットカード)への強制移行をにらんだタイミングでのNFC対応POSや読み取り装置普及をはさみ、2〜3年程度の期間を経て徐々に浸透し、諸所の問題も解決していくのではないかと考える。

 日本では主にモバイルSuicaとEdyがおサイフケータイの推進役となったが、米国においてこうした役割を果たすのはApple Payなのか、あるいは別のサービスなのか、しばらくウォッチが必要だろう。


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