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飯田橋クラウドクラブ(略称:イイクラ) 第4回

マイクロソフトのオープンソースへのコミットはけっこう古い

デプロイ王子、マイクロソフトとオープンソースとの関係を語るの巻

2014年12月26日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2008年あたりから変わってきたオープンソースへの取り組み

デプロイ王子:あと、大きかったのは、Apache Foundationのバイスプレジデントだったギアヌゴ・ラベリノ(Gianugo Rabellino)がマイクロソフトに転職したこと。当時のApache FoundationのJavaコミットメントから考えて、すごく衝撃的で、悪の帝国に1人で乗り込むのかと思った。

TECH大谷:デススターに単騎で飛び込む!

MB得上:ダークサイドに魂売ったと(笑)。

デプロイ王子:でも、どこでも動くという価値を考えれば、むしろ彼を応援すべきなんじゃないかと思った。プラットフォームで捉えているほうが問題。そもそもExcelなんて、Macintoshのアプリだったわけで(笑)。

TECH大谷:まあ、プラットフォームの概念があいまいにはなってますね。

デプロイ王子:で、Install Maniaxで優勝したら、米国のマイクロソフトの見学に行けた。そこからマイクロソフトの人たちと話し始めたら、どうも今までのイメージとずいぶん違っていたのです。たとえば、LinuxやApache Foundation、Sambaなどのコミュニティにソースコードや資金を提供しているし、HTML5の標準化にも投資していた。2008年くらいにはMySQLとPHPに対しても、コミットメントをしていた。

TECH大谷:どういった内容だったのですか?

デプロイ王子:当時、MySQLとPHPはLinux上だとネイティブAPIが使えて速かったのですけど、Windowsではどうしてもパフォーマンスが上がらなかった。そこでマイクロソフトがネイティブAPI向けコードの提供をしたと聞いています。

MB得上:当時、私はEC CUBEのコミュニティからそれを見ていました。やっぱりIISで動かしたいというところあったのですよ。

デプロイ王子:そうなんだよね。エンタープライズやPCI DSSの環境で動かそうと思ったら、監査に対応できるWindowsってやっぱり楽。PHPは5.3くらいからマイクロソフトのコードが入り出したし、インストーラーも入ってきたので、ワンクリックで導入できるようになった。SQL ServerやWincacheのPHPのモジュールをリリースしていたり。

パクえ先生:マイクロソフトは、オープンソースのイベントもまめに出ていますよね。オープンソースのカンファレンスの角っこでマイクロソフトさんがブース出していて、けっこう偉い人がノベルティを丁寧に聴衆に渡しているんです

デプロイ王子:もはやマイクロソフト社内でも、かなりの台数のオープンソースのサーバーが動いているし、開発や運用までオープンソースでやっているという話も聞いています。オープンソース関係でいい機能を提供していこうという方向性は明らかです。

パクえ先生:国内のベンダーしかなかったMySQLのGUIツールも使えるようになった。

MB得上:最近では、Rのコミュニティにもコミットし始めています。

パクえ先生:こう考えるとマイクロソフトのオープンソースへの取り組みってけっこう長いんだよね。

デプロイ王子:Microsoft Opennessってサイトあるので、見てもらうとどれくらいやっているか見てもらえるかと思う。

Microsoft Openness(http://www.microsoft.com/en-us/openness/default.aspx)

Azureは最初から自動化志向で揃いすぎていた

TECH大谷:とはいえ、Windows Azureも最初からオープンソース満載という感じではなかった。

デプロイ王子:そう。フタを開けてみたらWindowsガチガチで、C#メインだった。でも、今で言うChefやPuppetじゃないですけど、Azureは当時から自動化が考えられていた。初期のAWS使い倒した後に、Azureを使ったけど、「やばい!俺、コード書かないと仕事なくなる!」って衝撃を受けました。今まではインフラ屋さんをいっぱい集めて、落ちないようがんばっていたんですけど、設計的に落ちないものを最初から作ればいいじゃんという話です。これだったら、俺一人でインフラやれるかもと思った。

MB得上:これからいいこと言っていいですか?

パクえ先生:ど、どうぞ。

MB得上:私、インフラエンジニアはシステムに対して“お医者さん”ではなく“神”であるべきだと思っているんです。一度“創造”したら、それは自律的に動くべき。日本では浸透していないんですけど、海外ではいくらでも例があるんです。Azureはそこを目指したんじゃないかな。

デプロイ王子:既存インフラの継承を目指したAWSに対して、Azureは当初から自動化や運用コストの削減というエンタープライズ的な感覚を持っていたような気がしますね。AWSって、過去に培った自分のインフラの知識がそのまま活かせるから評価が高いんです。でも、その先には自動化みたいな壁があるし、Azureは自動化を志向している。それ考えたら、いまさらRunBook Automationとか、Immutable Infrastructureの話はないだろうと思う。

パクえ先生:そうそう。200台のサーバーをはべらかせたあとに、で、これどうやって管理するのだっけと。

MB得上:その点、Windows Azureは当時から「Workerロール」ってすごい概念があった。でも、Silverlightが必要という時点で、AWSに行かざるをえなかった(笑)。

プログラムを実行するWorkerロール。キュー内のアイテムを取り出し、処理を行なって終了するというサイクルで動作する

デプロイ王子:本当、最後の最後のツメが甘いー。

パクえ先生:そのためだけにVM入れていました。たとえば、AzureはTeam Foundation Serverで開発できたりしていたけど、オープンソース系であそこまでできたのは少なかった。最初から揃いすぎていたのは、ある意味衝撃だったかも。

MB得上:当時は特殊でしたねー。

(次ページ、ツールは最強なのに一枚岩感がまったくなかった)


 

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