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作家・早川いくをがクソすぎる聖夜を新提案!!

クリスマスにはうんこを贈ろう!「うんこがへんないきもの」

2014年12月20日 17時00分更新

文● 早川いくを

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うんこと生き物についてめっちゃ詳しいけど質問ある?

 生き物にとって、うんこはタブーでもアンタッチャブルでも何でもない。生き物たちのうんことの関わり方は、多種多様で、驚異に満ちている。

うんこで家を作る生き物がいる。
うんこで子育てをする生き物がいる。
うんこで爆撃をする生き物がいる。
うんこでA.T.フィールドを展開する生き物がいる。
うんこを食ってしまう生き物だっているのだ。

生物界にタブーなどというものは存在しない/©寺西 晃

 うんこの生物といえば、何といってもファーブル昆虫記でおなじみ、フンコロガシであろう。しかし、一口にフンコロガシといっても、さまざまな種類がいる。近年、南米で発見された新種のフンコロガシは、ブルーメタリックの外観、先進的なメカニカルボディで、新型モビールアーマーのようである。うんこ転がすのが仕事のくせに、何でこうも無駄にカッコいいのか。

無駄に戦闘力が高そうな新種のフンコロガシ/©寺西 晃

 フンコロガシは、フンを運ぶ最中、妙な踊りを踊る。

「フンコロガシが活発に足踏みをするのは、ギラギラ照る太陽が大好きで、熱に酔いしれているからだ」

 ファーブル昆虫記にはこんな文学的記述があるが、このフンコロガシの奇妙な踊りの謎は、近年になってようやく解明された。はたしてその謎とは……!? 本書には、こんなフンコロガシの最新の知見も紹介されている。

 コーヒーの銘柄の中で、もっとも美味な最高級品といえば、実はうんこである。ジャコウネコという、ネコとタヌキを合体させたような動物のフン、そのフンの中に混じる未消化のコーヒー豆を焙煎したものが、世にも名高い逸品、インドネシアの「コピ・ルアク」である。

動物界のベテランコーヒー・マイスター、ジャコウネコ/©寺西 晃

 簡単に書いたが、ちょっとまってほしい。

 確かにそれは珍味なのだろうが、インドネシア人は何をわざわざ、動物のフンに混じるコーヒーをつつき出して焙煎しようなどと考えたのか。それを語るには、大航海時代のオランダとインドネアシアの涙なくしては読めない歴史について、深く鋭く追求せねばならない。本書はそんな、人と動物とうんこの関係についても触れられている。

 その他にも、「太平洋戦争」のきっかけとなったペルーカツオドリのうんこ、かわいい顔して恐怖のうんこをするハイラックス、背中にうんこを背負う王蟲のようなカメノコハムシなど、興味深い逸話が山盛りのクソのように豊富な一冊だ。

「太平洋戦争」を起こしたペルーカツオドリのうんこ。実は知られざる悲しい過去が……/©寺西 晃

ごろ寝が好きなのんびり屋さんのハイラックス。なのに、背筋が凍るうんこをする!?/©寺西 晃

「風の谷のうんこ」なルックスのカメノコハムシ。背中に背負ったうんこにはとんでもない活用法が!/©寺西 晃

クリスマスには「うんこがへんないきもの」を

 読んだからといって、年収が2倍に増えるわけもない。恋や仕事がうまくいくわけでも、3日で5キロ痩せるわけでも、お部屋がすっきり片づくわけでもない。実用書としての価値は、ゼロだ。永遠にゼロである。だが「無駄の中に宝がある」と勝新も言っている。これだけ楽しめて、なおかつためになるというのに、本書の価格はまったく良心的だ。良心的に書きすぎて、労力と対価が見合わないぐらいだ。恐竜の「糞化石」とは、恐竜の糞がそのままの形で残り、化石になったという、まさにうんこの宝石といった奇跡の一品だ。本書はそれと同じぐらいの価値があるのではないかと思う。

 「クリスマスは二人で」などという安い商業主義は、ケツ拭き紙にでもしておいて、聖なる夜には「うんこがへんないきもの」でお楽しみいただきたい。「自分へのご褒美」なんて、安い前向きOLのセリフみたいで気恥ずかしいが、年に一回ぐらい、サンタになったつもりで自分にプレゼントをしてもいいと思う。幸運を呼ぶと称するアイテムは星の数ほどあるが、そんなものより確実にウンがつくはずである。

 ちなみに、どうでもいいことだが、この原稿では「うんこ」という用語を、46回使用している。

早川いくを

1965年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。広告制作会社、出版社勤務を経てフリーに。〈へんないきもの〉シリーズが累計55万部のベストセラーとなり本格的な作家活動に入る。他に「かっこいい仏」「取るに足らない事件」「ウツ妻さん」などの著書がある。

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