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佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第9回

エンジニア藤田厚生さんが気付いた“いい音”が生まれる瞬間

ハイレゾ時代でも、狙う音は驚くほどアナログ時代と同じ (6/6)

2014年12月25日 17時00分更新

文● 編集部、聞き手●佐武宇綺、写真●神田喜和

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青春時代に聞いたレコードの音が現在の仕事にも息づく

── 実際に聞いてどんな感想?

佐武 音の場所がよく分かるし、クリアーでした。空間のノイズが入っているかもしれないんですけど。

藤田 ああそれもね。(この音源は)ブルーノート東京で収録したものなんですけど、客席の上にマイクロフォンを吊るしているので、よく聞くと、食事をしながら聞いている人たちの食器がカタカタ鳴る音だとかも入ってるんですよ。

山中千尋さんのブルーノート東京での演奏を収録したメモリーカード。ちょうど作業中だったが、現在ではe-onkyo musicで限定ダウンロード販売されている。

佐武 そこを敢えてカットする人もいるじゃないですか。

藤田 それは曲とタイミングしだいですね。雰囲気とよくマッチするならいいけど、そうでないときはノイズにしか聞こえないので、カットします。聞いている側が不快にならないかがどうかで、判断していますけどね。

 古いジャズの録音、僕が学生のときに聞いたアナログレコードなんかではライブハウスでとったものが多いので、曲中に必ずこういう音が入ってるんですよ。僕はそういうのに影響されてるのかもしれない。

佐武 レコードの時代はそういうのが当たり前だったんですか?

藤田 当たり前かどうかは分からないけど、たまたまよく聞く音楽には、誰々のアルバムがどこどこのライブハウスで録ったというのがすごく多くて。

佐武 その場所に立ち会った人はきっと空間を思い出しますよね。この場所で食事してたなとも思い出せるだろうし。実際にいっていない私もそんな気分になれます。この空間にいるんだって。私は昨日DVDで映画をみていたんですけど、その感覚とずいぶん違うなとも思いました。映画にもこういう感覚がほしいなと思いますね。

音源には必ず加工がある、原音は制作者の意図に込められる

── よくHi-Fiとか原音再生といった言葉を聞きますが、お話を聞いていくと、制作者の意図を反映した音を作るためには、音そのものを加工していくことは避けられないように思います。

藤田 原音といいますが、パッケージでも真実味がある、実際に近いと思えるような加工があるわけで、別に録ったままを流すわけではないんです。だから制作側の意図を汲み取って調整していくことが大切だと思いますし、その意図がそのまま出てくるものが原音の再生だと思いますね。音がいい。こんないい音で聞いたことがないと思えてもらえるならそれでいいんじゃないかと。

何気なくさされているが、バランスケーブルに銀線を使用するなど、こだわりも。メーター云十万円というシロモノ。

 ただ大事なのは自分が使っているスピーカーを調整して、いつも最適なコンディションで、同じ音が出せるようにしておくことなんです。マスタリングという仕事は部屋込みでの作業なんですよね。体ひとつでスタジオに行って作業してくださいといわれても困ってしまう。そこのスピーカーの音は普段の音と違うので、何をどういじっていいのかも分からない。

佐武 そうなんですか! 決まった場所を持ってるんですか。

藤田 たぶんマスタリングという作業をしている人は必ず自分の作業場というのを持っていると思いますね。

佐武 分かりやすい機械と、分かりやすい音の環境を用意しているんですね。収録はいろいろな場所でするので、作業もいろいろな場所でするのかと思っていました。

藤田 録音はいろいろな場所でしますけどね。はじめてくるクライアントさんは、このスタジオの音に慣れていないから分からないわけですよ。だからCD-Rに焼いてもってかえってもらって、目的どおりの音だとなれば次の仕事につながるし、ここで聞いた音とぜんぜん違うとなると、直してもらうのは僕には不可能だなってことになりますね。そのぐらい違います。

佐武 本当に知らないことがたくさん!! ありがとうございました!!

ライヴ・アット・ブルーノート東京/山中千尋 サムシン・ブルー・クインテット

 藤田厚生さんが担当した、山中千尋のライブアルバム。9月にブルーノート東京で開催された東京公演をDSDで収録したもの。12月10日からe-onkyo musicで限定先行配信されている。ツアーに先駆けてリリースされた「Somethin' Blue」にも参加したニューヨーク・ジャズシーンのファーストコール(売れっ子)が参加。

 TASCAMのステレオマスターレコーダー「DA-3000」、マスタークロックジェネレーター「CG-2000」を使用し、DSD2.8MHz、24チャンネルのマルチトラックで収録。藤田さんはレコーディング/ミキシング/マスタリングエンジニアとして作品に参加している。

佐武宇綺(さたけ うき)

 1992年3月8日生まれ、東京都出身。パフォーマンスガールズユニット「9nine」のメンバー。ラジオ日本「佐武宇綺の宇宙を綺麗にするラジオ」(毎週火曜24:30~)のパーソナリティーとして出演中。声優としてテレビアニメ「スペース☆ダンディ」のQT役、「それでも世界は美しい」の女官・ミキア役を務めるなど、マルチに活躍中だ。

☆ 9nine初のカウントダウンライブ開催決定!

『9nine MAGICAL TOUR 2014 COUNTDOWN』
12月31日(水)神奈川:神奈川県民ホール

チケット受付等の詳細はコチラへ
9nineオフィシャルサイト
http://9nine-fan.lespros.co.jp/

そのほか詳細はファンクラブサイトへ
http://www.9nine-fan.net/

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