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佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第9回

エンジニア藤田厚生さんが気付いた“いい音”が生まれる瞬間

ハイレゾ時代でも、狙う音は驚くほどアナログ時代と同じ (5/6)

2014年12月25日 17時00分更新

文● 編集部、聞き手●佐武宇綺、写真●神田喜和

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藤田さんがスタジオで使われている機材の一つ。SPL社のミキサー。各ボリュームは電動で駆動し、記憶させておいた設定を呼び出すと、つまみがいっせいに動き出して位置を示すという凝ったギミック。

マスタリングは部屋を含めてする仕事

佐武 ここはご自身のスタジオですか?

藤田 プライベートのスタジオで、移ってきてまだ2年目ですね。散らかってますけど、これは自宅の機材を少しずつ運んだり、以前業務提携していて、いまは引き払ったマスタリングスタジオで使っていた機材を持ち込んでいるからですね。もともと自分で持っていた機材と、そのスタジオから戻ってきた機材が混在してるんで、ちょっとすごいことになっています(笑)。

佐武 でもすごく落ち着く空間です! 外は冷たい雨だったので、入って来たときは暖かくてビックリしました。プロジェクターもあるし、前から気になっていた、これ(壁のボコボコ)の理由も聞けたし。勉強にもなりました。音を吸うんじゃなくて跳ね返すものだったんですね?

藤田 そうなんですよ。

スタジオにはフランスのFOCAL製スピーカーがモニターとして利用されていた。佐武さんのいうボコボコとはスピーカーの背後にある拡散パネルのこと。

佐武 一口にエンジニアさんといっても。レコーディングする際にはいろいろな個性が出てくるんじゃないかと思います。藤田さんが思う、自分のお仕事の個性って何だと思いますか?

藤田 音に出てくる個性ですか?

佐武 そうですね。声にこだわる人や、バックの演奏にこだわる人とかいろいろいるように感じるんですけど。たとえば、ここに座って実際に音を聞いたら、音の場所がすごくよく分かるなって思いました。

藤田 ああ! そこはすごく大切にしている部分ですね。特にここ数年はライブの収録を依頼されることが多くて、映像と音声の相乗効果があるってことに気づかされたので。見た感じと聞いた感じが同じなら、音が映像をよりよく見せられるし、映像も音をよく聞かせることができるんです。

手作り感もある藤田さんのスタジオ。

佐武 私もプロジェクターと一緒に聞いていたんですが、楽器の位置が分かるんですよ。すごいな、音にリアリティーがあるな、場所が分かる!って思いました。

藤田 僕もここで演奏してもらいたいなって思いながら作ってます。ライブだったらその会場の雰囲気まで伝わるようにね。

佐武 すごく思いました! いいヘッドフォンで藤田さんの作り上げる音を聞いて、場所を大事にしている感覚を皆さんにも聞いてほしいなと思いますね。私が今日、それを生で感じたからだと思うんですけど。

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