Cybozu.com Conference 2014で「記憶に粘りつくブランドの作り方」を聞く
弱者が強者に勝つ「一寸法師戦略」とは?一蘭社長が語る
2014年12月16日 09時00分更新
やられて悔しいと思うことは、自分でやったほうがいい
一蘭の「記憶に粘りつくイメージ」を作り出している商売の専門性を磨くためのアイデアはどうやって出てきたのだろうか。吉富氏は、自身が実践している方法を3つ挙げた。
1つ目に挙げたのは、新聞がトイレットペーパーになるというような、ちょっとした「あったらいいなというもの」を作ること。2つ目は「オズボーンのチェックリスト」として知られる発想法で、いまあるものを水平に考えて、ほかの使い道がないか、拡大や縮小、置き換え、配置や並びの変更などを変えていくこと。3つ目は、何かと何かの組み合わせをしてみることである。
これら3つのアイデアの出し方に共通するのが、客の視点を変えてやるというもの。ジャングルに木を植えても目立たないが、砂漠に植えたらかなり目立つのと同じように、ビジネスも、ちょっと視点をずらすと、そこにビジネスチャンスが見えてくるという。こうした例は、身の回りにも数多く転がっている。
たとえば、これまでスポーツクラブは時間とお金がある人向けの高級施設だったが、自宅で着替えて、30分500円で運動ができ、自宅でシャワーを浴びる庶民派スタイルに変更した途端に大流行している。また、若年層がターゲットだったゲーム機も、大人をターゲットにすることで成功を収めたし、10分1000円でヘアカットできるというのも発想の転換だ。
吉冨氏は、「このようなアイデアはだれでも思い付くが、やることが重要。人間は衝動で生きているので、いいものが売れるとは限らない。それぞれの事象において相手がどう考えるかを想像することが重要で、アウトコースぎりぎりの玉が最高のアイデアになる。1000人中、999人がダメだと思うことでも、あとでだれかにやられて、やられた!と思うことはやった方がいい」と語った。
さらに、商売では「品質を外見よりも上にする」のが大事だという。人は高級ブランドの包装紙につまらないものが入っていたらがっかりするが、新聞紙の包装に5円が入っていたらラッキーだと感じるもの。同じように、百貨店で150円のロールケーキが売られていたら安っぽく感じるが、コンビニで同じものを変えたら自分へのご褒美としてうれしく感じるという。外見や宣言内容は、低く抑えておくべきで、宣言したことより、実行内容を格上にしていくことの大事さを力説した。
アウトコースぎりぎりの玉が最高のアイデア
吉冨氏は、2010年から明太子料理専門店「元祖博多めんたい重」のプロデュースも手がけている。「博多には明太子を販売する店は130店舗あるのに、明太子を食べられる店はなかった」。こちらも経営は順調だ。
吉冨氏が最近放ったアウトコースギリギリの球は、1年前の香港への一蘭出店だ。マスコミやコンサルタントから、「香港の人は並ぶのが嫌い」「ラーメンとしては高すぎる」「24時間営業は流行らない」「香港人は夜中食べない」「香港人に仕切り壁はウケない」などの理由で、いつ撤退するのかとささやかれていたが、蓋を開けてみれば、ラーメン1杯1130円の価格で、行列ができる人気店になっているという。
吉冨氏は、公演時間40分を目一杯使いきり、多くのスライドを見せながら、弱者が強者に勝つための独自の視点からのブランド戦略について話し通した。