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Cybozu.com Conference 2014で「記憶に粘りつくブランドの作り方」を聞く

弱者が強者に勝つ「一寸法師戦略」とは?一蘭社長が語る

2014年12月16日 09時00分更新

文● 河内典子(@mucchio)

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11月28日に都内で開催した「cybozu.com カンファレンス2014」でサイボウズユーザー企業の「一蘭」代表取締役の吉冨学氏が登壇した。「赤い秘伝のたれ」や「味集中カウンター」で知られる、とんこつラーメンの専門店「一蘭」のブランド戦略とは?

価値あるブランドを作ることが絶対的な商売の秘訣

 「cybozu.com カンファレンス2014」に、とんこつラーメンで多くのファンを持つ「一蘭」代表取締役の吉冨学氏が登壇した。1993年に1号店を開店して以来、着実に業績を伸ばし、今年度年商100億を達成する企業へと成長した同社。全国、50店舗に広がる200人の社員間のコミュニケーションはサイボウズOfficeを用いているという。従業員満足度も高く、「従業員の心を大切にし、幸福度を高める」という企業理念の通り、離職率は4%だという。吉冨氏は講演で社員を養うビジネスをドライブしている商売の秘訣として、自社のブランド戦略を明らかにした。

ブランド戦略について講演した「一蘭」代表取締役の吉冨学氏

 吉冨氏は、ブランドとはその名前を聞いたときに、人々の頭のなかに連想されるものを指すと説く。たとえば、「エルメス」と聞くと「金持ちかな?」とか、「銀座出身のママのいる店」というと「高級!」とか、その名前だけで連想できるイメージがある。そのいいイメージをどんどん研ぎ澄ませていき、人々が同じものを連想してくれるようにすることが、企業ブランド戦略だと説明した。

 企業ブランドの重要性を分かりやすく説明するため、吉冨氏は有名な逸話として、1988年のマックダガル社のブランド価値の算出を挙げた。食品企業であるマックダガル社が、自社の事業価値をロンドン・ビジネス・スク-ルに算定してもらった企業ブランド価値の評価例である。ロンドン・ビジネス・スク-ルは、貸借対照表上で有形資産額が4億ポンドのところを、無形資産としてブランド価値6億7800万ポンド分を上乗せして,マックダガル社の資産総額を12億ポンドを超える資産として算出した。これにより、マックダガル社は敵対的買収を回避でき、企業ブランドが市場で重要視されるようになった。

ブランド価値の算出によって、1.6倍に資産が増えている

 吉冨氏は「すぐれたブランド戦略とは、商売の専門性を研ぎ澄ませていくこと」という信念を持つ。企業ブランドの資産価値が可視化され、重要視されてきたにも関わらず、アジア企業のブランド戦略はまだまだだと吉冨氏は強調した。現在のアジアと欧米の売上げトップ100社を比較し、売上はほぼ変わらないのに対し、利益率は雲泥の差が開いている。欧米の企業はダイソンやティファール、コカ・コーラといった専門的な商売で成功しているのに対し、アジアでは「ヒュンダイのように、ボールペンからミサイルまで、何でも作ってしまう」ため、なんでも屋になってしまう傾向が、弱みになっていると持論を展開した。

専門店の方が利益率が高く、専門店の多い欧米に利益率で大幅に劣っている

 ラーメン以外でも、"専門店”というイメージを作るには、究極に絞り込んでいくことが大事だ。たとえば、きつねうどん専門店、ウニ専門寿司屋、モヒート専門のバーも面白いし、流行色しか売らないブティック、太ったホステスしかいないスナック、ビーチサンダル専門店、赤い靴下専門店などもビジネスチャンスがある。思い切って専門化してオンリーワンになれば、立派なブランドとなり、商売でもナンバーワンになれると話した。

ブランド戦略とは、商売の専門性をとがらせること

 一蘭と言えば、「ブルーオーシャン」として知られる、仕切り壁、オーダー用紙、チャルメラ、目の前ののれん、替え玉プレートなどが知られている。これらは「こだわりのとんこつラーメン」という一蘭のイメージをとがらせている。これは、企業ブランドの浸透に成功したいい例だと言ってよいだろう。

ブルーオーシャンとして知られる仕切り壁、オーダー用紙、チャルメラ、目の前ののれん、替え玉プレート

 吉冨氏は、「人々の記憶に粘りつくイメージを作るには、すぐに思い出してもらえ、話題になり、購入、利用され、口コミで広がり、マスコミに取り上げられるようになるとよい。そうなれば、人々の頭のなかにシード権を獲得したようなものだ」と表現した。先日、一流芸能人で知られるGACKTさんから「一蘭のラーメンが食べたい」と電話があり、一蘭の本社1階に暗幕を張ってブースを作り、そこで食べてもらったエピソードを披露した。

豚骨、ラーメン、麺類、ランチ、B級グルメ、食事と、より広い範囲で一蘭を連想してもらえるとGOOD!

 では、一蘭ではどのようにとがった専門性を磨いてきたのだろうか。たとえば、一蘭では、とんこつラーメン専門店というイメージを大事していて、チャーハンはあえて提供していない。吉冨氏は、「チャーハンを販売すれば、当然その分、数億円の売上が上がるが、メニューからチャーハンを『捨てる』ことで、とんこつラーメン専門店というイメージをとんがらせている」と語った。

チャーハンをあえて作らないことで、ラーメン店のイメージを強固にしている

(次ページ、やられて悔しいと思うことは、自分でやったほうがいい)


 

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