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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第283回

スーパーコンピューターの系譜 CRAY-1と同じ性能を目指したParagon

2014年12月15日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 インテルはiPSC/860の成功に気を良くした、というわけではないのだが、iPSCシリーズの開発と平行して、さらに大規模なシステムを作る計画が、まだSSDに改称される前のSCG(Scientific Computers Group)で持ち上がっていた。

 1989年春、SCGはDAPRA(国防高等研究計画局)との間でTouchstone Projectの契約を結んだことを明らかにした。

1989年春、SCGはDAPRAとTouchstone Projectの契約を結んだと発表。これは当時のインテルのプレスリリースをまとめたDataquestの資料より

 Touchstone Projectでは、最終的に2000以上のプロセッサーを集積して、全体としてCRAY-1と同じ性能のマシンを構築することにある。このTouchstoneは、MITあるいはCaltechと共同で開発したiPSC系列とは別に開発されることになっている。

 iPSC系列はCosmic Cubeをベースにしており、その限りにおいては128ノードが最大構成になってしまう。もちろんノードから出るリンクを増やせばもっとノード数を増やすこともできるだろうが、今度は完全に配線のお化けとなってしまうし、下手をすると各ノードの大半がリンクのインターフェースで占められることになりかねない。

Touchstone Delta。画像はComputer History Museumより

 Touchstoneはもっと大規模なシステムを目指していたから、個々の要素技術の中には流用できるものもあっただろうが、全体としては別のシステムとなる。プロジェクトは3年間で合計2750万ドルの開発費が投じられ、1991年にはプロトタイプのデモが行なわれる予定となっていた。

 このTouchstone ProjectではTouchstone Gamma/Delta/Sigmaという3つのモデルが計画されていた。最初にリリースされたのがTouchstone Gammaというもので、1989年の12月に初期プロトタイプがリリースされ、1990年の1月から評価が開始されている。

 プロトタイプのうちの1台はNASAのエイムズ研究センターの中の数値風洞部門に引き渡され、ここで評価が行なわれている。

Touchstone Gamma
中身はiPSC/860そのもの

 Touchstone Gammaは、128ノードの構成で、それぞれのノードは33MHz(後に40MHzにアップグレード)のi860プロセッサーと8MBのRAM、それにiPSC/2と同じ8chのDirect-Connect Moduleを搭載、ノード同士は7次元のHyperCube(Cosmic Cube)構成でつながれた。

 なんのことはなく、これはiPSC/860そのものである。1989年4月に契約を結んだばかりで、12月に新規設計のハードウェアのプロトタイプが出せるわけがない。とりあえずソフト開発用ということでiPSC/860の試作機に相当するものをTouchstone Gammaという形でリリースしたのだと思われる。

 Touchstone Gammaは、論文によれば特定のアプリケーションでは性能を出しやすいとは評されており、広い範囲のアプリケーションで性能を出すための問題点が指摘されている。

 ただ論文の締めくくりは「こうした制限は初期のプロトタイプにはありがちな話である。今後のソフトウェアとハードウェアの開発によってボトルネックが解消され、幅広い科学技術計算が数GFLOPSの性能で動くことを期待する」となっており、そう悪くは判断されていない。

→次のページヘ続く (Touchstone Delta

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