小型のBluetoothヘッドフォンとは思えない音質
最後に音質について。先に述べたとおり、Bluetoothオーディオは、伝送時に音声を変換するため、その際に音声の劣化も起きます。だから「どうせこの程度だろう」という割り切りのもとに、Bluetooth接続のヘッドフォンは、素の性能自体も大したことがなかったりするわけですが、そこは全く手抜きがありません。
特にオンイヤー型の場合は200Hz前後の音圧だけが高く、ほかの成分がマスキングされてしまって、バランス的に良くないものも多いのですが、このヘッドフォンの場合、そうした傾向は感じられませんでした。
また、軽さ、コンパクトさは、それよりもっと低い可聴限界付近の低域の出方とトレードオフだったりするのですが、ボーズお得意の TriPortテクノロジーとアクティブイコライザーで、そうしたごく低い帯域をブーストし、また高域も補正して、広帯域感を得ています。
ただ、付属のスペアオーディオケーブルでつないだときは、そうした電気的補正はかからず、パッシブ型の普通のヘッドフォンになります。補正のない状態では、高域側が落ちて、かなりあっさりとした感じの音なってしまいますが、解像感は十分にあるので、これはこれで使える音だろうと思います。
気になるのは右チャンネルのノイズと価格のみ
ほとんど完璧に近いヘッドフォンですが、唯一残念なのが、ノイズです。Bluetooth接続でもスタンバイ状態では無音ですが、音声ストリームが入ると若干のホワイトノイズが乗ります。これはBluetoothのオーディオデバイスならどれでも起きる現象で、むしろこのヘッドフォンの場合、そのノイズはかなり低いと言えます。
しかし、右チャンネルのみに、常に「ジー」というノイズが聞こえます。これは、ほかのノイズが低いことと、ヘッドフォン自体の音質が良いことから、ちょっと目立ちます。一度、音楽が鳴り始めてしまえば気にならないのですが。
もうひとつ、価格が若干高いことです。直販で2万7000円という価格は、もうちょっとならないかなと思うのですが、オンイヤー型の利点を活かしたBluetoothヘッドフォンで、ここまで高性能なものはないので、仕方ないかもしれません。
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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ