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山谷剛史の「アジアIT小話」 第88回

GeForce搭載で6万円! 中国で巻き起こる低価格ゲーミングPCブーム

2014年12月11日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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ネット限定販売で低価格を実現する小米方式を採用

 麦本本と機械師のいずれを見ても、日本のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)対応PCに比べて安めであり、中国の他社製品と比較してもそのコストパフォーマンスは魅力的だ。

 あらゆる商法が編み出されている中国だが、意外にも中国全土に展開する、日本でいえばエプソンダイレクトのような地場のBPO対応のPCメーカーは、これまでなかった。そういった意味でも、新しいメーカーだ。

 麦本本については「小米摸式」を採用している。小米摸式とは、スマートフォンメーカーの小米が行なった「最新のハイスペックを、ネット限定で、思い切った低価格で提供」という、それまでなかった販売手法だ。

 物流網を含めてECが発展しており、ネットショップで製品を掲示し、組立をフォックスコンのような企業に大量発注し、消費者のもとに安価に届ける、というプロセスができるのは中国ならではだ。今のところほかのアジアの国々では真似できない。

 中国では人口100万人都市が全土に点在するため、よほど資金力がなければ中国全土でのリアルショップでの販売は不可能だった。消費者側だけでなく、メーカー側にも中国全土で展開できるという大きなメリットがある(実際、内陸の雲南省に小米のリアルショップができたのは、ごく最近になってからだ)。

 物流網は、都市部までは発展しているので、都市部の住民ならだいたいネット直販が利用できる。ネット限定だから、ネットが利用できない人や、届け先がない外国人旅行者は買えないかというと、そんなことはない。ネット限定の商品を転売するスマホショップは珍しくない。多少マージンはつくが、リアルショップでも購入はできる。

 ネットで直接ヘビーユーザーに請求できるこの手法を小米が成功させた後は、「モノに自信あり」という中国の中小スマートフォンメーカーが、自社サイトなり提携するオンラインショッピングサイトなりで販売するようになった。

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 また、スマートテレビを展開する「小米電視」「楽視電子」など、ほかの製品ジャンルにも波及した。

 たとえば当連載で紹介した、1万円のWindowsタブレット(関連記事)や、11万円の60型スマートテレビ(関連記事)などもまた、小米摸式を採用している。

スマホとは異なるPCならではの課題も

 小米方式は大量に部品を注文し、ネットショップ一本で販売することで安さを実現し、ユーザーに支持された。しかし、PCについては、新しいPCパーツが次々と出てくるため、大量に部品を注文すると、時間が経過するごとにモデルに古臭さを感じてしまうという問題がある。

 PCの需要は下火になってきたし、ノートPCで交換できる部品はデスクトップPCと異なりHDDやメモリーくらいだが、やはりスマートフォンよりは新製品のリリースサイクルを早めないと、型落ちしてしまう。実際ユーザーからは「パーツが古い!」という辛口批判も出てきている。

 小米は「最新のスペックを格安で」というコンセプトが初動でマニアにウケて、その後マスに広がった。同じことをPCでするにはPCファンを納得させられなければ、買われないし、マスは広がらない。

 麦本本や機械師、ないしは別のメーカーがどれだけコンスタントにハイエンドな製品を安く提供できるかが、このPC新販売形態のその後の鍵となるだろう。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)。

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