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テクノロジー虎の穴 第6回

通信衛星、GPS、地球観測……私たちの生活を支える様々な宇宙の技術

松浦晋也氏に訊く、はやぶさ2と宇宙のテクノロジーのこれから

2014年12月17日 09時00分更新

文● 松野/ASCII.jp編集部

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「プライバシーの概念が変わってくる」

――衛星画像が安く、あるいは無料で手に入る時代がもうすぐやって来るかもしれない。どんなことが起きるか想像もできないですね。

相互監視が当たり前の時代がやってくる?

松浦 「それはグーグルのさじ加減次第で、例えば一般にはjpegの画像を提供しておいて、無圧縮の分析可能なデータを有料にしてカスタマーを取るとか、そういうことをするかもしれない。政治や外交にも大きく影響を与えると思いますね。国際的なNPO法人が戦場の状況を撮影するようになったり、あるいは値段が安価であれば通信社のようなところがカスタマーにどんどん流すようになるかもしれない。

 ストリートビューに写った変なものを探そう、なんて遊びをたまにネット上でやってるじゃないですか。こういう遊びをする人は数年前から出てきていて、もし衛星画像がリアルタイムで撮影されるようになって、見る人が増えてより一般化すると、『ここに変なものがある!』なんてことが多くの人に共有されるようになる。人が増えれば発見も増えるでしょう。

 なにしろあらゆる証拠が残ってしまうので、プライバシーの概念も変わってくるのではないでしょうか。宇宙の話からは少し外れてしまいますが、いずれ透明になった社会の新しい法律を考えなくてはならなくなると思います。人が見ていないところでの自動車の速度違反には目をつぶるとか(笑)。日本の法律は拡大解釈すれば誰でも捕まえられるようなグレーゾーンがたくさんあって、それが恣意的に運用されている状態です。相互に記録を取り始めると、非常に変な社会になってしまう。コンプライアンスの徹底に必要なのは、守れる規則にすることです(笑)。技術と社会制度がきしみつつぶつかる中から、新しい社会ができあがっていくのでしょう」

著者紹介:松浦晋也

ノンフィクションライター/科学技術ジャーナリスト。宇宙作家クラブ会員。主な著書に『のりもの進化論』(太田出版、2012)、『小惑星探査機はやぶさ大図鑑(共著)』(偕成社、2012)、『飛べ!「はやぶさ」小惑星探査機60億キロ奇跡の大冒険』(学習研究社、2011)など。近著に『はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査』(講談社現代新書、2014)。

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