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Azure日本データセンター開設や閉域網接続サービスで勢い増す

「前年比4倍」が目標、MSが公共機関向けクラウド事業を加速

2014年12月09日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフト(MS)は12月8日、国内の公共機関(官公庁、地方自治体、教育機関など)を対象としたクラウド事業に関する説明会を開催した。公共機関特有の要件に対応するサービス強化やパートナー連携強化を行い、「対前年比4倍」の事業成長を目指すとしている。

日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当 織田浩義氏

 「(国内の)公共部門の顧客は、これまで最もクラウドと縁遠い存在だったのではないか。しかし昨今では、そのニーズや利用機会がものすごく高まっている」。日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当の織田浩義氏はこう述べ、ITを基軸とした政府の成長戦略、ユーザーニーズの高まり、海外政府における導入の加速を背景として、国内公共機関においてもクラウド活用の気運が高まってきたことを説明する。

 国内の公共機関では、データロケーション(データの保存国)や法令準拠、セキュリティレベル、公共機関専用の閉域ネットワークや業務アプリへの対応といった、数々の要件が阻害要因となってクラウド導入はなかなか進んでこなかった。これに対しマイクロソフトでは、今年2月の日本データセンター開設(関連記事)、日本国法への順守、各種セキュリティガイドラインへの準拠、閉域網接続への対応など、その課題に一つずつ取り組んできたという。

“セキュリティ対策”という課題に対し、マイクロソフトでは全世界で「信頼できるクラウド(trustworthy cloud)」への取り組みを進めていると紹介

 織田氏は、特に公共機関においては「ハイブリッドクラウドのシナリオが重要だ」と述べた。これは、住民や学生の個人情報、電子カルテなどの医療関連情報など、どうしてもパブリッククラウドに移すことのできないデータやシステムが存在するためだ。マイクロソフトにはプライベートクラウド/パブリッククラウドの両方に対応/提供できる強みがあり、閉域網接続サービスの開始(関連記事)以降、公共機関から「ハイブリッドシナリオへの問い合わせも増えてきた」(織田氏)という。

公共機関では外部(パブリッククラウド)に出せないデータやアプリケーションも存在するため、ハイブリッドクラウド化のシナリオが重要だと織田氏

 今回マイクロソフトでは、インターネットイニシアティブ(IIJ)との協業により、教育機関向けに学術情報ネットワーク「SINET」との閉域網接続サービスを開始した。また、総合行政ネットワーク(LGWAN)経由で「Microsoft Exchange」メッセージングサービスを、富士通エフ・アイ・ピーとの協業により開始している。

 加えて織田氏は、行政や医療、教育など、公共分野に特有の業務アプリケーションについて、Azureクラウドへの対応を進めるためのソリューションパートナー支援を強化していくと述べた。今後1年間で、100の公共系アプリケーション移行を実現するのが目標だという。

公共系システムを開発するパートナーに対し、Azureクラウドへの移行を支援する

 最後に織田氏は、日本マイクロソフトでは、およそ200名の公共機関向け専任営業/サービスチームを中心として、法務や政策企画といった社内関連部門、それに100社以上のパートナーと連携して、クラウドビジネスを推進していくと述べた。同社 樋口社長は、11月の発表会でクラウド事業全体が「年率で3倍の成長を見込む」と述べているが(関連記事)、公共機関向けクラウド事業に限って言えば、それを上回る「対前年比4倍」の成長を見込んでいるという。

 「日本データセンターが出来てから、公共部門の顧客からとてつもなく問い合わせ、引き合いをいただいている」「私の理解では(4倍という)目標値として高すぎるとは思っていない」(織田氏)

 なお織田氏は、今回の発表は公共向けクラウド事業強化の「第一歩」であり、今後も継続的にサービスを強化していく姿勢を示した。たとえば米国で政府機関向けに提供されている「Office 365 for Goverment」のような取り組みも検討しているという。

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